あっという間に夏休みも残り3日になってしまった。夏休みの間、彼は毎週二度くらい尋ねてきた。そして今日は彼と学校に行って、復学の手続きをする日だ。少しドキドキする。
 朝十時頃、彼が家に来て学校まで連れて行ってくれた。十分ほど歩いたら学校が見えてきた。学校までの道は木が植えられて、影のおかげで太陽を避けられた。

 その学校は私が思っていたよりずっと新しく見えて、最初に目に映ったのは、大きい窓ガラスが特徴的な近代的なビルだった。不思議なことに、太陽の光に反射しないみたいだ。後ろ側に教室があるから眩しいと生徒に影響してしまうと考えたからだろう。

「このビルすごいでしょ?!俺も初めて来た時びっくりしたんだ。これは図書館。」
「これ全部?!」

 そのビルは二階建てだけど、見るからに巨大で、全部本が詰まっているなんて凄すぎて興味深い。たまたまこの学校が家から近いから入ったけど、まさかこんなに立派な建物があるとは思わなかった。

 周りをよく見渡すと、二つの校舎の間にある廊下から両校舎の後ろに運動場や体育館が見えた。それに全体的に校舎は主に白を重視した感じだ。

 彼は私を図書館と垂直で繋がっている校舎まで案内してくれた。数秒歩いているだけでもう暑さに飲み込まれそうだ。太陽の光は皮膚を攻撃しているみたいに射してくる。やっと右の校舎に入ると長い廊下があって、少し歩くと教務員室があった。

「お邪魔します。」
「お...お邪魔し...します。」

 彼に連れられ、私はそこに入った。真っ先に感じたのがエアコンの寒さだ、とても涼しくて助かる。
 中に入ると色んな人から見られている感じがするし、沢山の先生が居た。彼は平気そうに前に進み、私はただ彼の後ろについて行くだけ、ただひたすら彼の背後を見つづけた。

 頭を上げると、男の先生が彼を見つめていた。そして彼もあの先生を真っ直ぐに見た。多分その先生がクラスの担任だろう。

「音瀬か。本当に連れてくるとは思わなかったよ。やっぱりお前に任せて大正解だったな。」
「そんなことを言われても全然嬉しくないです。俺が悪者みたいじゃないですか?」
「いや、褒めているんだよ。そんなことより、夜桜さんですよね?初めまして。俺が夜桜さんの担任の三浦です。」
「初めまして。夜桜雪恵です。よろしくお願いします。」

 私は頭を下げた。何とか言葉が出せて良かったと思っていると、隣を一瞥したら先生たちは少し慌てているようだった。やっぱり普通の人はそうなんだね。私の名前を聞いたら怯える。
 でも目の前にいる担任の先生は慌てることも怯えることも無く私と話している。この先生も音瀬と同じく私を受け入れてくれるだろう。今はまだ分からないけど怯えずに話を聞いてくれるだけで心強く思う。

 手続きは数分で済んだ。やっと家に帰れると思って、校舎から出た。出てきたらやっぱりその図書館が気になって仕方ない。私はそのビルを見つめた。

 初めて心の中でこんなにも学校に行きたいと思えた。先の事を期待することすら考えたことがない。