三か月働いて、ちょっと一人旅して、また働いて……を繰り返して今に至る。
派遣先で毎回「正職員になってよ」と詰めよられるのだけど、やっぱり組織に縛られるのが苦手なので、断り続けている。
「正職員になった方がいいのはわかってるんだけど……ねぇ」
コンビニでトマトパスタときのこスープを買った。エコバッグに入れ、家までの道を急ぐ。
ひとり暮らしのアパートは、歩いてあと十分くらいだ。
病院を出ると話し相手がいないので、自然と独り言が多くなってしまう。って、私はおばあちゃんか。
数メートル先の横断歩道の信号が点滅していた。走って渡り切るのも面倒なので、ゆっくり歩いていると。
「ぬうっ!?」
エコバッグを持っていた右手が、突然強い力で引っ張られた。ビックリして見ると、小学校低学年くらいの少年が、エコバッグをひったくろうとしている。
「なにすんの!」
少年だろうと、ひったくりは悪いことだ。そしてこれを奪われたら、私はコンビニに戻らねばならない。そしてもう一度お弁当とレジバッグを買わねばならない。もったいないし、面倒臭い。