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「取締会役員のなかには数名、俺の父のことを慕ってくれていた方々がいたんです。俺が山辺の息子だと名乗ると、その方々がこぞって俺を『次期社長に』と推してくれました」
社長は、何も言わなかった。もうすぐ社長の地位を失う彼は、もう何も言えなかったのかもしれない。
抜け殻のようになった瞳で、俺のことを見つめるだけだった。
「山岡商事に入って、あなたや和典さんにかけていただいたご恩を忘れたわけではありません。ですが、それ以上にあなたが父にしたことは許せません。だから……」
一度言葉を切ると、社長のがらんどうになってしまった目を真っ直ぐに見つめ返す。
ここまで来るのに、とても時間がかかった。
ようやく、絶望のままに命を絶ってしまった両親の無念を晴らすことができる。
「今度は俺が、あなたの会社をいただきます」
その一言に、渾身の力を込める。
俺の言葉に、社長が脱力するように頭を下げた。その表情を見ることはできなかったが、社長の肩は僅かに震えていた。