時計を見ると朝の七時を過ぎたところ。

「ね、私ってどれくらい寝こんでいたの?」
「たしか……七日間かな」
「え! そんなに!?」

 寝ては醒めてをくり返していた記憶はあったけれど、まさか一週間も経っていたなんて……。
 しゅんとする私に、シロが目の前でしゃがんで見あげてくる。

「とりあえず、作戦を立てようよ」
「作戦?」
「どういうふうに校内を回って、もし光った相手がいたら、どこでその人と話をするのかってこと」

 未練解消の相手が光れば、私の姿がその人には見えるようになる。話しかける場合は、人目のつかない場所を選ばないといけないんだっけ……。

 私は志穂さんのように未練にちゃんと向き合えるのかな。

 今のところ、そんな自信はどこを探しても見つかりそうにない。
 人のことならいくらでも励ませるのに、自分のことになるとてんでダメなのは昔から変わらない。
 友達の失恋を励ましたりしたことが懐かしいな。そう思った瞬間、またなにかの記憶がよみがえった気がした。

 なんだろう……。心の目をこらしても、もうなにも見えない。
 なにを私は忘れているんだろう?

「ちょっと顔を洗ってきていい?」
「うん。ついてくよ」

 当たり前のように立ちあがったシロに顔をしかめる。

「なんでついてくるのよ。女子が身だしなみを整えるときは素知らぬ顔をするのが礼儀だよ。ここで待ってて」

 ハウス、と命令された犬みたいにシロは大人しく私が座っていた丸椅子に腰をおろした。
 保健室を出ると、朝練のためかちらほら生徒の姿が見える。
 私はトイレを通り過ぎ、角を曲がると、昇降口を出たところでダッシュ。
 そこから家に向かって一気に走る。

 シロが追いかけてこないのを確認して、登校する生徒をすり抜けて走った。
 やっぱり逃げてばっかりだね、私。