「それはいいとして、岡崎が刺されたのはかなりの誤算だった。フロントで揉めてるところを警備員に保護される程度で済むかと思っていたのに。左手に麻痺が残るかもしれないらしい」

「そうね。実はね、『もし話を聞かなければ、ナイフでもチラつかせてみれば』ってアドバイスしたのはあたしなの。でもまさか、あの小心者が本当に刺してしまうとは思わなかった」
「やっぱり、お前の助言だったのか」

呆れてため息を吐く俺の耳に、妹の愉しげな笑い声が聞こえてくる。

「お兄ちゃんはなんだかんだで優しいよね。麻痺くらいで済むならよかったじゃない。だって、お父さんとお母さんはもっと痛かったのよ?」

「アヤカ」

低い声で制すると、妹が数秒黙り込む。