「私達がこの町に来たのは、この神器を魔人達が狙っていると知ったからです」

 ヴァレスは、魔人達を追いかけてあちこちに赴いて、魔人達から人々を守るため調査や時には魔人と戦っていたらしい。
 その調査の過程で貴重な魔導具や神器と言われるような、高度な武具や道具が強奪される事件が多発しているのが分かった。
 そして、その犯人を追いかけると必ず魔人に関わる情報が出てきていたのだという。

「なので、ここ数年各地の神器のある場所はマークしてたんです。唯一外れたのは、サイハテの山近くにある山の神の祠でしょうか。あそこだけは、魔人に荒らされた形跡が無かったのに、急に祠も神器も無くなってましたから…」

 ヴァレスはそこまで言うと、俺の持つ杖をチラッと見る。
 えっ!?これってそんなに凄いもんだったの?
 てか、これが本体だとかヘルメス言ってなかったか?

『それに関しては問題無いと我が保証しよう』

「なるほど…。あなたが言うのであれば、問題無いと判断して良さそうですね」

『その時期が来るまでは、我が預かっている。心配するな』

「!そうですか、そういう事だったのですね、どおりで…。分かりました、ソレは貴方に預けます。必要になる時まで、大事にしておいてくださいね」

『ふん。言われるまでもない。しかし、承知したぞ』

 なんか、二人で分かった風に話しているけど俺にはサッパリ分からない。
 クレスも頭にハテナを浮かべながら笑っている。

 でも、時期ってなんだ?
 というか、そもそもこの杖渡せないだろ。
 手放せないんだしさ。

「それで、その槍どうするんだ?元の場所に戻すのか?」

「いえ、それは…」

『多分、無理だろうね。一回封印が解けちゃうと、神様じゃないと封印出来ないんだよ。だから、あの山に置いておくのは危険じゃないかな〜』

「封印してないと、何か問題なのか?」

『うん、さっきも言ったけど放置しておくと発火して、あたりが火の海になるんだよ!』

 なるほど、じゃあそのまま山の神殿だかに保管しておいても、神殿ごと燃えてしまうってことか。
 え、駄目だろそれ。

「なので、完全では無いとはいえ常に封印を掛けれるようにしないといけないですね。今も特殊な布で巻いて、封印術を掛けていますがどこまでもつか…」

「誰か封印できる人に頼めばいいんじゃないか?この町には魔導師がたくさんいるんだろ?」

 そんな話をしている時だった、後ろから現れた人物が話に入ってきた。

「ふーむ、それは無理じゃな。これはそんな簡単に抑えられる代物ではない。それこそ、四六時中数人で封印し続けないといけぬじゃろうな」

「師匠!もう大丈夫なんですか?」

 それは元王宮魔術師である、アーネストだ。
 魔力を使い切ってギルドで休んでいた筈だが、もう回復したのだろうか?

「ああ、儂のもと弟子共が魔力回復の香を持ってきてくれたおかげで幾分かは回復したのじゃ」

「そうだったんですね!」

 魔力の枯渇は、命に係わる事がある。
 レイラは自分の師匠となったアーネストの事を心配していたようだな。

「それにしても、アーネストさんでもこの槍の封印は出来ないのですか?」

「うむ、この神器は封印をするのも解くのも簡単なものでは無い。現に今まで封印が解かれたことは無かったのじゃ。まさか、あの封印を解くものが現れるとは…」

 現れたアーネストに、何気なく封印出来ないかを聞いてみたが駄目みたいだ。
 こんな凄い魔導士でも無理なら、再度封印するのはムリなんじゃないか?

 そこで、チラッとヴァレスの方を見る。
 その風貌を見て、少し目を細めるアーネスト。

「お初にお目にかかります、王宮筆頭魔術師アーネスト様。お噂は予てよりお聞きしておりました。まさか、このような所でお会いするとは…」

「世辞は良い。お主は…、その風貌と魔力。北の大陸にいる銀の一族かの?」

「流石はアーネスト様、その通りでございます。私の名はヴァレス、そしてこちらはマーレです。我々は、遥か北にある都市フォーレンから派遣されている騎士でございます。」

「なるほど。であれば…、そのクレスもかの?」

「いえ、クレスさ…んは我々とは直接の関係はありません。偶々ここでお会いしたに過ぎません」

「…まぁそういう事にしておこうかの。しかし、あの魔を払う銀の魔力は…。いかんいかん、何にでも首を突っ込もうとするのは年寄りの悪い癖だの。それで、この封印を解いた者は何者じゃ?」

 クレスを見て思う所があったみたいだが、そこで止めてくれた。
 俺を見て、何か事情があると察してくれたみたいだ。
 その配慮に心の中で感謝する。

「はい、丁度その話をしていたところです。私達は─」

 そこで、先ほどなぜこの町に来ていたかを説明するヴァレス。
 また、自分たちの役目に関しても話をする。
 勿論、クレスの事やヘルメスの事は伏せていた。

「そのような事が…。しかし、その魔人というのは何のためにそんな事をするのかの?」

「それは、邪神の復活の為だと思われます」

「邪神だと?!あの、お伽噺にも出てくるあの邪神か?」

「はい、そうです。お伽噺と言っても、そこにおられる神狼フェーン様は実際に存在しておりますでの、伝承というべきでしょうね。多くの方が知っている『双子の神様』の話に登場するあの邪神が復活しようとしています。その手先となっているのが、あの魔人()なのです」

「魔人()か。あのような危険な存在が、複数おるというのか?」

「はい、今まで確認しただけでも10人はいます。ただ…」

「ただ?」

「どうやら魔人は、更に増えているようです」

「なんだと?あんなのが増えていったら、世が荒れるではないかの」

「はい、その通りです。魔人は最初は一人だったと言われております。しかし、今まで確認しただけで12人。またそれも見た目が人の姿から魔物の姿まで様々で、統一性もありません」

「だとすると、その最初のひとりが魔人を増やしていると?」

「恐らくはその通りかと」

 ヴァレスからの話に、天を仰ぐアーネスト。
 学の無い俺でも、大変な内容だと言うのは良く分かる。
 たった一人の魔人が関わっただけで、町がこの惨状だ。

 そんな厄災ともいえる魔人が増えていく。
 それはこんな事がどんどん増えていくという事だからだ。

「なんという事だ…。しかし邪神に魔人か。なんとも厄介な奴が世に放たれたものだの…」

「はい。我が国の騎士たちが各地で魔人の動きを抑えておりますが、ここ数年活発化するばかりです。そこで、アーネスト様にもご協力いただければと」

 元王宮筆頭魔導士のアーネストが協力してくれれば、かなりの戦力になる。
 しかし、その言葉に首を振るアーネスト。

「ふむ、この老体の我では大して役には立つまい。役に立つとすれば…、そこのお嬢さん達の方だろうな。特に、ヴァレス殿と同じく銀色の髪のクレスだの」

「!?しかし、彼女はまだ15歳の少女です。いくら冒険者だとしても、まだ危険過ぎます」

()()か…。ならば、儂からあの子達にプレゼントをしよう」

「「「え!?」」

 アーネストからいきなりプレゼントをくれると言われて驚く3人。
 しかし、それは想像していたものと違うものだった。