店員には、私があらゆる審査から勝ち残った最高のイケメンを用意しました。
 修行した美味しいデザートにコーヒーそしてランチ。
あ、キッチンスタッフも、もちろんイケメンです♡

 女性客と一緒にお喋りをしたりを記念撮影なんかもしたり、とにかく逆ハーレムを楽しめるそんな喫茶店だ。
 どうですか?最高だと思いませんか?

「菜々子さん。この新作料理の味見をお願いします」

「菜々子さん。次の指示をお願いします」

 イケメンな彼らが私を頼り信頼してくれてる。
恋なら叶わなかった夢がここには存在しているのだ。
「いいわ~イケメン♡」とうっとりと見惚れてしまう毎日だ。

こんな人生があるなら結婚しなくてもいい。
 ハーレムに包まれながら老後を迎えるなら一生独身でもいいわ。最高の贅沢ね。なのに……。

「あんた。ここに登録して来なさい!」

 ある日。母が突然婚活パーティーの申込書を持って一人暮らしをしている自宅に来た。またか……。
 この前は、お見合い写真だった。

「はぁっ?何で私が、そんな所に行かないといけないのよ?」

「これぐらいやらないとあんた、いつになっても結婚しないじゃないのよ!?もう32なのよ?」

「いいじゃない。私結婚する気なんてないし。
 まぁ、私好みのイケメンが結婚してくれるのなら考えてもいいけど」

 ボリボリとポテチを食べながらテレビを観ていた。
文句があるなら連れて来てよ……。
 このテレビに出てくるような超絶美青年を。

「あんたねぇ~まだそんな夢みたいな事を言ってるの?
 現実を見なさい。あんたには、普通でも真面目で誠実な人が居れば、それでいいじゃない?」

 真面目で誠実って……どれぐらいの人が居るのだろうか?
 そっちの方が捜すの難しくない?
それに居ても顔が普通なら面白くもドキドキもないわね。

「何処か居ないかしらね?真面目で誠実なイケメンは……」