夏休みも半分過ぎた頃。毎日暑くて本当に辛いけど、彼はバイトの休みに誘ってくれて、一緒にでかける日々は楽しかった。初めてこんなにも豊かな夏休みを過ごした気がする。
ある日の昼過ぎ、彼が家に来た。私は一旦彼にソファーの上に座ってと言った。すると彼はリビングのソファーで、昼食の後片付けをしている私を見ている。
「もう行く?」
「ん?どこに?」
「学校に必要なものを買いに行くって言ってなかったけ?」
「そうだった!」
今日買い物に行くって完全に忘れた!彼が先週言ってたのに。
「ちょっと待て!」
私は皿を素早く片付けて、慌てて二階に上がった。バックとか何も用意してなかった。私は走り回って色んなものを揃えた。ついでに服も着替えようと思ったけどなかなか決まらなくて、十分くらいも悩んでしまった。
色々な服を試しては脱ぎ、もうそばには服の山ができているのにまだ決まらない。悩んだ挙句、私は長めのデニムスカートを着ることにした。そしてトップスはクローゼットの最後の一着の白いTシャツにした。そして黒いショルダーバッグを手に取った。
最後に少し化粧をして、ピアスを付けた。ピアスを付ける度に清水先生が穴を開けてくれた記憶は今にも鮮明で、まるで昨日のことかなようだ。当時は家の仕来りでピアスの穴を開けることなんて許されなかった。私も小さかったから、ただ冗談を言っているだけだと誤解されていた。
清水先生はいつも綺麗なピアスを付けていたから気になってた。私が「どうしても開けたい!」と頼むと清水先生がピアッサーで開けてくれた。本当に痛かったけどピアスができるようになって、本当に嬉しく思う。
「よし!」
最後に物をバックに入れた。だいたい二十分くらいたったからちょっと彼に申し訳ない気がしながら私は一階に降りた。降りると彼がソファーの上で座っている背後の姿が目に入った。
近くまで行くと、彼が誰かとメッセージのやりとりをしているところを見かけた。そして上にある通知の数は二十個もあった。
私と彼は結局違うんだ。彼にとって、私はただその中の一人でしかいない。彼みたいな優しい人は友達なんで山ほどいるし、私もその一人でしかいないだろう。彼の人を癒せる力は迷惑なんじゃない。人を傷付けてばかりの私とは違うんだ。
私は彼なら同じなんじゃないかって思い込んじゃっていたけど、結局私が一方的にそう勘違いしているだけだ。私と会うのは彼の迷惑ではないだろうかって思えてきた。考える度に胸が痛くて苦しい。自分が一度だって彼に報いていないのに、助けられるばかり。
何より、こんな風に考える自分が大嫌いだ。