「も、もしかして私に対して怒ってます?」

「……だとしたら、なんだ?」

 だとしたらって……じゃなくて!!
いやいや、それよりもやっぱり私に怒ってたの?
 な、何で……?

「どうしてですか…私何かやらかしましたか?」

 何かしたとは思えないし意味が分からない。
しかし課長は、黙ったまま何も言わない。
 何で黙りなんですか?怒っているくせに……。
 不知火課長の態度にイライラしていると店員さんが持ってきたビールを飲んでいた。
 そして乱暴にビールのジョッキを置いた。

「次は、登山にするぞ!」

はい……?

「登山……ですか?」

「あぁ、登山のコースもあるみたいだ。
俺もたまに登るが登山はいい。景色が最高だからな」

 いやいや、だから。何で私まで登山を選ばないといけないのよ?しかも突然。
 山が好きなら勝手に行けばいいのに、何でそこに私まで巻き込むの?

「お前は、もう少し色々経験して視野を広げるべきだ」

「いや。あの……私は、別に視野を広げたい訳じゃあ…」

 そんなのは必要ない。
私が興味があるのは、あくまでもイケメン。
 そしてイケメンを囲ったハーレムなのに……。

「これは、業務命令だ!
登山にしろ、いいな?宮下」

「は、はい!」

 思わずビビって返事をしてしまった。
断れる雰囲気じゃなかった。
 こちらも下手に逆らったら山に置き去りにされそうな雰囲気だった。