「はい……喜んで♡」

 これは、教えるに決まってるでしょ!?
理想的なイケメンが目の前で番号を聞きたがっているのに教えない人は、まず居ないわよね。
 私達は、携帯番号とLINEのIDを教え合う。
これで、さらに距離を縮められたら……結婚まで直行よ!

 フフッ……真美子、美希にこの事を教えてあげたい。
課長にも報告を……うん?
 忘れていたと思いハッとする。
そういえば、ワインを取りに行ってくれた課長の姿が見えない。

 あれ?まさか何処かで怒っているんじゃあ!?
考えただけでも背筋が凍ることだ。
 恐る恐る課長を捜してみる。
しかし何処を捜しても課長の姿はなかった。

「あれ……?」

 何処に行っちゃったのだろうか?
お手洗いかしら……?

「どうかなさいましたか?」

「あ、いえ……知り合いが居たので。
でも向こうは、向こうで楽しんでると思いますので」

フフッと笑って誤魔化した。
 課長の事を話して変な誤解を生みたくないし、きっとお手洗いに行ってるだけよね……?
 気になったが、そう思うことにした。

 しかし、あれから何分間過ぎても課長は、戻って来なかった。一体どうしたのだろうか?
 まさか怒って帰っちゃったとか?
でもでもここは、あくまでも相手を見つける婚活だ。
 相手が見つかったのなら配慮するのが同然よね?
課長もそれは理解してくれてるはずなのに……。

「あの……宮下さん。いえ菜々子さん。
 この後、お時間とかありますか?もし良かったら食事でもどうですか?」

「えっ?食事ですか……」

 まさかの食事のお誘いに驚いてしまう。
これは、OKに決まってるでしょ!!
イケメンの安西さんからのお誘いなんだから……。

「それは……もち……」

 そう思っていたのに課長の顔が浮かんだ。何故……?
でも、いつものなら、この後に課長に反省会という名の食事に連れ出されるはずだった。