今日もいつも通りに色々な練習を済ませた後、庭の大きい桜の木の下にある木の椅子に座った。ここでよく本を読んでいる、もう百年近くのこの桜の木の下は涼しい風がよく吹いてくて私の好みの場所だ。

 本は本当にすごいもの。本を読んでいると時間を忘れることができる。そして何より自分一人でも楽しめるものだ。

 すると誰かが家のチャイムを鳴らした。私はチャイムの音に驚かされて、手の力を抜いてしまった。すると手に持っていた本は地面に落ち、風のままにページが変わっていく。

 庭からリビングに歩いながらも誰だろうと心拍が早くなる一方だ。それても私は歩き続け、誰なのか見てみたいと思った。
 この建物は古いから未だに扉は引き戸だ。私は硝子の引き戸を通して影が見えた。だけど、そこに一人男の子が立っていることだけはわかった。見た感じだと背は私より高い。多分180センチくらいかな。

 私はもちろん出るつもりはない。だって人と接触しない方がいいと思ってるから。

「ごめんください。」
「夜桜さん、いますか?」

 その人の声はとても元気で明るい感じがする。
 それは一度も聞いたことがない声。それなのに私の名前を呼んだから少しびっくりした。
 
 私は慌てて隠れて、ばれないように一切音も出さない。

 針一本を落としてもならないくらい静かにしていないとばれると思ったら、心臓が飛び出そうだ。

「いないのか、じゃまた後で来るか。」

 すると彼の足音が段々と遠くなっていった。

「どうしてあの人は私の名前をしってるの?そもそも彼は誰なんだろう?」
「私の噂を知らない人はこの町にいないはず。それなのにどうしてわざわざここに来るの?」

 私はたくさん疑問があるけど、彼と直接顔を合わせることもできない。そう考えながら私は完全にさっきのは本を忘れ、リビングの本棚に置いてある新たな本を手に取った。

 色んな事を考えながら本の続きを読んでたら、あっという間に時間が過ぎていった。窓のほうをぱっと見ると、空は夕日に染められて、とても綺麗な色になっていた。

 私はその空に呼ばれるように、思わず外に出ようと引き戸をがらがらと開けた。
 引き戸を開けた瞬間、「きゃ!」と声が出てしまった。なんと彼がまたそこにいたのだ。

 彼の髪はちょっと茶色で短く、夕日に染められてより綺麗な色に見えた。

 そして彼は細くて背も高く、見るからに運動が得意そうだ。
 そんな彼が優しく微笑んで私を見ていた。

 よく見ると彼の手はタコだらけ。多分何かの楽器をやっている人なのだろう。音楽が好きでないと、あんな風な手にはならない。彼はきっと音楽が大好きなのだろう。
 
「あ、もしかして夜桜雪恵さん?」
「え?」
 
 私は突然しらない男子にフルネームを言われて、驚いた。どう答えればいいのもわからない。
 
 なんでまた来た?どうして私に会いに来る?と聞きたいことはたくさんあるのだが、同時に私は彼と接触したくない。

 彼と目を合わせるのが怖い。だから私は嫌な態度をとって、彼に嫌われたほうがいい。そうしたら誰も傷つけないで済むから。それでいい。