俺の父が、友人である岡崎と一緒に立ち上げて大きくした山岡商事の金を横領した。

 二十年前のある日。そんなニュースがテレビや新聞で一斉に報じられた。ギャンブルに注ぎ込んで金に困った父が、会社の金に手を出したと言う。

 そのニュースが流れたのと同時に、自宅に一気にマスコミが押しかけ、当時高校生だった俺はしばらく学校に行けなくなった。

 父が社長である俺の家は、周りに比べればそこそこに裕福だったと思う。だからといって豪邸に住んでいたわけでもなければ、特別に贅沢な生活を送っていたわけでもない。ほとんど一般家庭と変わらないような環境で育てられた。
 それはたぶん、会社を立ち上げるまでに苦労した父の方針だったのだろう。

 土日も自宅で庭いじりをしていることの多かった父は、俺の知る限りギャンブルになどハマっていなかったし、我が家は金に困ってなどいなかった。
 それなのに、父のことを悪人のように報道するニュースが信じられなかった。