「おい、お前達。その娘達は俺の───」
俺が野次馬のように集まった冒険者達を蹴散らそうと前に出ようとした時だった。
「お前達っ!そんなところで油売ってる暇があるんだったらさっさとクエスト受けにいけぃっ!それとも俺が直々にいいクエストを手配してやろうか?」
如何にも屈強そうな体つきの、強面の大男が現れたかと思うとクレス達に言い寄ってきた冒険者達を一蹴した。
文句を言うどころか、冒険者達は青褪めた顔になって一目散に去っていった。
「あ、ありがとうございます!・・えーと、どちら様ですか?」
クレスがいの一番にその大男にお礼を言う。
あの顔の大男に物怖じせず、満面の笑みでお礼を言えるうちの子可愛い!
…じゃなかった、流石だよ。
「がっはっは、俺を知らないか?本当に新人冒険者みたいだな。…なのにその若さでCランクだと?名前はなんていう?」
クレスのぶら下げるギルドタグを見て目を細める大男。
怪しんでいるというよりは、なんか面白い奴が来たなという顔をしているな。
「は、はい!私はサイハテ村から出てきました、『ラ・ステラ』のクレスと言います」
「サイハテ村だぁ、あんな辺境から…。いや、クレスだと?あの、カンドの冒険者養成学校を主席で出た奴か?」
「はい!とっても頑張りました!こっちのマリアとレイラもとても優秀な成績で卒業した親友達です」
そう言って、マリアとレイラを紹介するクレス。
すこし強張った表情をしながらも、二人とも礼儀には煩い親に育てられたらしく、しっかりと挨拶をする。
「カンドより参りました、マリアと申しますわ。以後お見知りおきを」
「同じくカンドから来ました、レイラと言います!おっきいおじさんよろしくね!」
いや、訂正する。
レイラよ、なぜ強張った顔をしながらも挨拶が挑発的なんだよ!
「がっはっは。うんうん、若いもんは元気があっていいな。で、そっちの狼2匹と翼蛇《よくだ》か?連れたおっさんがウードって事か?」
いや、あんたもおっさんだろ?!
…もしや、おっさん顔なだけで若いのか?
さっきから、その顔に似合わない丁寧な装飾がされた一冊の本を見ているな。
『何を失礼な事を考えているのだ。間違っても口に出すなよ?死ぬぞお主』
「(危ね、口走りそうになったわ)…。ええと、なんで俺達を知っているんだ?」
「それくらい分からないと務まらんだろ?ああっ、そういや自己紹介がまだだったな。後でまたエイネール嬢に叱られちまいそうだ。俺は、このギルド本部のギルドマスターやってる、ガルバドって言うんだ。この街で冒険者やるんだったら、顔と名前くらいは覚えておいて損は無いぜ?」
そう言って、ガルバドが首からぶら下げたギルドタグを見せる。
俺らと違い、金色に光るタグにはグランドマスターの文字が刻まれていた。
まじかよっ!いきなりグランドマスターに会ってしまうとは。
じゃあやっぱり、お前もおっさんで正解だろ。
『お主、拘るところはそこなのか?』
『ウードっていつも面白い事考えているよね』
ヘルメスとフェーンに呆れられているのはスルーして。
今は、ガルバドの事だ。
どっちにしろ、報告しないといけない事があったから丁度いいタイミングだな。
「なるほど、あんたがグランドマスターだったのか。初めまして、『ラ・ステラ』のリーダーのウードだ。今後ともよろしく」
「ああ、お前たちの噂はこっちにも届いているぜ。
異例のDランクスタートの嬢ちゃんに、遅咲きのおっさん冒険者、さらに『高速剣』の使い手に、治療と氷魔法が使える奴まで。
しっかし、驚いたぜ、こんな可愛らしい嬢ちゃん方がそうだなんてなぁ」
「随分と詳しいな。そんな事まで知っているのか」
「ああ、そうさ。ここ冒険者ギルド本部にはお前達冒険者の情報全てが集まる場所でもある。まして、Dランク以上のパーティーとなれば余計に知っとかないとならんからな」
そう言って、先ほどの本をちらっと見せてくれた。
どうやら、その本には俺達冒険者の情報が纏められて記載されているようだった。
「この本は特別な魔法が掛かっていてな、お前達の冒険者の情報が常に更新されて記載されているんだ。だから、大まかな事はこれだけでもわかっちまうのさ。例えば、…ウインドで何かあったんだろ?」
凄いな、そんな事まで書いてあるのかよ!
魔法って便利だよなぁ。
・・・なんで俺には才能無いんだろ。
『お主は、我らのチカラが使えるのだ。十分ではないか?』
『そうそう、君ならぼくのチカラもそのうち使えるようになるかもよ?』
え、フェーンのチカラってなんだ!?
何気に凄い事をいわれた気がしたんだが。
って、それよりも伝えないといけないんだった。
「ああ、その件だけど。ウインドのギルドより書簡を預かっている。ギルド本部に届けてくれと依頼されているので、受領して中身を確認して欲しいんだ」
「おう、そうかよ。ここじゃなんだ。場所を移そうぜ、こっちだ。」
そう言うと、ガルバドに連れられてギルドの応接室に通された。
しばらくすると、女性のギルド職員がやってくる。
「わたくしはギルド職員のネールと言います。早速ですが、ウインドの職員から預かったという書簡を拝見いたします」
ネールにウインドの冒険者ギルドで渡された書簡を渡す。
すぐに封緘を切り、中に書かれた事を読み上げるネール。
そこには、ウインドの守り神と言われていた神獣が何者かにより狂暴な魔獣化してしまった事。
そのせいで町が魔獣で溢れかえり、一時危険な状況になった事。
町にいる冒険者や魔導士のおかげで何とか討伐に成功した事。
そして…。
「一番の功労者が、お前達『ラ・ステラ』だったんだってな?しかも、神獣を止めたのもお前等だったらしじゃねぇか」
そう言いつつ、俺の隣に来て背中をバンバン叩くガルバド。
なんでわざわざ来たんだよと思っていたら。
小声で耳打ちしてきた。
(その青白い大きな狼は、その眷属だそうじゃねーか。お前さん、本当に『才能なし』判定受けたウードなのか?)
(な、なんでおれの事を知ってるんだ?)
(さっき言ったろ?新しくDランクに到達した奴らは大抵調べ済みだ。特にお前たちはかなり目立っていたからな。中でも、あんたは特別目立っているぜ?)
流石は本部のグランドマスター。
俺のような下っ端冒険者まで調べてるとは。
しかし、俺の何が目立つんだろう?
「まぁ、そんなわけでだ」
耳打ちをやめて声を戻し、改まるガルドバ。
更に少し口調を強める。
「ウード。お前はハンターで登録しているな?だったら、今日から魔獣《ビースト》調教師《テイマー》として登録して貰うぞ?」
あれ、まさかの登録変更?!
俺が野次馬のように集まった冒険者達を蹴散らそうと前に出ようとした時だった。
「お前達っ!そんなところで油売ってる暇があるんだったらさっさとクエスト受けにいけぃっ!それとも俺が直々にいいクエストを手配してやろうか?」
如何にも屈強そうな体つきの、強面の大男が現れたかと思うとクレス達に言い寄ってきた冒険者達を一蹴した。
文句を言うどころか、冒険者達は青褪めた顔になって一目散に去っていった。
「あ、ありがとうございます!・・えーと、どちら様ですか?」
クレスがいの一番にその大男にお礼を言う。
あの顔の大男に物怖じせず、満面の笑みでお礼を言えるうちの子可愛い!
…じゃなかった、流石だよ。
「がっはっは、俺を知らないか?本当に新人冒険者みたいだな。…なのにその若さでCランクだと?名前はなんていう?」
クレスのぶら下げるギルドタグを見て目を細める大男。
怪しんでいるというよりは、なんか面白い奴が来たなという顔をしているな。
「は、はい!私はサイハテ村から出てきました、『ラ・ステラ』のクレスと言います」
「サイハテ村だぁ、あんな辺境から…。いや、クレスだと?あの、カンドの冒険者養成学校を主席で出た奴か?」
「はい!とっても頑張りました!こっちのマリアとレイラもとても優秀な成績で卒業した親友達です」
そう言って、マリアとレイラを紹介するクレス。
すこし強張った表情をしながらも、二人とも礼儀には煩い親に育てられたらしく、しっかりと挨拶をする。
「カンドより参りました、マリアと申しますわ。以後お見知りおきを」
「同じくカンドから来ました、レイラと言います!おっきいおじさんよろしくね!」
いや、訂正する。
レイラよ、なぜ強張った顔をしながらも挨拶が挑発的なんだよ!
「がっはっは。うんうん、若いもんは元気があっていいな。で、そっちの狼2匹と翼蛇《よくだ》か?連れたおっさんがウードって事か?」
いや、あんたもおっさんだろ?!
…もしや、おっさん顔なだけで若いのか?
さっきから、その顔に似合わない丁寧な装飾がされた一冊の本を見ているな。
『何を失礼な事を考えているのだ。間違っても口に出すなよ?死ぬぞお主』
「(危ね、口走りそうになったわ)…。ええと、なんで俺達を知っているんだ?」
「それくらい分からないと務まらんだろ?ああっ、そういや自己紹介がまだだったな。後でまたエイネール嬢に叱られちまいそうだ。俺は、このギルド本部のギルドマスターやってる、ガルバドって言うんだ。この街で冒険者やるんだったら、顔と名前くらいは覚えておいて損は無いぜ?」
そう言って、ガルバドが首からぶら下げたギルドタグを見せる。
俺らと違い、金色に光るタグにはグランドマスターの文字が刻まれていた。
まじかよっ!いきなりグランドマスターに会ってしまうとは。
じゃあやっぱり、お前もおっさんで正解だろ。
『お主、拘るところはそこなのか?』
『ウードっていつも面白い事考えているよね』
ヘルメスとフェーンに呆れられているのはスルーして。
今は、ガルバドの事だ。
どっちにしろ、報告しないといけない事があったから丁度いいタイミングだな。
「なるほど、あんたがグランドマスターだったのか。初めまして、『ラ・ステラ』のリーダーのウードだ。今後ともよろしく」
「ああ、お前たちの噂はこっちにも届いているぜ。
異例のDランクスタートの嬢ちゃんに、遅咲きのおっさん冒険者、さらに『高速剣』の使い手に、治療と氷魔法が使える奴まで。
しっかし、驚いたぜ、こんな可愛らしい嬢ちゃん方がそうだなんてなぁ」
「随分と詳しいな。そんな事まで知っているのか」
「ああ、そうさ。ここ冒険者ギルド本部にはお前達冒険者の情報全てが集まる場所でもある。まして、Dランク以上のパーティーとなれば余計に知っとかないとならんからな」
そう言って、先ほどの本をちらっと見せてくれた。
どうやら、その本には俺達冒険者の情報が纏められて記載されているようだった。
「この本は特別な魔法が掛かっていてな、お前達の冒険者の情報が常に更新されて記載されているんだ。だから、大まかな事はこれだけでもわかっちまうのさ。例えば、…ウインドで何かあったんだろ?」
凄いな、そんな事まで書いてあるのかよ!
魔法って便利だよなぁ。
・・・なんで俺には才能無いんだろ。
『お主は、我らのチカラが使えるのだ。十分ではないか?』
『そうそう、君ならぼくのチカラもそのうち使えるようになるかもよ?』
え、フェーンのチカラってなんだ!?
何気に凄い事をいわれた気がしたんだが。
って、それよりも伝えないといけないんだった。
「ああ、その件だけど。ウインドのギルドより書簡を預かっている。ギルド本部に届けてくれと依頼されているので、受領して中身を確認して欲しいんだ」
「おう、そうかよ。ここじゃなんだ。場所を移そうぜ、こっちだ。」
そう言うと、ガルバドに連れられてギルドの応接室に通された。
しばらくすると、女性のギルド職員がやってくる。
「わたくしはギルド職員のネールと言います。早速ですが、ウインドの職員から預かったという書簡を拝見いたします」
ネールにウインドの冒険者ギルドで渡された書簡を渡す。
すぐに封緘を切り、中に書かれた事を読み上げるネール。
そこには、ウインドの守り神と言われていた神獣が何者かにより狂暴な魔獣化してしまった事。
そのせいで町が魔獣で溢れかえり、一時危険な状況になった事。
町にいる冒険者や魔導士のおかげで何とか討伐に成功した事。
そして…。
「一番の功労者が、お前達『ラ・ステラ』だったんだってな?しかも、神獣を止めたのもお前等だったらしじゃねぇか」
そう言いつつ、俺の隣に来て背中をバンバン叩くガルバド。
なんでわざわざ来たんだよと思っていたら。
小声で耳打ちしてきた。
(その青白い大きな狼は、その眷属だそうじゃねーか。お前さん、本当に『才能なし』判定受けたウードなのか?)
(な、なんでおれの事を知ってるんだ?)
(さっき言ったろ?新しくDランクに到達した奴らは大抵調べ済みだ。特にお前たちはかなり目立っていたからな。中でも、あんたは特別目立っているぜ?)
流石は本部のグランドマスター。
俺のような下っ端冒険者まで調べてるとは。
しかし、俺の何が目立つんだろう?
「まぁ、そんなわけでだ」
耳打ちをやめて声を戻し、改まるガルドバ。
更に少し口調を強める。
「ウード。お前はハンターで登録しているな?だったら、今日から魔獣《ビースト》調教師《テイマー》として登録して貰うぞ?」
あれ、まさかの登録変更?!