今日はとっても暑い日で太陽が眩しい。いつも通りにあの桜の木の下に座っているけど、陰で太陽を避けたところで相変わらず暑くて周りが燃えそうだ。

「アイスが食べたくなる季節になったな。」

 私は一旦椅子から降りてリビングに戻って、迷わずにエアコンをつけた。そしてソファーの上に座ってテレビを見ようとした。

 前に清水先生が作ってくれたアイスを思い出す。あれはバニラの味で、甘すぎずちょうどいい。そして充分な香りもあった。今まで食べてきたアイスの中で、一番美味しかった。

 そんなことを思いながら、本を読んでる。この本は最近話題になっている新作で、ずっと届くのを楽しみにしてた。しかし、こんな蒸し暑い日に本を読むのは、少しやる気が出ない。

 前に清水先生はアイスの作り方を教えてくれたことがあったけど、何度試しても上手くいかなかった。それでも彼女は何度でも教えてくれた。

 アイスを買いに行きたいけれど、今日は土曜日だし出来れば出かけるのを避けたい。

 この前彼に引きこもりだと言われたことを思い出したら、まだ心が痛んだ。彼に会いたい気持ちと会いたくない想いが交差して、私の心は矛盾でいっぱいだ。

 でも私はやっぱりアイスを買いに行こうと、二階にゆっくりと上った。そしてお出かけ用の服に着変えた。前にネットで買った花柄のワンピースだ。ずっと着てみたかったから結構いい気分。あと色んな帽子の中から、母が生前大好きだったものを選んで、楽しい気持ちで出かけた。
 私はエアコンを閉じ、引き戸が鍵かけていると何度も確認してから出た。

 アスファルトの一本道に沿って進んだら、向日葵が道路の横の大きいな地に綺麗と咲いてる。それに対して、私は汗が滴りに落ちてとても暑苦しい。向日葵はこんな暑い日の中でも元気そうに太陽に向け咲いてるなんでね。

 歩くこと数十分で大きいデパートに着いた。自動門が開く瞬間、とても涼しい風が強く降ってきた。それは凄く感動と感じた。
 アイスだけを買うつもりで出てきたのに、久々のお出かけでうきうきしてしまい、色々買いすぎてしまった。何より中がとても気持ちいいから外に戻って暑さと向き合いたくない。

 それでも流石に疲れて少し休もうかと思い、母の日記に書いてあった古い喫茶店を探してる。私は携帯のマップに導かれ、小さな路地に入った。

 そこには母の日記に書かれていた通りの外観の喫茶店があった。中に入ると木のいい香りがしてきた。バーカウンターに所狭しと置かれている品々が目に入ってきた。母の日記によると店主は骨董品集めが趣味で、海外に行っては、あらゆるところで買ってくるらしかった。

 店員さんに案内され、席についた。その席からはコーヒーを淹れる人が見え、私は興味津々でその人を見つめていた。

 そうしていたら、いつの間にか一人の店員さんが私の横に立っていた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

 私は先ずその人の声に驚いた。
 ただ単に声をかけられたことに驚いたのではない。心臓が飛び出るかと思った。

 彼が立っていた。音瀬がいるのだ。彼との遭遇にはいつも必要以上に驚く私。対照的に、いつも落ち着いた顔をしている彼。

 私は色々聞きたかったのに、頭が真っ白で何を言ったらいいのか分からない。