尊敬……裕太君が課長に!?
甥っ子に怖がられていると思ったら、面倒見のいい叔父さんをやっているようだった。
 意外過ぎる……。しかし、それでも課長には、ここの事を知られる訳にはいかない。

「ねぇ、ここで働いているってことは、知ってるの?」

「あ、はい。と言っても喫茶店のバイトを始めたとしか言っていませんが」

 裕太君は、不思議そうにそう言ってきた。
そう……それならいいわ。
 まだ気づかれていないみたいね。

「なら、店長が課長の部下だった事は、黙っててくれる?
現在関係なくなった訳だし、あまり話してほしくないの」

「よく分からないけど……はい。
俺、口が堅いから秘密にしておきますね」

 裕太君は、ニコッと微笑んでくれた。
まぁなんて……天使なの!?
 黙っててくれる上にその爽やか笑顔。
イケメンだけじゃなく……心もイケメンだなんて。
 神様…ありがとうございます。

 やっぱり課長の親族とは、思えないわ。
同じ血が流れているのに……この違いは何?
 課長もこれだけイケメンでもう少し優しかったら
私だって……うん?今、私なんて言おうとしたのかしら?
 うーん、変なの……?
不思議に思っていたら裕太君は、首を傾げてきた。

「菜々子さん。どうかなさいましたか?」

「えっ?あ、ううん。何でもないわ。
ありがとう……紅茶とても美味しかったわ」

「はい。失礼します」

 裕太君は、頭を下げると事務室から出て行った。
出て行くのを確認すると私は、ハァッ……と大きなため息を吐いた。

 何とか誤魔化せたけど、まさかの甥っ子とは、本当に驚かされたわ。
 気をつけなくちゃあ……課長に知られる訳にはいかない。
 本当ならあのホテルの件で課長と関わり合いたくないいのに……しかし帰り際に言われたのだ。

「次は、ワインのソムリエ体験コースがあるみたいだからそれにするぞ。
 お前のも一緒に申し込んでおいてやるから絶対に来い。いいな?」