「社長、落ち着かれたら今日のスケジュールをお話しさせていただきます」
「あぁ、今聞こう」

 お茶を飲み終えた社長が、湯呑みを置く。
 疲労と老化で落ち窪んだ社長の目がこちらを見るのを確認してから、俺はゆっくりとした口調で頭に入っている一日のスケジュールを暗唱した。

「それから、本日は十八時から東郷グループ代表との会食の予定が入っております。十七時には下に車を回しておきますので、入り口までいらしてください」

「わかった。次の予定まで少し時間があるから、君は下がっていい。わたしはもう少し休んでから、仕事に取り掛かる」
「はい、承知しました」

 瞼を閉じて目尻を指で押さえる社長に一礼すると、俺は社長室をあとにした。
 
 スーツのポケットからスマホを取り出すと、届いていたメッセージに返信をする。

 今日も、忙しくて平常な一日が過ぎていく。そう思っていたのに────……

 夕刻に起きたひとつの事件が山岡商事の平穏を奪い去っていった。