初めは横領の事実を否定していた父だったが、しばらくして会見が行われて、父は容疑を認めて謝罪した。
俺はその謝罪会見の一部始終を、母や妹と一緒に自宅のテレビで見ていた。
事件のニュースが出てから会見が行われるまでの約一週間、父は家に帰ってきていなかった。
テレビ画面越しに一週間ぶりに見た父の顔は青白く、頬はこけて、俺が知っているその人とはまるで別人のようだった。
会見で謝罪する父の姿を見るまで、俺は父を信じていた。
幼い頃からずっと尊敬してきた父親が、いつも優しい笑顔で俺たちを見守ってくれていた父親が、不祥事など起こすはずない。
だが、たった一週間で別人のようにやつれた父親が頭を下げる姿を見たら、よくわからなくなった。
この人はいったい誰なのだろう。
人は、所属する場所に合わせて自分の顔を変えることができる。
俺たち家族の前で見せていた優しい父親の顔はニセモノで、テレビの向こうで頭を下げるこの人こそが、本来の姿だったのかもしれない。
隣で椅子から崩れ落ちた母の啜り泣く声を聞きながら、俺はぼんやりとそんなことを考えてしまった。