貴族アルバートの依頼を受けて、港町オーサにやってきた。
依頼された次の日にはギルドでクエストを受けて出発したわけだが、馬車を使い丸一日掛けて辿り着いたわけだ。
この町はウインドやサーランと違い、面しているのは川ではなく海である。
川は、上流であればそのまま飲水出来るけど、海は出来ない。
なぜならば、しょっぱいからだ。
つまりは、塩を含んだ水という事である。
そのため、海水を干して塩を作る事が出来る為、塩の生産地としても有名な町である。
塩は人も動物にも必要なものらしい。
俺には良く分からないけど、塩が足りないと死ぬこともあるんだってさ。
で、この大陸の殆どの町や村がここの塩を使っているというわけだ。
だから、各地に運搬して運んでいるのだが、当然遠くなれば遠くなるほど運搬費が上がり、値段が高くなる。
俺の村はマチスさんから卸して貰った塩を買っていたのでかなり値引いてくれていたが、それでもかなりの高価な品物だった。
昔は、村の出費の半分が塩代だったと村長が言っていたくらいだ。
さて、話は戻すけどそんわけでここは塩の産地であり、また貴重な海の産物を扱う漁港でもある。
なので、凄く豊かな町というわけだ。
「お父さん、凄いねこの町。サーランよりも人が多いよ!」
「ああ、ここは海に面している町だから、他の国の人も沢山来ているらしい。その分、警備兵も多いからあんまり騒がないようにな」
「というか、ウードさん。ガルバドさんの言う通り、職業変更して良かったんじゃない?多分、ヘルメスとフェーンを町に入れてくれなかったと思うよ」
「そうだな、結構危なかったな」
確かにレイラの言う通りだ。
町に入る前に検問官に調べられて、しっかり全員のタグを調べられたのだ。
念のためと言ってバルバドが書いてくれた証書を見せる事で、一昨日にギルドに登録された従魔だと理解してくれたのだ。
無かったら、もっと細かく調べられていただろう。
そもそも、2匹とも神獣なので調べれば調べる程、摩訶不思議な生き物扱いになるので簡単に見せれないのだ。
正直、どう違うのか俺にはさっぱりだけどね。
「目的の船は、あちらでしょうか?」
マリアが指した方向には、見るからに立派な船が佇んでいる。
しかし、所々が破損してしまっているのか船大工が修理をしている所のようだ。
船首には何かしらの像がついているのだが、それも破損して無くなっている。
「わー、大きな船~!でも、随分派手にやられたみたいだね」
「そうみたいだね。それでも、沈んでいないのだからとても丈夫な船なんだね~」
「二人とも、口が開きっぱなしですよ。レディとしてははしたないですわ」
「「あはは、ごめ~ん」」
マリアに窘められて肩をすくめるクレスとレイラ。
だが、そうなる気持ちも分かる。
見上げると首が疲れるくらい大きな船なのだ。
つい先日乗った船とは規模が違う。
「おや…、彼等は…」
そんな船を見上げる俺達を見付けてひとりの男が近寄ってきた。
「こんなに早く来てくれるとは思っていなかったよ。よく来てくれたね」
その男とは、先日俺らに依頼をしてきた当人、アルバートであった。
相変わらず、爽やかな笑顔が似合うイケメンですね。
いや、決して僻んでいるわけじゃないぞ?
俺だって若い頃は…、いや止そう。
それよりも、貴族様に惚れてしまわないか心配しているのだが、その気配な全く無さそうで安心だ。
いや、逆に貴族様に惚れられてしまったら!?
『さっきから、邪念ばかりで煩いぞウード。仕事を受けた相手なら真面目に対応せよ』
神獣様から、まさか真面目に仕事しろと言われるとは…。
いや、ごもっともなので切り替えよう。
「どうもアルバート様。ギルドでクエスト書を受け取ってすぐに出発しましたからね。でも、さっき町に着いたばかりですよ」
「急いでくれたんですね。それは有難い!早速ですが、船の中を見ていきませんか?丁度私も修繕具合を見て回ろうと思っていたところなんだ」
「そうだったんですね、それならご一緒します」
アルバートに一緒を先頭に、船大工に案内されて船を見て回る事になった。
「この船は、ガレオンというタイプの船でしてね、頑丈さと荷物や積載量が多いのが特徴なんですさぁっ!」
「が、がれおん?」
「ええ、船にはその大きさや形などの特徴に合わせて呼び名があるんですよ。あっちの商船はキャラックというやつです」
船の話をされても俺には良く分からなかった。
だが、マリアがその話に食いついた。
流石大商人の娘、船にも興味があったみたいだ。
「あちらの船とこちらの船では、具体的にどのように違うのですか?」
「お?お嬢さん、船に興味あるのかい?あっちのキャラックは主に物を運ぶのに特化しているのだが、こっちのガレオンは違う。左右に大砲が12門も搭載されているんだよ。それと──」
船大工の熱い説明は、延々と続いているが取り敢えずマリアに任せる。
取り敢えず、他の船よりも丈夫で海の魔獣とも戦える装備を備えているらしいという事は分かった。
そのうえ、船の四方に魔獣を繋ぐ鎖があってそこに繋いだオルカを操る事で風が無くても自由に航海出来る特殊仕様の船らしい。
そのうえ、貴族専用船ともあり外装も煌びやかだ。
中に入ると更にその凄さが分かる。
内装もとても凝っていて、流石貴族の船と思わせる程豪華だ。
中には立派な食堂もあり、そこでは専属の料理人が腕を振るうらしい。
船室はどの部屋も広く、俺が大の字になっても平気なくらいで、とても船の中とは思えなかった。
船倉にも案内されたが、俺の家よりも広いんじゃないかくらいの大きさだ。
何もかもスケールが違う。
そんな巨大な船を動かすために必要と言われたわけだが、その相棒となるであろうオルカは何処にいるんだろうか?
そんな事を考えてキョロキョロしていると、アルバートが早速案内してくれた。
「ウードさん。あの鎖に繋がれているのが魔獣オルカ達です」
「え!アレですか・・?」
丁度、港と船を挟んで反対側に4頭の巨大な海獣がいた。
その大きさは、魔力解放した時にフェーンよりも大きいのではというくらいにデカい。
全体がつるつるツヤツヤしていて、撫でたら気持ち良さそうだがその目は鋭い。
更に、丁度餌を貰っている所だったらしく、その投げ込まれた肉の塊を一口で飲み込む様は正に魔獣であった。
口の周りにびっしり生えた牙が、その凶悪さを物語っている。
「わあ、あれがオルカですね!昔、読んだ本にはイルカという海の動物を大きくしたような生き物だと書いてありましたが、想像以上に大きいですわね」
「ええ、オルカは大きいだけではありません。野生のオルカであればかなり獰猛で、小型の船など簡単に沈められてしまうでしょう。なので、契約を上書き出来ずに従魔化が解除されてしまえば、ここらも大惨事になるでしょう」
そう言って、アルバートが俺の方を見た。
つまりは、俺次第ではここの港が大変な事になると言う事か。
「ちなみに、失敗してしまった場合は?」
「まだ、前のテイマーが亡くなって数日しか経っていませんので直ぐには野生化しませんが、もって10日という事らしいです。それが過ぎたら…、かなりの痛手ですが処分するしかありません」
「処分・・・?」
「はい。野生化する前に、その命を終わらせる他ないという事ですね」
人間の都合で捕獲され契約したあとに、飼主が居なくなり危険だからと処分される。
いかに危険な魔獣とはいえ、それはあまりに惨い気がする。
冒険者の才能が無かった俺にとって、動物たちは友達であり、相棒であった。
だからこそ…。
「お父さん・・・」
「分かっているさ、絶対に何とかして見せる!動物を手懐けるのは俺の唯一の特技だから、任せておけ!」
可愛い娘が、薄っすらと涙を浮かべ上目遣いで懇願してきたのだ。
クレスを泣かせない為にも、お父さん頑張ります!
依頼された次の日にはギルドでクエストを受けて出発したわけだが、馬車を使い丸一日掛けて辿り着いたわけだ。
この町はウインドやサーランと違い、面しているのは川ではなく海である。
川は、上流であればそのまま飲水出来るけど、海は出来ない。
なぜならば、しょっぱいからだ。
つまりは、塩を含んだ水という事である。
そのため、海水を干して塩を作る事が出来る為、塩の生産地としても有名な町である。
塩は人も動物にも必要なものらしい。
俺には良く分からないけど、塩が足りないと死ぬこともあるんだってさ。
で、この大陸の殆どの町や村がここの塩を使っているというわけだ。
だから、各地に運搬して運んでいるのだが、当然遠くなれば遠くなるほど運搬費が上がり、値段が高くなる。
俺の村はマチスさんから卸して貰った塩を買っていたのでかなり値引いてくれていたが、それでもかなりの高価な品物だった。
昔は、村の出費の半分が塩代だったと村長が言っていたくらいだ。
さて、話は戻すけどそんわけでここは塩の産地であり、また貴重な海の産物を扱う漁港でもある。
なので、凄く豊かな町というわけだ。
「お父さん、凄いねこの町。サーランよりも人が多いよ!」
「ああ、ここは海に面している町だから、他の国の人も沢山来ているらしい。その分、警備兵も多いからあんまり騒がないようにな」
「というか、ウードさん。ガルバドさんの言う通り、職業変更して良かったんじゃない?多分、ヘルメスとフェーンを町に入れてくれなかったと思うよ」
「そうだな、結構危なかったな」
確かにレイラの言う通りだ。
町に入る前に検問官に調べられて、しっかり全員のタグを調べられたのだ。
念のためと言ってバルバドが書いてくれた証書を見せる事で、一昨日にギルドに登録された従魔だと理解してくれたのだ。
無かったら、もっと細かく調べられていただろう。
そもそも、2匹とも神獣なので調べれば調べる程、摩訶不思議な生き物扱いになるので簡単に見せれないのだ。
正直、どう違うのか俺にはさっぱりだけどね。
「目的の船は、あちらでしょうか?」
マリアが指した方向には、見るからに立派な船が佇んでいる。
しかし、所々が破損してしまっているのか船大工が修理をしている所のようだ。
船首には何かしらの像がついているのだが、それも破損して無くなっている。
「わー、大きな船~!でも、随分派手にやられたみたいだね」
「そうみたいだね。それでも、沈んでいないのだからとても丈夫な船なんだね~」
「二人とも、口が開きっぱなしですよ。レディとしてははしたないですわ」
「「あはは、ごめ~ん」」
マリアに窘められて肩をすくめるクレスとレイラ。
だが、そうなる気持ちも分かる。
見上げると首が疲れるくらい大きな船なのだ。
つい先日乗った船とは規模が違う。
「おや…、彼等は…」
そんな船を見上げる俺達を見付けてひとりの男が近寄ってきた。
「こんなに早く来てくれるとは思っていなかったよ。よく来てくれたね」
その男とは、先日俺らに依頼をしてきた当人、アルバートであった。
相変わらず、爽やかな笑顔が似合うイケメンですね。
いや、決して僻んでいるわけじゃないぞ?
俺だって若い頃は…、いや止そう。
それよりも、貴族様に惚れてしまわないか心配しているのだが、その気配な全く無さそうで安心だ。
いや、逆に貴族様に惚れられてしまったら!?
『さっきから、邪念ばかりで煩いぞウード。仕事を受けた相手なら真面目に対応せよ』
神獣様から、まさか真面目に仕事しろと言われるとは…。
いや、ごもっともなので切り替えよう。
「どうもアルバート様。ギルドでクエスト書を受け取ってすぐに出発しましたからね。でも、さっき町に着いたばかりですよ」
「急いでくれたんですね。それは有難い!早速ですが、船の中を見ていきませんか?丁度私も修繕具合を見て回ろうと思っていたところなんだ」
「そうだったんですね、それならご一緒します」
アルバートに一緒を先頭に、船大工に案内されて船を見て回る事になった。
「この船は、ガレオンというタイプの船でしてね、頑丈さと荷物や積載量が多いのが特徴なんですさぁっ!」
「が、がれおん?」
「ええ、船にはその大きさや形などの特徴に合わせて呼び名があるんですよ。あっちの商船はキャラックというやつです」
船の話をされても俺には良く分からなかった。
だが、マリアがその話に食いついた。
流石大商人の娘、船にも興味があったみたいだ。
「あちらの船とこちらの船では、具体的にどのように違うのですか?」
「お?お嬢さん、船に興味あるのかい?あっちのキャラックは主に物を運ぶのに特化しているのだが、こっちのガレオンは違う。左右に大砲が12門も搭載されているんだよ。それと──」
船大工の熱い説明は、延々と続いているが取り敢えずマリアに任せる。
取り敢えず、他の船よりも丈夫で海の魔獣とも戦える装備を備えているらしいという事は分かった。
そのうえ、船の四方に魔獣を繋ぐ鎖があってそこに繋いだオルカを操る事で風が無くても自由に航海出来る特殊仕様の船らしい。
そのうえ、貴族専用船ともあり外装も煌びやかだ。
中に入ると更にその凄さが分かる。
内装もとても凝っていて、流石貴族の船と思わせる程豪華だ。
中には立派な食堂もあり、そこでは専属の料理人が腕を振るうらしい。
船室はどの部屋も広く、俺が大の字になっても平気なくらいで、とても船の中とは思えなかった。
船倉にも案内されたが、俺の家よりも広いんじゃないかくらいの大きさだ。
何もかもスケールが違う。
そんな巨大な船を動かすために必要と言われたわけだが、その相棒となるであろうオルカは何処にいるんだろうか?
そんな事を考えてキョロキョロしていると、アルバートが早速案内してくれた。
「ウードさん。あの鎖に繋がれているのが魔獣オルカ達です」
「え!アレですか・・?」
丁度、港と船を挟んで反対側に4頭の巨大な海獣がいた。
その大きさは、魔力解放した時にフェーンよりも大きいのではというくらいにデカい。
全体がつるつるツヤツヤしていて、撫でたら気持ち良さそうだがその目は鋭い。
更に、丁度餌を貰っている所だったらしく、その投げ込まれた肉の塊を一口で飲み込む様は正に魔獣であった。
口の周りにびっしり生えた牙が、その凶悪さを物語っている。
「わあ、あれがオルカですね!昔、読んだ本にはイルカという海の動物を大きくしたような生き物だと書いてありましたが、想像以上に大きいですわね」
「ええ、オルカは大きいだけではありません。野生のオルカであればかなり獰猛で、小型の船など簡単に沈められてしまうでしょう。なので、契約を上書き出来ずに従魔化が解除されてしまえば、ここらも大惨事になるでしょう」
そう言って、アルバートが俺の方を見た。
つまりは、俺次第ではここの港が大変な事になると言う事か。
「ちなみに、失敗してしまった場合は?」
「まだ、前のテイマーが亡くなって数日しか経っていませんので直ぐには野生化しませんが、もって10日という事らしいです。それが過ぎたら…、かなりの痛手ですが処分するしかありません」
「処分・・・?」
「はい。野生化する前に、その命を終わらせる他ないという事ですね」
人間の都合で捕獲され契約したあとに、飼主が居なくなり危険だからと処分される。
いかに危険な魔獣とはいえ、それはあまりに惨い気がする。
冒険者の才能が無かった俺にとって、動物たちは友達であり、相棒であった。
だからこそ…。
「お父さん・・・」
「分かっているさ、絶対に何とかして見せる!動物を手懐けるのは俺の唯一の特技だから、任せておけ!」
可愛い娘が、薄っすらと涙を浮かべ上目遣いで懇願してきたのだ。
クレスを泣かせない為にも、お父さん頑張ります!