ゴブリン達の襲撃に遭うウード達。
クレスが思わぬ剣の才能を見せるのだった。
「すげーな嬢ちゃん!おし、このままゴブリン達を駆逐するぞ!追い払えれば、他の商人からも褒賞が貰えるかもしれないぞ?」
そういつつ、夜の暗さに慣れてきたのか、剣に迷いがなくなったドリスが次々にゴブリンを仕留めていく。
他の二人もそれぞれの斧と槍で近づいてくるゴブリン達を屠っていた。
「しかし、やけに数が多いぜドリス!」
「しかも、ゴブリンスカウトが数匹いたって事は、結構な集団じゃないのか!?」
普通のゴブリンというのは、昼に行動することが多い。
夜に襲撃するのは、夜目が利くゴブリンスカウトというゴブリン亜種の斥候役がいないとしないのだが、そういう上位種が居るってことは、かなりの数が近くにいることになる。
近くに野営している商人たちも、当然護衛は雇っているはずだ。
それが襲われているとなると、ここらには少なくとも50匹くらいは出没しているだろうという事だ。
「なんだって、こんな時に森から出てきたんだ!?こんな所を襲うなんて、余程じゃない限りしてこないはずなのによっ!」
そう言いながらも、次々にゴブリンが倒されていく。
先ほどのゴブリンスカウト程は素早くもなく、また腕力も然程でもないようだ。
クレスも剣に慣れてきたのか、近づくゴブリンをサクサクと首を刎ねていった。
「ク、クレスちゃん。怖くないの?」
「大丈夫。襲って来た猿だと思えば、怖くもないよ!」
マリアに聞かれ気丈に答えるクレス。
たぶん、そう自分に言い聞かせてるのだろう。
実際に稀に興奮して襲ってくる猿もいるので、自衛のために殺すところを見せたことがある。
なので、猿だと思えば割り切れるのかもしれない。
俺には禍々しい魔物の一匹という認識しか湧いていないけどね。
アレとは絶対に仲良くはなれないだろう。
エースも数匹の喉を喰いちぎって、仕留めていた。
親に似て優秀な狩猟狼だな。
そこに近くの商隊から人が逃げ込んでくる。
「た、たすえてぇ~」
情けない声を出しながら、小太りのおっさんが転げながらもこちらに飛び込んできた。
その後ろには、恐ろしい形相のゴブリンが3匹手に斧を持って追いかけてきている。
「ここは、任せろ!」
ドリスは、剣ですぐに一匹のゴブリンの頭を落とした。
続けざまに、後ろのゴブリンの胸を一突きし、絶命させた。
一気に仲間が二人死んで、怒り狂うゴブリンだったが…。
「隙だらけだな」
と、タルトスが投げた手斧でゴブリンの頭が吹き飛んだ。
手斧なのに、凄い威力だな。
さすが熟練の冒険者は放つ威力が全く違う。
そうだ、転がってきたおっさん大丈夫かな?と自分の事は置いといて、商人らしき人物を起こしてあげた。
「ああっ、助かったありがとう!ありがとう! …あんたら、強いんだな。うちの方はかなりやられちまったんだ、ゴブリンの集団なんてここらじゃ見なかったのに、いきなりやって来たんだ!頼む!他の奴らも助けてやってくれないか!?」
おっさんは助かった安心感と仲間の安否が心配なのとがごちゃ混ぜの感情のまま、早口で俺らに説明をした。
どうやらまだ生き残っている仲間が取り残されているようだ。
ただ逃げてきたわけじゃないみたいで、助けを呼びに来たのだという。
護衛が奇襲で複数人やられてしまった、今は残った一人が奥さんと娘を守っているんだと言う。
「ドリス、助けにいこう」
「ウードさん、こっちは落ち着いたけど、向こうはまだ危険なままだぞ?素人のあんたが行ってもさっきみたいに死に掛けるぞ?…サント俺と来い!」
「了解だ兄貴。タルトス、ここは頼んだぞ?嬢ちゃんも、ここで待ってな」
二人は小走りにおっさんの言う方へ向かった。
通常なら持ち場を離れないのだが、今回は緊急事態なのでこの場を収めた方が安全だということだ。
いきなり色々ありすぎて、頭がパンクしそうだがとりあえずここを切り抜ける事を考えないといけない。
───
しばらくすると、ゴブリンの悲鳴らしき声が響いてきた。
どうやら二人はうまく討伐しているようだ。
さすがに奇襲を掛けられなければ、開けた場所で戦闘する限りゴブリンなどは物の数に入らないらしい。
もちろん一般人や新人であれば脅威になるのだから、手を抜かずちゃんと仕留める。
そのあとに、こちら側にゴブリンが来ることは無かった。
他の商人の護衛も奮闘していたらしく、ここを襲撃をしたゴブリンは殆どを討伐に成功したのだった。
対して、こちら側の被害は護衛や従業員などが数人亡くなったらしい。
それでもこの規模の襲撃ならば少ない方だという。
危うく自分がその仲間入りになるところだったのかと思ったら、今更震えが来る。
この歳で情けない事この上ないが、怖い物は怖いのだ。
だが、よく見るとクレスの手も震えているが見えた。
いかんいかん、父親の俺が怖がっている場合ではないな。
「クレス、もう大丈夫だよ。ドリス達が全部やっつけてくれたからな」
「う…うん、はぁ、良かったぁ~」
そう言うと、さっきまで気丈に振舞っていたのかその場にへたり込んでしまった。
そして、一緒にいたマリアも同じく座り込んで啜り泣き始めた。
二人が抱き合いながら慰め合っている姿を見ると、まるで姉妹のようだな。
そんな二人を見ながら、この後どうするかとマチスに話しかけた。
「こんな状況ですが、ひとまずは退治するのに成功しています。こんな夜中に下手に動いて違う魔物に遭遇すればもっと厄介です。ここで予定通り野営するのが良いでしょう。但し…」
マチスの提案で、無事だった商人たちの荷馬車や人を集めて話し合っていた。
中には護衛に死傷者が出ており、警護が難しい者もいるようだ。
こういう時には、纏まって動くことで必要な護衛の数を減らすだけでなく襲撃を防ぐ効果を期待できるらしい。
そのため、無事だった中で一番格が高いらしいマチスさんが取り仕切り、町まで纏まって移動する事になったようだ。
ドリス達も報酬が増えて助かるぜ的な事を言っていたので、寧ろ良かったのかも知れない。
警護対象は増えるが、危険度はかなり減るからだ。
「ウードさんは、御者だから報酬はそのままだけどな!」
はっはっはと笑われたけど、今回は報酬が目当てでもないので特に異論はない。
マチスさんに日ごろお世話になっているので、少しでも恩が返せればいいかなぁくらいだ。
「ああ、でもクレスさんには特別手当を戻ったら出しますよ。護衛として雇いましたが、こんな魔物と戦わせるつもりなんてなかったので。それにちゃんと仕留めてますから、その分の報酬は渡します」
「そんな、いいです!そこまで役に立ってないですし」
「いやいや、初めてで一匹でも倒せれば充分なのですよ?複数匹倒すだなんて、新人冒険者にしては中々の戦果です。それにお父さんの分もあるから、それはクレスさんの分に加算して報告しておきますからね」
お父さんの代わりに受け取ってくださいね?と念を押されれば、クレスも受け取るとしか言えない。
ひとまず、夕食前だったのでみんなで持ち寄って炊き出しをした。
さすがみんな商人だけあって、なかなかいい物を持ってきている。
鶏肉に、野菜に、卵…卵!?
ああ、さっきの騒動でヒビが入ったのか。
じゃ無いと、卵は高いから野営の時になんか食べないんだぞと言われた。
勿体ないから食べてしまおうという事だった。
と言うわけで、卵と鶏肉の雑炊を作ってみんなで食べるのだった。
この日の夜は死者の弔いを行ってから食事をし、それぞれ交代で見張りを立てつつ野営をするのだった。
クレスが思わぬ剣の才能を見せるのだった。
「すげーな嬢ちゃん!おし、このままゴブリン達を駆逐するぞ!追い払えれば、他の商人からも褒賞が貰えるかもしれないぞ?」
そういつつ、夜の暗さに慣れてきたのか、剣に迷いがなくなったドリスが次々にゴブリンを仕留めていく。
他の二人もそれぞれの斧と槍で近づいてくるゴブリン達を屠っていた。
「しかし、やけに数が多いぜドリス!」
「しかも、ゴブリンスカウトが数匹いたって事は、結構な集団じゃないのか!?」
普通のゴブリンというのは、昼に行動することが多い。
夜に襲撃するのは、夜目が利くゴブリンスカウトというゴブリン亜種の斥候役がいないとしないのだが、そういう上位種が居るってことは、かなりの数が近くにいることになる。
近くに野営している商人たちも、当然護衛は雇っているはずだ。
それが襲われているとなると、ここらには少なくとも50匹くらいは出没しているだろうという事だ。
「なんだって、こんな時に森から出てきたんだ!?こんな所を襲うなんて、余程じゃない限りしてこないはずなのによっ!」
そう言いながらも、次々にゴブリンが倒されていく。
先ほどのゴブリンスカウト程は素早くもなく、また腕力も然程でもないようだ。
クレスも剣に慣れてきたのか、近づくゴブリンをサクサクと首を刎ねていった。
「ク、クレスちゃん。怖くないの?」
「大丈夫。襲って来た猿だと思えば、怖くもないよ!」
マリアに聞かれ気丈に答えるクレス。
たぶん、そう自分に言い聞かせてるのだろう。
実際に稀に興奮して襲ってくる猿もいるので、自衛のために殺すところを見せたことがある。
なので、猿だと思えば割り切れるのかもしれない。
俺には禍々しい魔物の一匹という認識しか湧いていないけどね。
アレとは絶対に仲良くはなれないだろう。
エースも数匹の喉を喰いちぎって、仕留めていた。
親に似て優秀な狩猟狼だな。
そこに近くの商隊から人が逃げ込んでくる。
「た、たすえてぇ~」
情けない声を出しながら、小太りのおっさんが転げながらもこちらに飛び込んできた。
その後ろには、恐ろしい形相のゴブリンが3匹手に斧を持って追いかけてきている。
「ここは、任せろ!」
ドリスは、剣ですぐに一匹のゴブリンの頭を落とした。
続けざまに、後ろのゴブリンの胸を一突きし、絶命させた。
一気に仲間が二人死んで、怒り狂うゴブリンだったが…。
「隙だらけだな」
と、タルトスが投げた手斧でゴブリンの頭が吹き飛んだ。
手斧なのに、凄い威力だな。
さすが熟練の冒険者は放つ威力が全く違う。
そうだ、転がってきたおっさん大丈夫かな?と自分の事は置いといて、商人らしき人物を起こしてあげた。
「ああっ、助かったありがとう!ありがとう! …あんたら、強いんだな。うちの方はかなりやられちまったんだ、ゴブリンの集団なんてここらじゃ見なかったのに、いきなりやって来たんだ!頼む!他の奴らも助けてやってくれないか!?」
おっさんは助かった安心感と仲間の安否が心配なのとがごちゃ混ぜの感情のまま、早口で俺らに説明をした。
どうやらまだ生き残っている仲間が取り残されているようだ。
ただ逃げてきたわけじゃないみたいで、助けを呼びに来たのだという。
護衛が奇襲で複数人やられてしまった、今は残った一人が奥さんと娘を守っているんだと言う。
「ドリス、助けにいこう」
「ウードさん、こっちは落ち着いたけど、向こうはまだ危険なままだぞ?素人のあんたが行ってもさっきみたいに死に掛けるぞ?…サント俺と来い!」
「了解だ兄貴。タルトス、ここは頼んだぞ?嬢ちゃんも、ここで待ってな」
二人は小走りにおっさんの言う方へ向かった。
通常なら持ち場を離れないのだが、今回は緊急事態なのでこの場を収めた方が安全だということだ。
いきなり色々ありすぎて、頭がパンクしそうだがとりあえずここを切り抜ける事を考えないといけない。
───
しばらくすると、ゴブリンの悲鳴らしき声が響いてきた。
どうやら二人はうまく討伐しているようだ。
さすがに奇襲を掛けられなければ、開けた場所で戦闘する限りゴブリンなどは物の数に入らないらしい。
もちろん一般人や新人であれば脅威になるのだから、手を抜かずちゃんと仕留める。
そのあとに、こちら側にゴブリンが来ることは無かった。
他の商人の護衛も奮闘していたらしく、ここを襲撃をしたゴブリンは殆どを討伐に成功したのだった。
対して、こちら側の被害は護衛や従業員などが数人亡くなったらしい。
それでもこの規模の襲撃ならば少ない方だという。
危うく自分がその仲間入りになるところだったのかと思ったら、今更震えが来る。
この歳で情けない事この上ないが、怖い物は怖いのだ。
だが、よく見るとクレスの手も震えているが見えた。
いかんいかん、父親の俺が怖がっている場合ではないな。
「クレス、もう大丈夫だよ。ドリス達が全部やっつけてくれたからな」
「う…うん、はぁ、良かったぁ~」
そう言うと、さっきまで気丈に振舞っていたのかその場にへたり込んでしまった。
そして、一緒にいたマリアも同じく座り込んで啜り泣き始めた。
二人が抱き合いながら慰め合っている姿を見ると、まるで姉妹のようだな。
そんな二人を見ながら、この後どうするかとマチスに話しかけた。
「こんな状況ですが、ひとまずは退治するのに成功しています。こんな夜中に下手に動いて違う魔物に遭遇すればもっと厄介です。ここで予定通り野営するのが良いでしょう。但し…」
マチスの提案で、無事だった商人たちの荷馬車や人を集めて話し合っていた。
中には護衛に死傷者が出ており、警護が難しい者もいるようだ。
こういう時には、纏まって動くことで必要な護衛の数を減らすだけでなく襲撃を防ぐ効果を期待できるらしい。
そのため、無事だった中で一番格が高いらしいマチスさんが取り仕切り、町まで纏まって移動する事になったようだ。
ドリス達も報酬が増えて助かるぜ的な事を言っていたので、寧ろ良かったのかも知れない。
警護対象は増えるが、危険度はかなり減るからだ。
「ウードさんは、御者だから報酬はそのままだけどな!」
はっはっはと笑われたけど、今回は報酬が目当てでもないので特に異論はない。
マチスさんに日ごろお世話になっているので、少しでも恩が返せればいいかなぁくらいだ。
「ああ、でもクレスさんには特別手当を戻ったら出しますよ。護衛として雇いましたが、こんな魔物と戦わせるつもりなんてなかったので。それにちゃんと仕留めてますから、その分の報酬は渡します」
「そんな、いいです!そこまで役に立ってないですし」
「いやいや、初めてで一匹でも倒せれば充分なのですよ?複数匹倒すだなんて、新人冒険者にしては中々の戦果です。それにお父さんの分もあるから、それはクレスさんの分に加算して報告しておきますからね」
お父さんの代わりに受け取ってくださいね?と念を押されれば、クレスも受け取るとしか言えない。
ひとまず、夕食前だったのでみんなで持ち寄って炊き出しをした。
さすがみんな商人だけあって、なかなかいい物を持ってきている。
鶏肉に、野菜に、卵…卵!?
ああ、さっきの騒動でヒビが入ったのか。
じゃ無いと、卵は高いから野営の時になんか食べないんだぞと言われた。
勿体ないから食べてしまおうという事だった。
と言うわけで、卵と鶏肉の雑炊を作ってみんなで食べるのだった。
この日の夜は死者の弔いを行ってから食事をし、それぞれ交代で見張りを立てつつ野営をするのだった。