和典に招待された結婚式で見た「アヤカ」は、彼を魅了するのも頷けるほどに美しい女だった。
 それだけでなく、とても頭の切れる女性でもあったらしい。

 和典と出会った頃の「アヤカ」は、山岡商事の経営やプロジェクトに対して、外からの視点で彼によく意見していた。
 それは山岡商事にとって的確で、有益であることが多く、和典はますます「アヤカ」の魅力に溺れていった。
 和典が彼女のことをやや妄信しすぎているようにも思えたが、そのときの彼にはまだ仕事に対する熱意があった。
 だから社長も、「アヤカ」との出会いが和典や山岡商事にとってプラスに働くことを願って静観し続けていたのだ。

 ところが、和典が彼女と結婚したあと、事態はおかしな方向へと動き始めた。

 子どもの頃に実の両親を亡くし、裕福な親戚の家に引き取られたという「アヤカ」は、娯楽好きでひどい浪費家だった。
 彼女を引き取った親戚夫婦は裕福だったが子どもに恵まれなかった。そのせいもあってか、養女となった彼女をとても可愛がり、財産のほとんどを注ぎ込んで、望みのままに育てたというのだ。

 和典に嫁いでからも彼女の贅沢癖は変わらず、様々な場所に彼を引き連れて行っては散財をし始めた。

 「アヤカ」の存在を危険視した社長が和典に釘を刺そうとしたときには既に遅く、和典は妻である彼女の言葉以外には耳を傾けなくなっていた。