「やぁ、お食事中に済まない。ちょっと話を聞いて欲しいのだけど宜しいかい?」
金色の髪を靡かせ、爽やかな雰囲気を纏った青年が俺らに声を掛けてきた。
煌びやかな上質な服を着こなし、その洗練された動作からどう見ても冒険者には見えない。
「失礼だが、どこのどなたで?」
急に現れたイケメンに、新手のナンパかと思い身構えてしまう。
もし求婚でもされようものなら、全力で阻止せねば!
『…ウードよ、お主はそんな発想しか出来ぬのか?』
何故かヘルメスから胡乱な目で見られているが気のせいだろう。
俺にとっては、娘を守る事以上に大事な事はないからだ!
「失礼、自己紹介させていただきますね。私は、アポロニア王国のアルバート=アポロニアだ。訳あって、こちらの国の来ていたのだが、ちょっと困ったことがあしましてね。君たち『ラ・ステラ』の噂を聞いて声を掛けさせてもらったのです」
「もしやアルバート様は貴族ですか?しかも家名がアポロニアという事は、王族!?」
マリアが口をパクパクさせながら、アルバートと名乗る青年に話掛ける。
んん?貴族!?
「ええ、そうなんですよ。私はアポロニア王国の…」
「殿下!」
アルバートの傍に控える屈強そうな男の一人が言葉を遮った。
見た目は冒険者風にしているけど、その佇まいはどこかの騎士のように精悍な佇まいだ。
というか今、思いっきり殿下って言ったよね?
「おっといけない。諸事情があって、これ以上は話せないけど一度話だけでも聞いて貰えるかな?」
「お父さん、何か困っているようだし聞いてあげようよ」
クレスは基本困っている人を放っておけない性格だから、話を聞いてあげたいようだ。
クレスのお願いが無くても俺も気になるから、話くらいは聞いてもいいだろう。
「分かったよ。アルバートさん、立ったままでは話をしづらいし、座って話をしよう」
「聞いてくれるんだね、助かるよ。では、遠慮なく」
そう言うと、アルバートだけが座り、お付きの男達はその後ろに控えた。
威圧感があるので座って欲しいのだけど、主人と一緒に座るのは憚るんだろうか。
これ以上は気にしても仕方ないので、話を始めて貰った。
まずは自分達の自己紹介をする。
「俺が『ラ・ステラ』のリーダーのウードです。田舎育ちなので、言葉遣いがなっていないのはご容赦願いたい。それとこっちが娘のクレス、そして仲間のマリアとレイラだ」
「分かりました。礼節うんぬんは、この場ではお気になさらずにどうぞ。お嬢さん方も気にしないでくださいね」
それを聞いてそっと胸を撫でおろす。
貴族なんかと話をしたことも無い俺らでは、いつ不敬罪とか言われかねないからね。
クレスとマリアも同じ心境だったようで、ほっとしていた。
アルバートはこちらを様子を見て問題無いと確認すると話を続ける。
「私達はある目的の為に国に来たのです。目的は果たす事は出来のですが、いざ帰国しようとしたら困った事に私達の船が沈められてしまったのですよ」
「ええっ!?」
それは、一大事じゃないか。
でも流石王族だよな、自前の船を持っているのか。
しかし、それよりも驚きなのがその船を沈めるような不届きものがいるという事だ。
「何者の仕業なのか、まだ分かっていませんが…。船を護衛していた者によると、黒いフードを被った者達が沈む船から出て来たとか…」
「なるほど、それではその黒いフードの者を探しているというわけですか?」
「いえ、そちらの方は手配済です。問題は、船が沈められた際に船を動かすために雇っていたテイマーが命を落としてしまい、船を動かせなくなったのです」
『ふむ、何か嫌な予感がするのう』
ああ、俺もだよ。嫌な予感しかしない。
黒いフードの怪しい奴っていうのも気になるが、テイマーねぇ。
「新たにテイマーを雇うにしても、この国にはテイマー自体が少ないみたいでね、ほとほと困り果てた時に『ラ・ステラ』という新参のパーティーに魔獣調教師《ビーストテイマー》がいるという話を聞いたんだよ」
(まさか、今日の今日でもう話が出回っているのか?)
『どう考えても、あのグランドマスターの仕業であろうよ』
だよなー。俺を魔獣調教師《ビーストテイマー》にしておかないと、色々と拙いみたいだったし。
俺が連れている従魔は問題無いというのと、連れているのがギルドに登録された魔獣調教師《ビーストテイマー》であるという事をセットで情報を早めに流して混乱が起きるのを防いでいるんだろう。
「という事は、その船を動かすために一緒に船に乗って欲しいという事ですか?」
「はい、その通りです。ああ、ちゃんと正式な手続きをして報酬はお払いしますのでそこは心配しないでいいですよ」
貴族の割にとても腰の低い人だな。
いや、こういう人の方が怖いんだよな。
貴族ではないけど、マチスさんとかがそういうタイプの人だ。
頭のいい人ほど、人を見下した言い方をしないし、人の使い方を心得ているものだからだ。
「ウードさん、依頼受けるのー?」
「レイラは嫌か?」
「ん-、私は受けていいと思うよ。どちらにしろ、海は渡るつもりだったんでしょう?」
レイラの言葉を聞いて、アルバートの目がキランと光った気がした。
おっと、彼にとって都合の良い情報を与えてしまったみたいだな。
だけど、レイラが言う通りこちらにも都合がいい話でもある。
うまくいけば、お金を貰って船で海を渡れるわけだ。
しかも、貴族専用の立派な船でだ。
これはまたとないチャンスだ。
「そうだったのか!貴方たちは海を渡るつもりだったのだね。うんうん、それならば猶更君たちにとっても良い話だと思うのだがどうかな?当然船賃は掛からないし、無事に辿り着いたら報酬も入るのだから」
俺はマリアとクレスの方を見た。
二人ともすぐに頷いてくれた。
よし、取り敢えずは受けてみよう。
それに俺が魔獣調教師《ビーストテイマー》として役に立つのかまだ分からない。
まずは何をするかちゃんと確認をしておこう。
「そこまで言っていただけるなら、その依頼受けようと思っています。しかし、実は魔獣調教師《ビーストテイマー》になったばかりなのです。なので、俺で役に立つかどうか…」
「それについては、彼から話をさせよう」
アルバートの後ろに控えていた一人が、テーブルの傍まで来て説明を始める。
「では、私から説明をさせていただきます。まず依頼内容ですが、船を動かすための海獣オルカを操り船を動かす事です。オルカは知能の高い海の魔獣ですが、テイマーが手懐けをする事で船を曳かせる事が出来ます。まずは、この海獣オルカを手懐けし、それが出来たら船にて船長の指示通りにオルカを動かしてもらいます」
「わぁ、オルカって小型の船くらい大きな海獣ですよね!私、一度見てみたかったんです!」
「オルカって顔は可愛いのだけど…、かなり獰猛な魔獣ではなかったかしら?」
流石、クレスとマリアは海獣オルカがどういう生き物か知っているようだ。
だけど、俺は知らない魔獣だ。
ちゃんと手懐けが発揮されるかが不安だよ。
『案ずるでない。お主くらいなら、一口で食べてしまう程大きな魔獣ではあるが、空腹時以外はそれほど獰猛なやつではないぞ』
「いやいや、腹ペコだったら一口で喰われてるって事だろ!?」
思わず、口に出して反論してしまう。
その様子をほうっと感心して見ているアルバート達。
「ウードさんでしたか?凄いですね、その蛇型の魔物と話を出来るんですか?それなら期待しても良さそうだ」
「いえいえ、なんとなく分かるってくらいですよ…」
そうですか?と信じていないような笑顔で返されてしまう。
どうも、この人には色々と見透かされている気がする。
「では明日の朝、ギルドで依頼を受けたらこの村へ向かってください。ギルドにはこの後話を通しておきますのでね」
そう言うと、簡単に書かれた地図を渡された。
どうやら、セントラルの北側にある海に面した村のようだ。
「お父さん、ここって目的の村だね?」
「そのようだなー。まぁ、手間が省けていいと考えるか!」
そうして、俺はこの話を受ける事になったのであった。
金色の髪を靡かせ、爽やかな雰囲気を纏った青年が俺らに声を掛けてきた。
煌びやかな上質な服を着こなし、その洗練された動作からどう見ても冒険者には見えない。
「失礼だが、どこのどなたで?」
急に現れたイケメンに、新手のナンパかと思い身構えてしまう。
もし求婚でもされようものなら、全力で阻止せねば!
『…ウードよ、お主はそんな発想しか出来ぬのか?』
何故かヘルメスから胡乱な目で見られているが気のせいだろう。
俺にとっては、娘を守る事以上に大事な事はないからだ!
「失礼、自己紹介させていただきますね。私は、アポロニア王国のアルバート=アポロニアだ。訳あって、こちらの国の来ていたのだが、ちょっと困ったことがあしましてね。君たち『ラ・ステラ』の噂を聞いて声を掛けさせてもらったのです」
「もしやアルバート様は貴族ですか?しかも家名がアポロニアという事は、王族!?」
マリアが口をパクパクさせながら、アルバートと名乗る青年に話掛ける。
んん?貴族!?
「ええ、そうなんですよ。私はアポロニア王国の…」
「殿下!」
アルバートの傍に控える屈強そうな男の一人が言葉を遮った。
見た目は冒険者風にしているけど、その佇まいはどこかの騎士のように精悍な佇まいだ。
というか今、思いっきり殿下って言ったよね?
「おっといけない。諸事情があって、これ以上は話せないけど一度話だけでも聞いて貰えるかな?」
「お父さん、何か困っているようだし聞いてあげようよ」
クレスは基本困っている人を放っておけない性格だから、話を聞いてあげたいようだ。
クレスのお願いが無くても俺も気になるから、話くらいは聞いてもいいだろう。
「分かったよ。アルバートさん、立ったままでは話をしづらいし、座って話をしよう」
「聞いてくれるんだね、助かるよ。では、遠慮なく」
そう言うと、アルバートだけが座り、お付きの男達はその後ろに控えた。
威圧感があるので座って欲しいのだけど、主人と一緒に座るのは憚るんだろうか。
これ以上は気にしても仕方ないので、話を始めて貰った。
まずは自分達の自己紹介をする。
「俺が『ラ・ステラ』のリーダーのウードです。田舎育ちなので、言葉遣いがなっていないのはご容赦願いたい。それとこっちが娘のクレス、そして仲間のマリアとレイラだ」
「分かりました。礼節うんぬんは、この場ではお気になさらずにどうぞ。お嬢さん方も気にしないでくださいね」
それを聞いてそっと胸を撫でおろす。
貴族なんかと話をしたことも無い俺らでは、いつ不敬罪とか言われかねないからね。
クレスとマリアも同じ心境だったようで、ほっとしていた。
アルバートはこちらを様子を見て問題無いと確認すると話を続ける。
「私達はある目的の為に国に来たのです。目的は果たす事は出来のですが、いざ帰国しようとしたら困った事に私達の船が沈められてしまったのですよ」
「ええっ!?」
それは、一大事じゃないか。
でも流石王族だよな、自前の船を持っているのか。
しかし、それよりも驚きなのがその船を沈めるような不届きものがいるという事だ。
「何者の仕業なのか、まだ分かっていませんが…。船を護衛していた者によると、黒いフードを被った者達が沈む船から出て来たとか…」
「なるほど、それではその黒いフードの者を探しているというわけですか?」
「いえ、そちらの方は手配済です。問題は、船が沈められた際に船を動かすために雇っていたテイマーが命を落としてしまい、船を動かせなくなったのです」
『ふむ、何か嫌な予感がするのう』
ああ、俺もだよ。嫌な予感しかしない。
黒いフードの怪しい奴っていうのも気になるが、テイマーねぇ。
「新たにテイマーを雇うにしても、この国にはテイマー自体が少ないみたいでね、ほとほと困り果てた時に『ラ・ステラ』という新参のパーティーに魔獣調教師《ビーストテイマー》がいるという話を聞いたんだよ」
(まさか、今日の今日でもう話が出回っているのか?)
『どう考えても、あのグランドマスターの仕業であろうよ』
だよなー。俺を魔獣調教師《ビーストテイマー》にしておかないと、色々と拙いみたいだったし。
俺が連れている従魔は問題無いというのと、連れているのがギルドに登録された魔獣調教師《ビーストテイマー》であるという事をセットで情報を早めに流して混乱が起きるのを防いでいるんだろう。
「という事は、その船を動かすために一緒に船に乗って欲しいという事ですか?」
「はい、その通りです。ああ、ちゃんと正式な手続きをして報酬はお払いしますのでそこは心配しないでいいですよ」
貴族の割にとても腰の低い人だな。
いや、こういう人の方が怖いんだよな。
貴族ではないけど、マチスさんとかがそういうタイプの人だ。
頭のいい人ほど、人を見下した言い方をしないし、人の使い方を心得ているものだからだ。
「ウードさん、依頼受けるのー?」
「レイラは嫌か?」
「ん-、私は受けていいと思うよ。どちらにしろ、海は渡るつもりだったんでしょう?」
レイラの言葉を聞いて、アルバートの目がキランと光った気がした。
おっと、彼にとって都合の良い情報を与えてしまったみたいだな。
だけど、レイラが言う通りこちらにも都合がいい話でもある。
うまくいけば、お金を貰って船で海を渡れるわけだ。
しかも、貴族専用の立派な船でだ。
これはまたとないチャンスだ。
「そうだったのか!貴方たちは海を渡るつもりだったのだね。うんうん、それならば猶更君たちにとっても良い話だと思うのだがどうかな?当然船賃は掛からないし、無事に辿り着いたら報酬も入るのだから」
俺はマリアとクレスの方を見た。
二人ともすぐに頷いてくれた。
よし、取り敢えずは受けてみよう。
それに俺が魔獣調教師《ビーストテイマー》として役に立つのかまだ分からない。
まずは何をするかちゃんと確認をしておこう。
「そこまで言っていただけるなら、その依頼受けようと思っています。しかし、実は魔獣調教師《ビーストテイマー》になったばかりなのです。なので、俺で役に立つかどうか…」
「それについては、彼から話をさせよう」
アルバートの後ろに控えていた一人が、テーブルの傍まで来て説明を始める。
「では、私から説明をさせていただきます。まず依頼内容ですが、船を動かすための海獣オルカを操り船を動かす事です。オルカは知能の高い海の魔獣ですが、テイマーが手懐けをする事で船を曳かせる事が出来ます。まずは、この海獣オルカを手懐けし、それが出来たら船にて船長の指示通りにオルカを動かしてもらいます」
「わぁ、オルカって小型の船くらい大きな海獣ですよね!私、一度見てみたかったんです!」
「オルカって顔は可愛いのだけど…、かなり獰猛な魔獣ではなかったかしら?」
流石、クレスとマリアは海獣オルカがどういう生き物か知っているようだ。
だけど、俺は知らない魔獣だ。
ちゃんと手懐けが発揮されるかが不安だよ。
『案ずるでない。お主くらいなら、一口で食べてしまう程大きな魔獣ではあるが、空腹時以外はそれほど獰猛なやつではないぞ』
「いやいや、腹ペコだったら一口で喰われてるって事だろ!?」
思わず、口に出して反論してしまう。
その様子をほうっと感心して見ているアルバート達。
「ウードさんでしたか?凄いですね、その蛇型の魔物と話を出来るんですか?それなら期待しても良さそうだ」
「いえいえ、なんとなく分かるってくらいですよ…」
そうですか?と信じていないような笑顔で返されてしまう。
どうも、この人には色々と見透かされている気がする。
「では明日の朝、ギルドで依頼を受けたらこの村へ向かってください。ギルドにはこの後話を通しておきますのでね」
そう言うと、簡単に書かれた地図を渡された。
どうやら、セントラルの北側にある海に面した村のようだ。
「お父さん、ここって目的の村だね?」
「そのようだなー。まぁ、手間が省けていいと考えるか!」
そうして、俺はこの話を受ける事になったのであった。