私は、恐る恐るドアをノックして開けてもらう。
すると課長は、ピタッと動きが止まった。
「何だ……?何か用か?」
「あの……ずっと機嫌が悪くて。
私のせいなら言って下さい。直しますので……」
すると課長は、眉を寄せる。
やっぱり。機嫌が悪いのは、私が原因だ。
課長は、何だか言いにくそうに口を開いた。
「宮下。お前……兄貴が好みのタイプだろ?」
ギクッと肩を震わせる。や、やっぱり聞かれていた!?
違いますと言うと白々しいだろうか?
でも、そうですと言うのもどうかと思うし……。
どうしよう……傷つけるも怒らせる気はなかったのだが。
「隠さなくてもいい。見ていて分かりやすいしな。
それに、大体お前の好みも把握しているつもりだ」
「あの、すみません」
「何故謝る?お前は、別に悪いことをしている訳ではないだろ」
「それもそうなんですが……あ、いやっ!!
私が悪いんです。もっと配慮するべきでした。
それに私が好きなのは、課長ですから!」
私は、慌てて弁解する。上手く言葉が出てこない。
余計な事を言うとまた、怒られそうだし。
自業自得だとは言え……辛い。
すると課長は、ハァッとため息を吐いた。
ビクッと肩を震わせた。
どうしよう……呆れられてしまった。
泣きたくなってくる。すると課長は、私の方を見た。
「こちらこそ悪い。兄貴に嫉妬するなんて。
いちいち嫉妬するなんて、俺もまだまだだな。
それよりも今度……お前の実家にも挨拶に行くか?
その後に式場の下見でも行こう」
そう言ってクスッと苦笑いしてくれた。
そして頭を撫でてくれた。
私は、嬉しさと申し訳なさで課長に抱きついた。
課長……。やっぱり課長がいいと改めて思った。
すると影から見ていた人物が……。
それは、課長のお母様とお父様だった。
「あらあら。心配していたけど大丈夫みたいね。
あの2人を見ていると昔の私達を見ているようね」
「……そうだな」
静かに私達を見守っていてくれたようだ。
そんなことを知らない私達は、ずっと抱き締め合っていた……。