シロも気づいたらしく「あらあら」なんて言ってから、
「でも大丈夫」
 とにっこり笑う。

「なにが大丈夫なの?」
「だって七海ちゃんは死んでいるから、人には触れられないでしょう? 重なって寝ちゃえばいいんだよ」

 さらりと傷つくことを言ってくるし。
 それに、重なって寝るなんて絶対に無理!

「床で寝るからいい」

 ベッドの下にもぐると、窓からの光でうっすらたまった(ほこり)が目に入った。でも、とにかく横になりたかった。

「じゃあ僕も」

 てっきり反対されると思ったのに、シロも隣のベッドの下にもぐりこんだ。
 なんなの私たち。

「七海ちゃん」

 横になったとたんじわりと眠気が忍び寄ってきた。
 シロの声に目を閉じた。

「僕思うんだけど、記憶をなくしてしまうのは仕方ないんだよ」
「ハチのことはちゃんと覚えていたよ」

 さっき一緒にいたのに、もうハチが恋しい。
 やっぱり本当の未練はハチなんじゃないかな。でも、散歩もしたしな……。

「愛梨ちゃんに会えば、きっと未練の内容も思い出せるよ」
「……うん」
「僕はそばにいるからね」

 ありがとう、と答える前に意識が遠ざかっていく。

 本当に消えてしまうときも、こんなにあっけないのなら少しさみしいな……。