そのせいか、ちっとも前に進んでいる気がしない。なんとなく重力が増したような気さえする。

 矢印だけを頼りに歩くと、すぐに足が限界を迎えた。そもそも仕事で酷使した足で坂を上り、ここまで来たのだ。

 それでも前に進もうと右足を踏み出したとき、つま先に固いなにかがぶつかった。

「ああっ」

 危ないと思った時には、もう遅かった。私は咄嗟にたぬきを庇おうと体をひねり、バランスを崩した。

 頭と肩を、したたかに硬い何かに打ちつけた。木だろうか? くらりと視界が歪み、そのまま転倒した。

 私の腕からこぼれたたぬきが、ぽすんと葉っぱの上に乗る。私は霞む視界で、そちらに手を伸ばした。

 どうしよう。ここで私が倒れたらこのたぬきは……。

 なんとか体を動かそうとするけどうまくいかない。自分の意志に反して、まぶたがゆっくりと閉じていった。