「兎に角だ。魔獣調教師(ビーストテイマー)として登録をしておくから、今後はそう名乗るように。ヘルメスとフェーンも従魔として登録しておくからな。ああ、狼のエースは既に登録されているから心配しないでいいぞ?あと、もし従魔が増えるなら都度登録しておけ。下手すると町に入れなくなるからな?」
「わかったよ。それじゃあこれからよろしくなグランドマスター!」
『ったく都合のいい時だけ役職で呼びやがって…』と愚痴っていたが、やはり仕事はまじめにやっているらしく秘書を呼び出して手続きを進めてくれた。
職業《クラス》が変わるとタグも変わるらしい。
ちなみにだが、クレスとレイラは養成学校を出たときに『剣士』に、マリアは『治療師』として登録されている。
クレスとレイラは魔法も使えるのだが、『魔法師』や『魔導士』は魔法メインで戦う職業らしいので剣をメインに戦う二人はそう登録されるらしい。
俺は弓メインで、狼を連れてハンターをしていたために『狩人』として登録された経緯がある。
その時に、エースも一緒に登録されていたのだった。
ちゃんとギルドに登録されている証のタグが首についている。
それと同じようなものをヘルメスとフェーンにも用意してくれたのだった。
「ほらよ、これを受け取りな」
そう言うと、俺とヘルメスとフェーンの新しい金属タグが渡された。
俺のギルドタグには、名前とランクの他に、魔獣調教師(ビーストテイマー)を表すマークが刻まれていた。
ヘルメスとフェーンの金属タグにはパーティー名の『ラ・ステラ』と大陸文字で刻まれている。
これを見せれば、俺らのパーティに所属する従魔だと証明できるわけだ。
魔法が掛かっているので、タグがついているチェーンも大きさも変幻自在らしい。
なんでかを聞いたら。
「魔獣にはスキルで大きくなるものがいるからな。だから大きさに合わせて変化するようになっている。貴重な魔法金属を使うから本来なら代金を払ってもらうのだが、今回はこっちの都合もあるから特別タダだぞ」
「おおー!太っ腹だな。そりゃ助かるよ」
と言うわけで、今回は無料。
但し、従魔が増えたらそのときは徴収されるらしい。
そこで本来いくらか聞いてみると、なんと金貨1枚という事。
『マジかっ!?』と思わず飲んでいたものを噴き出してしまった。
金貨1枚とは、駆け出しの冒険者にはとても払えないような額である。
理由を尋ねると、使われている素材が魔法金属であるミスリルだからという事だった。
魔獣には自在に大きさを変える事が出来るものがおり、その都度壊れてしまっては意味が無いため、魔獣を従魔として登録する場合はかならずこの金属を使ったタグで登録する事になったのだとか。
タグが無くても活動は出来るが、町に入る際に必ず検査を受ける事になるし、種類によっては中に連れていく事を拒否されるみたいだ。
なので、登録する方がメリットが大きいという。
「それにだ…」と付け加えられて言われたのが、危険視されるほどの従魔を連れている魔物使いや魔獣調教師は、金貨1枚を稼ぐのは容易いのだという。
なぜなら、強い魔獣であれば強い魔物を倒す討伐依頼が受けれるからだ。
だから、問題なく払えるケースが殆どだという。
「まぁ、中途半端に弱い魔獣しかいないのに、見え張って登録するやつは大体破産して廃業しているがな。ただ、そもそも魔物使いや魔獣調教師なんて滅多に現れない珍しい職業だから、支援する者も多いから、そういう事案も少ないんだけどな」
なるほど、育てな強力な戦力になる事を見込まれて、囲い込む人たちが出てくるわけだ。
だから、新人のうちに支援者が現れて費用に困るものもいないと。
「その点でいうと、お前の場合は特殊だな。普通は若いうちに才覚が現れるから、すぐにばれるんだが、今になって魔獣調教師になるとか聞いたことないからな」
「それはガルバドが登録しろって強制したんだろ」
「そうなんだよ。だから、お前の場合は今まで隠していただけだろうと思われる。さらに言えば支援者は既にいるものとしてしばらくは誰も近付いてこないだろうさ」
「あ、それに関してなら支援者をマチス商会だとお触れを一緒に公表して貰う事は出来ませんか?」
それまで黙って聞いていたマリアが声をあげる。
そうか、その手があったか。
実際に支援を受けているわけだし、表立って言っておけば支援者を語る変な輩も現れる事がないだろう。
「お前は…、マチス商会の会長の娘か。なるほど、あの商人なら周りとうまく調整してくれそうだな…。マリアと言ったか?それはいい案かもしれなんな。普通はそんな事にギルドが関わる事はしないんだが、今回は事情が事情だ。こっちとしてもこれ以上の面倒は避けたいからな、その案を使わせてもらうぞ」
面倒な事とか言っちゃったよこのおっさん。
いや、俺もおっさんだけどさ。
「冒険者の争奪戦とか結構なトラブルになりがちでな、結構心配してたんだよ。いやー、嬢ちゃんのお陰で助かったぜ」
おい、トラブルになる事が分かってて登録させようとしてたんかよ!?
そう言うのは先に言えよな!
本当、マリアには感謝しかないな。
そして、すべての手続きが終わった頃にはすっかり夜になっていた。
───
「ウードさーん。お腹減ったよぉぅ」
「文句言うなレイラ。俺が主な原因だけど俺のせいじゃない」
「そうですわレイラ。すべてあのガルバドさんのせいです」
「まぁまぁ、皆そういう事言うもんじゃないよ?お陰でギルド御用達の宿屋を提供して貰えたし、美味しい食堂も教えて貰ったんだしね?」
そう、手続きにかなり時間がとられてしまい宿をとる暇もなかったのだが、裏で宿屋を手配していてくれたみたいでその手間が省けたのだ。
ついでに、『美味い店ならここだっ!』て教えて貰ったので、今そこに向っている所だ。
食堂の中に獣を連れていく事は出来ないので、宿屋の厩舎に馬車の馬とエースを預けてきている。
ヘルメスとフェーンは俺と離れる事が出来ないので、フェーンは食堂の外に、ヘルメスは俺の方に乗った状態で中に入った。
中に入ると、多数の冒険者が酒を飲み食べ物を貪りながらお互いの冒険談などで盛り上がっている。
ガルバドが言っていた通り人気の店らしく、かなり繁盛しているようだ。
そんな喧噪の中、店に俺達が入ると客たちの視線がこちらに一斉に集まる。
その目線の先は、俺…ではなくクレス達3人だ。
ここは冒険者達の集まる酒場でもある。
そんなところに、若い女の子が来る事自体が珍しいのに、3人とも容姿が贔屓目を差し引いても整っているのだ。
異国風の元気な笑顔の、うちの愛娘クレスは元より、お嬢様風の風貌であるマリア、男勝りな雰囲気もあるがきりっとして風貌のレイラも好みだという者も多い。
そして、そんな3人のあとから出て来た一人の冴えない顔のおっさん。
「「「なんでお前なんかが一緒なんだよっ!」」」
と言わなくても心の声が聴こえてくるようだ。
『ほう、勘がいいなウードよ。その通りだぞ』
ええい、人の心を読んだ上にトドメを刺してくるんじゃない!
「いらっしゃいませ!ええと、…4名様ですか?」
店員の女の子ですら、3人と一緒に入ってきた俺を見て一瞬訝しげに聞いてくる。
しかしすぐに笑顔に切り替えて対応するあたり、さすが接客のプロだな。
「ああ、4人だ。ガルバドの紹介で来たんだが席はあるかい?」
「え、あなた方が『ラ・ステラ』様ですか?」
「ん?ああ、そうだよ」
「そうでしたか!グランドマスターから話は伺っております。席は用意しておりますので、こちらにどうぞ~!」
ガルバドの名前を出した途端、更に態度を慇懃なものに変える店員。
どうやら、俺達がここに来ることを伝えていた様だな。
待たなくて済むのは正直助かるわ。
「代金もいただいていますので、当店自慢の料理を是非堪能してくださいね!」
というと、どんどんと料理が運ばれてくる。
正直4人で食べるのは厳しいくらいだ。
そんな様子を見て、更に周りがざわざわし始める。
『おい、あいつらグラマスの知合いらしいぞ?』
『ち、あの歳で若い女を囲うとかふざけているとか思ったが、グラマスの知合いだったのか』
『という事は、あのおっさん熟練の冒険者なのか?今まで見たこと無いが…』
『おい、聞いたか?ラ・ステラって言ってたぞ。それって最近出て来た新人パーティーじゃなかったか?』
冒険者達がいい酒の肴を見つけたとばかりに、俺達の話を始めたようだ。
俺的には、あまり注目される人生を送ってないのでどうも慣れない。
ちなみにクレス達は気にする様子もなく、目の前に出された料理を美味しそうに頬張っていた。
うん、この子達は大物になるなぁとまたも思ってしまう。
これで何度目だっけ?
そんな中、一人の男が声を掛けてきた。
「やぁ、お食事中に済まない。ちょっと話を聞いて欲しいのだけど宜しいかい?」
この時の出会いが、まさかあんなことになるだなんて、この時は露にも思わなかったのだった。
「わかったよ。それじゃあこれからよろしくなグランドマスター!」
『ったく都合のいい時だけ役職で呼びやがって…』と愚痴っていたが、やはり仕事はまじめにやっているらしく秘書を呼び出して手続きを進めてくれた。
職業《クラス》が変わるとタグも変わるらしい。
ちなみにだが、クレスとレイラは養成学校を出たときに『剣士』に、マリアは『治療師』として登録されている。
クレスとレイラは魔法も使えるのだが、『魔法師』や『魔導士』は魔法メインで戦う職業らしいので剣をメインに戦う二人はそう登録されるらしい。
俺は弓メインで、狼を連れてハンターをしていたために『狩人』として登録された経緯がある。
その時に、エースも一緒に登録されていたのだった。
ちゃんとギルドに登録されている証のタグが首についている。
それと同じようなものをヘルメスとフェーンにも用意してくれたのだった。
「ほらよ、これを受け取りな」
そう言うと、俺とヘルメスとフェーンの新しい金属タグが渡された。
俺のギルドタグには、名前とランクの他に、魔獣調教師(ビーストテイマー)を表すマークが刻まれていた。
ヘルメスとフェーンの金属タグにはパーティー名の『ラ・ステラ』と大陸文字で刻まれている。
これを見せれば、俺らのパーティに所属する従魔だと証明できるわけだ。
魔法が掛かっているので、タグがついているチェーンも大きさも変幻自在らしい。
なんでかを聞いたら。
「魔獣にはスキルで大きくなるものがいるからな。だから大きさに合わせて変化するようになっている。貴重な魔法金属を使うから本来なら代金を払ってもらうのだが、今回はこっちの都合もあるから特別タダだぞ」
「おおー!太っ腹だな。そりゃ助かるよ」
と言うわけで、今回は無料。
但し、従魔が増えたらそのときは徴収されるらしい。
そこで本来いくらか聞いてみると、なんと金貨1枚という事。
『マジかっ!?』と思わず飲んでいたものを噴き出してしまった。
金貨1枚とは、駆け出しの冒険者にはとても払えないような額である。
理由を尋ねると、使われている素材が魔法金属であるミスリルだからという事だった。
魔獣には自在に大きさを変える事が出来るものがおり、その都度壊れてしまっては意味が無いため、魔獣を従魔として登録する場合はかならずこの金属を使ったタグで登録する事になったのだとか。
タグが無くても活動は出来るが、町に入る際に必ず検査を受ける事になるし、種類によっては中に連れていく事を拒否されるみたいだ。
なので、登録する方がメリットが大きいという。
「それにだ…」と付け加えられて言われたのが、危険視されるほどの従魔を連れている魔物使いや魔獣調教師は、金貨1枚を稼ぐのは容易いのだという。
なぜなら、強い魔獣であれば強い魔物を倒す討伐依頼が受けれるからだ。
だから、問題なく払えるケースが殆どだという。
「まぁ、中途半端に弱い魔獣しかいないのに、見え張って登録するやつは大体破産して廃業しているがな。ただ、そもそも魔物使いや魔獣調教師なんて滅多に現れない珍しい職業だから、支援する者も多いから、そういう事案も少ないんだけどな」
なるほど、育てな強力な戦力になる事を見込まれて、囲い込む人たちが出てくるわけだ。
だから、新人のうちに支援者が現れて費用に困るものもいないと。
「その点でいうと、お前の場合は特殊だな。普通は若いうちに才覚が現れるから、すぐにばれるんだが、今になって魔獣調教師になるとか聞いたことないからな」
「それはガルバドが登録しろって強制したんだろ」
「そうなんだよ。だから、お前の場合は今まで隠していただけだろうと思われる。さらに言えば支援者は既にいるものとしてしばらくは誰も近付いてこないだろうさ」
「あ、それに関してなら支援者をマチス商会だとお触れを一緒に公表して貰う事は出来ませんか?」
それまで黙って聞いていたマリアが声をあげる。
そうか、その手があったか。
実際に支援を受けているわけだし、表立って言っておけば支援者を語る変な輩も現れる事がないだろう。
「お前は…、マチス商会の会長の娘か。なるほど、あの商人なら周りとうまく調整してくれそうだな…。マリアと言ったか?それはいい案かもしれなんな。普通はそんな事にギルドが関わる事はしないんだが、今回は事情が事情だ。こっちとしてもこれ以上の面倒は避けたいからな、その案を使わせてもらうぞ」
面倒な事とか言っちゃったよこのおっさん。
いや、俺もおっさんだけどさ。
「冒険者の争奪戦とか結構なトラブルになりがちでな、結構心配してたんだよ。いやー、嬢ちゃんのお陰で助かったぜ」
おい、トラブルになる事が分かってて登録させようとしてたんかよ!?
そう言うのは先に言えよな!
本当、マリアには感謝しかないな。
そして、すべての手続きが終わった頃にはすっかり夜になっていた。
───
「ウードさーん。お腹減ったよぉぅ」
「文句言うなレイラ。俺が主な原因だけど俺のせいじゃない」
「そうですわレイラ。すべてあのガルバドさんのせいです」
「まぁまぁ、皆そういう事言うもんじゃないよ?お陰でギルド御用達の宿屋を提供して貰えたし、美味しい食堂も教えて貰ったんだしね?」
そう、手続きにかなり時間がとられてしまい宿をとる暇もなかったのだが、裏で宿屋を手配していてくれたみたいでその手間が省けたのだ。
ついでに、『美味い店ならここだっ!』て教えて貰ったので、今そこに向っている所だ。
食堂の中に獣を連れていく事は出来ないので、宿屋の厩舎に馬車の馬とエースを預けてきている。
ヘルメスとフェーンは俺と離れる事が出来ないので、フェーンは食堂の外に、ヘルメスは俺の方に乗った状態で中に入った。
中に入ると、多数の冒険者が酒を飲み食べ物を貪りながらお互いの冒険談などで盛り上がっている。
ガルバドが言っていた通り人気の店らしく、かなり繁盛しているようだ。
そんな喧噪の中、店に俺達が入ると客たちの視線がこちらに一斉に集まる。
その目線の先は、俺…ではなくクレス達3人だ。
ここは冒険者達の集まる酒場でもある。
そんなところに、若い女の子が来る事自体が珍しいのに、3人とも容姿が贔屓目を差し引いても整っているのだ。
異国風の元気な笑顔の、うちの愛娘クレスは元より、お嬢様風の風貌であるマリア、男勝りな雰囲気もあるがきりっとして風貌のレイラも好みだという者も多い。
そして、そんな3人のあとから出て来た一人の冴えない顔のおっさん。
「「「なんでお前なんかが一緒なんだよっ!」」」
と言わなくても心の声が聴こえてくるようだ。
『ほう、勘がいいなウードよ。その通りだぞ』
ええい、人の心を読んだ上にトドメを刺してくるんじゃない!
「いらっしゃいませ!ええと、…4名様ですか?」
店員の女の子ですら、3人と一緒に入ってきた俺を見て一瞬訝しげに聞いてくる。
しかしすぐに笑顔に切り替えて対応するあたり、さすが接客のプロだな。
「ああ、4人だ。ガルバドの紹介で来たんだが席はあるかい?」
「え、あなた方が『ラ・ステラ』様ですか?」
「ん?ああ、そうだよ」
「そうでしたか!グランドマスターから話は伺っております。席は用意しておりますので、こちらにどうぞ~!」
ガルバドの名前を出した途端、更に態度を慇懃なものに変える店員。
どうやら、俺達がここに来ることを伝えていた様だな。
待たなくて済むのは正直助かるわ。
「代金もいただいていますので、当店自慢の料理を是非堪能してくださいね!」
というと、どんどんと料理が運ばれてくる。
正直4人で食べるのは厳しいくらいだ。
そんな様子を見て、更に周りがざわざわし始める。
『おい、あいつらグラマスの知合いらしいぞ?』
『ち、あの歳で若い女を囲うとかふざけているとか思ったが、グラマスの知合いだったのか』
『という事は、あのおっさん熟練の冒険者なのか?今まで見たこと無いが…』
『おい、聞いたか?ラ・ステラって言ってたぞ。それって最近出て来た新人パーティーじゃなかったか?』
冒険者達がいい酒の肴を見つけたとばかりに、俺達の話を始めたようだ。
俺的には、あまり注目される人生を送ってないのでどうも慣れない。
ちなみにクレス達は気にする様子もなく、目の前に出された料理を美味しそうに頬張っていた。
うん、この子達は大物になるなぁとまたも思ってしまう。
これで何度目だっけ?
そんな中、一人の男が声を掛けてきた。
「やぁ、お食事中に済まない。ちょっと話を聞いて欲しいのだけど宜しいかい?」
この時の出会いが、まさかあんなことになるだなんて、この時は露にも思わなかったのだった。