今日は学校の始業式で涼しい日だ。朝早く起きて、だらだらとしていいと日々と別れる日がやって来てしまった。思ってたよりもずっと早くて少し勿体ない気もする。

 これは何度目の始業式だろう。俺はずっと同じことを繰り返している。むしろこうしか出来なかった。
 俺にとって時間などはもうとっくになんの意味ももたない。ただ流れていくだけ。私はさっさと着替えた。それ主に白を重視した制服だ。服や鞄を整理ししながら何だか色々思い出せる、そもそもこんな人生を送るつもりなんでなかった。

 それも深い訳だ。音瀬一家は遠い昔から音楽の才能を持ってると言われてる。皆それぞれ必ず何かの楽器を極めなければいけないと家の人に要求されてきた。

 もちろん俺もその一人だった。だけどちょっとした特別な例だったのかもしれない。

 両親は俺が生まれた直後に交通事故に巻き込まれた。幸いなことに両親は命拾いをした。けれどお母さんは手術を受けて以来不妊になった。

 だから俺は家を継ぐことが出来るたった一人の存在になったわけだ。

 音瀬一家の当主である俺のおじいちゃんに娘である母はいつも酷く叱られていた。音瀬一家にとって女の務めはただ子を産むことでしかないからだ。
俺はそんな差別が大嫌いだった。

 不思議なことに、お父さんはお母さんをいつも大切にしてた。家の考え方が古いと何度もおじいちゃんに逆らった。
 だけど、いくら何だって自分のお父さんの考え方を変えることはできない。だからお父さんはあの時も黙って、お母さんが叱られるところをただ見ていた。

 そんなこともあり、俺はピアノだけではなくクラシックギターも学ばないといけないと、家の者に叱られた。正直言うと俺は音楽に興味なんてなかった。でも結局この家の仕来りを避けることなんて無理だった。

 そんなことを重ねて俺はピアノだけではなく、クラシックギターも勉強しないといけないと家のものに叱られた。正直に言うと俺音楽に興味なんてない、でも結局この家の仕来りに避けるなんて無理なんだ。

 俺は長男なのに何の音楽の才能もなかった。毎日死ぬほど練習した。手はギターの練習で傷だらけ、タコだらけになっていたが、両親は満足しなかった。
 両親は俺が本気で練習してないと、いつも厳しかった。二人とも有名なミュージシャンだったから、きっと俺の気持ちが理解できなかったのだろう。俺は一生の時間を使い尽くしても、きっと両親みたいにはなれない。

 俺はこんな家が大嫌いだった。自分はこの家に生まれてこなければ良かったと、常に思っていた。

 そして俺は十六歳の誕生日を迎えた。
 それから数か月が経ったころ、俺は最初の体の異変を感じた。前までは少しずつ背が伸びていたのに、ここ最近一ミリも伸びなくなった。でも俺はそのことについて深く考えてはいなかった。
 あっという間に月は流れ、なんだかんだで高校の卒業式を迎えた。

 卒業式の後、俺は友人と写真を撮っていた。すると、おかしなことに気付いた。その写真と十六歳の誕生日に撮った写真とを見比べた。

 恐ろしいことに、俺はあの十六歳の誕生日以来何も変わっていないのだ。顔も身長も何一つ変わってない。まるでそっくりな人間が二人いるかのように。

 でも両親は気づいていなかった。そもそも二人は俺を構う暇なんてなかった。両親は演奏家としていつも世界中を飛び回っていたから、時々家にいるくらいでしかない。

 俺が大学卒業くらいの頃から、両親は家にいるようになった。仕事が一段落したらしい。一緒の家にいる時間が長くなったから、両親は俺の体の成長について、いよいよ疑問を持ち始めた。いつかは気づかれると思ってたけど、まさかそんなに時間がかかるとは。
 もちろんおじいちゃんもその内このことを知った。

 両親は俺を有名な病院に連れて行き、検査を受けさせた。でもどんな検査を受けても何も問題箇所は見つからなかった。両親はそれを病院のせいにし、そしてまた別の病院に行った。

 当然両親が納得できる答えは何も得られなかった。