「ちなみに、高森の家に引き取られる前の俺の名字は山辺と言います」
「あ……」

 小さく呻いた社長が絶句する。

「もうお気付きですよね?私は、あなたとともに山岡商事を立ち上げた山辺の息子です。父は二十年前、山岡商事を独占しようとしたあなたの手によって、関与していないはずの不祥事の責任をとらされ、取締役の職を失いました。その後のことも、もちろんご存知ですよね?」

 視線を落としてずっと密やかに口角を引き上げていた俺は、顔をあげると真顔になった。

「父はあなたの裏切りに絶望し、自ら命を断ちました」