「それにしても、おふたりはお優しいですね」
「む?」
「だって、私だけでなく、たぬきまで布団に寝かせてくれるなんて」
普通動物は布団に寝かせないだろう。家で買っているペットの犬猫ならともかく、血だらけのたぬきは家に入れるのも拒む人が多いのではないだろうか。
「これだから人間は」
お兄さんがふんと鼻を鳴らした。
「人間はいつも、自分が生き物の中で一番偉いと思っている。俺はそのたぬきを拾ったのだ。お前はおまけだ」
「おまけ……」
「そのたぬきを運んできたのでなければ、お前など救けはしない」
たぬきを運んできた。どうしてこの人がそれを知っているのだろう?
ぱちぱちとまばたきをする私を、お兄さんがにらむように見下ろす。
「もしかして、あなたたち狐守さん?」
「いかにも」
「あなたを案内した矢印は、兄さんの式神だよ。たぬきからの救出要請信号を感じ取った兄さんが放ったんだ」
しきがみ? 聞き慣れない単語にぽかんとしてしまう。
とにかくあの不思議な矢印は、このひとたちが作ったものだってことかな?