「音瀬!お願い!目を覚まして!」

 昔みんなが段々と離れていく情景が、まるでここで再現されているかのようだった。それは地面に一粒の水が見えたから自分の涙が零れたことにだと気つけた。

「どうしだんだ?夜桜さん?」
「え...?」
「昨日夜遅くまで起きてたから、疲れて寝てしまったのか。すまない。」

 まさか彼は何ともないなんて。私はいったい何のため泣いてたんだと思うと、顔が赤くなって私は頭を下げた。まるで顔が燃えそうくらいに赤くなった。
 私は強く胸を掴んだ。何故か胸がざわついて息苦しい。

「迷惑かけたみたいだね、ごめん。まさかそんなに深く眠りにつくと思わなかった。」

 私はまだ気持ちが落ち着かなくて、何と返事したらいいのかわからない。元を言えば私が勘違いしちゃって自分一人でパニックになってただけなのに、なんで彼が謝るんだ。
 私は何故か怒りに乗っ取られ、私は素早く立ちが上った。

「なんで謝るの?!どうしてもっと自分を大切にしないのよ?!」
「今こうして私と話している間に自分の命が縮むかもしれないんだよ。私なんか放って置けばいいじゃない!」
「たとえあなたが不死不老であろうと、私の能力によって傷ついてしまうかもしれないのよ!」

 私は彼を見て逆キレちゃって彼を怒鳴った。そしてまた頭を下げた。
 最悪だ。私はひたすら自分の感情を彼にぶつけているだけだ。私は彼に嫌われても、彼に無事に生きて欲しいとしか思っていない。私はきっと彼が命を懸けるべき相手ではない。

「どうしてそう思うんだ?俺も悪かったんだから。ごめん。」
「長い話になるけど聞いて欲しいんだ。俺の家のこと。そうしたらなんで会いに来たのかわかるかもな。」

 彼の声から少し元気がなさそうな感じがした。私はソファーの横の床に体育座りをして、頭を下げたまま彼の話を聞いてる。彼はどうして私に自分の家のことを教えるんだろう。そもそもなんで私に優しくするんだ。

 本当に彼といると調子が狂う。

 私が返事しなくても彼は勝手に話を進めていく。疑問を持ちつつも、今この空間に響くのはただ彼の声しかないから、話を聞かない訳にもいかない。

 彼の話を聞き始め、数十分が経った。それはそれで重い話になっていた。彼は以前家の人と何かあったのは知っていたけれど、それ以上知りたいと思わなかった。

 そもそも私は人に深入りしたくない。彼に迷惑かけてばかりな私に一体何を求めると言うのだろう。