いや、気づかないように必死に蓋をしていた。
心の奥底にある感情を……。
私は、あの頃からずっとイケメンが大好きだった。
崇拝していた。
追いかけたり鑑賞するのが何よりも楽しくて
それが私なんだと思っていた。
イケメンが居ない人生なんて……考えられない。
肉が入っていない、すき焼きと同じぐらいに虚しいだけだ。いや、あんこの入ってないたい焼き?
どちらにしても課長と一緒に婚活してから私の心に変化が出てきた。
鬼かと思うぐらいに怒られてばかりだけど、いろんな事を経験して違う楽しみ方もあるのだと知った。
他にも綺麗なモノがあるのだと知った。
ずっとイケメンしか見て来なかった私なのに。
こんなの自分じゃない。
何度も言い聞かして目を逸らしてきたのに今になって……溢れてきた。
課長と沙夜さんのツーショットを見ていて胸が張り裂けそうになる。
まるで、あそこに居るのは、自分なのにって思えて悔しかったんだ。私……。
必死に隠そうとしてるのに一度漏れ出した感情は、もう止まらない。
私は、課長が好きなんだと……。でも、もう遅い。
こんなやり方をしていたら課長に好かれる訳がない。
中途半端が嫌いな人なのに。
こんな子供みたいに感情的になる私なんか……。
すると、その時だった。
「待て、宮下!?」
課長らしき人の声が聞こえてきた。えっ……?
振り返るとやっぱり課長だった。
「課長……?」
必死になってこちらに向かって走って来るではないか。
そして追いつくと私をギュッと抱き締めてくれた。
「すまない。調子に乗り過ぎた」
そう言いながら……。えっ……?
調子に乗り過ぎたって……どういうこと?
ワケが分からない。混乱していると課長は……。
「お前が初めてイケメン以外に俺に興味を持ってくれた事が嬉しくてつい……悪乗りをしてしまった。
宮下を泣かすつもりなんて無かったのに、すまなかった」
抱き締めながらそう言ってきた。
心臓が凄い勢いで高鳴り出した。
か、課長……何を言い出すの?急に……えっ?
「あの……意味が分からないのですが……?」