辞めたはいいものの、次の派遣先は決まっていない。

 正看護師の資格を持っているので、引く手は数多あるのだけど、しばらく休みたいとも思う。

 それくらい、人手不足の病棟はしんどかった。看護師の仕事が好きな私でも、しんどかった。

「どうせなら、やったことのない仕事がしたいな」

 バスに乗り、自宅の最寄り停車場で降り、てくてくとコンビニに向かう。

 夕食は作らない。というか、自炊、一切しない。そんな暇があるなら看護の勉強をしたい。

 私、薬師寺実久瑠は、今二十五歳。五年制の高等専門学校卒業時に看護師の国家試験に合格した。

 その後三年、市立の総合病院に勤めた。消化器内科病棟から救急外来に異動になったりしたけど、仕事は楽しかった。

 ただ、病院の古臭く堅苦しい体質にはついていけなかった。

 今思えばどこの病院だってそうなのだけど、まあとにかくバカバカしい決まり事とか、上下関係とか、そういうのが急に嫌になって辞めてしまった。

 それからは派遣として自由気ままにあちこちの病院を渡り歩いた。

 経験したことのない科に配属されるのが楽しかった。私は新しいことを学ぶのが、どうも好きらしい。