「できた!」
十分程たったらやっとできた。それも上出来でびっくりした。焼いている時の匂いも桁違いでいい匂いだ。確かに清水先生が亡くなった後、料理はただ生きるために作ってきただけ。
一度料理に対する想いを失った私は、何を作って食べても同じ味がした。でもきっと他人に喜んで食べて貰いたいという気持ちが、私の料理に足りないところだった。
「お待たせ!」
「めちゃくちゃ美味しそうじゃん!ずっといい匂いがしてたんだ。」
「そう言われると嬉しいよ。ちょっと待っててね、箸とか持ってくる。」
私はハンバーグを先に皿に乗せ、ダイニングテーブルまで持って行った。そしてまた箸を取りにキッチンに戻った。
「いただきます!」
バタバタしていた私を待ってから彼は食べようとした。私も待ち切れなく一刻も早く食べたいと思って箸で小さく切ったら肉汁が流れ出した。
「美味しい!」
口に入れた瞬間肉汁がふんわりと広がって、ソースとも相性抜群でとても美味しい。彼も食べたら幸せそうな顔でほっとした。でもこれはやっぱり清水先生との味とは少し違う。清水先生の料理はいつも私を感動させる美味しいさがあるのに。
何が足りないのだろう。
彼と食べながら色んなことを話した。それも彼が学級委員長っていうことを初めて知った。彼は学校でも相当信頼されているみたいだ。そして彼には良い親友がいるって知った。その人はクラスの人からあんまり好かれていなかったけど、奏くんにとってその人は信頼できる人で、良い奴だと聞いた。
食べ終わった後、彼は皿洗いを手伝ってくれて、そして私は皿を拭いた。彼と一緒にやったら早く済んだ。いつもなら一人で洗うけどね。今こうしてまた誰かと話ながらご飯が作れて本当に嬉しい。
そして彼が家に帰っていた。私は玄関で彼に手を振って「またね」と彼は言ってくれた。彼が離れた後、私はソファーに座った。
今日の時間は早く過ぎて、まさか一日がこんなにも短いとは思わなかった。
そしてますます学校に行く日が近づいてきているというのに気づいた。それでも学校に行くのが少し楽しみな気もする。同時に彼みたいな人に学校でも会えたらいいなってつい思ってしまう。彼の友人のことも気になる。
そもそも彼は学校にいる時はどんな人なんだろう。色んな面があるから。