俺が入社したときの山岡商事は、岡崎社長と息子の和典が大きな力を持っていた。
新人の俺が社内で力をつけていくためにはまず、若手のトップに立って会社を主導している和典に近付いたほうがいい。
そう思った俺は、必死に勉強をして和典の目に留まるように努力した。その成果もあってか、入社して二、三年経った頃から、和典主導のプロジェクトチームに毎回参加させてもらえるようになった。
俺は和典の信頼できる部下としての地位を築きながら、山岡商事の各部署内に少しずつ人脈を作っていくことにした。
父の事件の真相を見つけるヒントがあればいい。
そう思って動き回ったが、俺が山岡商事に入社した時点で、父の事件が起きてから既に五年の歳月が過ぎている。社内のメンバーの入れ替わりもあり、なかなか事件の真相はわからなかった。
けれど、社内で勢力的に社員たちを引っ張っていた和典が、「アヤカ」という女に出会って溺れ始めたことで、俺に好機が巡ってきた。
社員たちのなかで、岡崎社長や和典のやり方に不満を持つ反乱分子が少しずつ出始めたのだ。
「アヤカ」の言いなりになった和典が取締役の職を失う頃には、社内の反乱分子の数はさらに増えていた。