遥か昔の事だけど、かつてのぼくはね炎の神に遣えた神獣だったんだ。
ぼくの御主人様は、この地を平定するとぼくをここを守護しろって言うとこの大地を去ってしまった。
御主人様が残した一本の槍を守りつつ、下で暮らす人々をずっと見守ってきた。
時々身に宿す炎を巻き起こし、人々に害成す悪獣たちを駆逐したりしていたんだけど、いつのまにか『炎嵐の神狼』と呼ばれるようになっていた。
ぼくが炎を巻き上げるとき、まるで嵐の様だったからだってさ。
この山に棲みついて数百年もすると、人々は繁栄しどんどん増えていく。
すると自然とぼくに供え物を持ってくる人や、祈りを捧げる人が現れてくる。
そんな彼等を見守り続けているうち、いつしか自分の家族のように思うようになり、情が湧いたぼくは人々を守るようになっていった。
古の時代には、神獣とまで言われたぼくには寿命という概念はない。
いつまでも姿形変わらぬ存在であり続けたせいなのか、いつからか『山の神』として崇められるようになる。
だからというわけじゃないけど、人々へ害が及ばぬように辺りの魔獣達を支配し、町へと発展した人々の住処へ出ないようにしてきたんだ。
ぼくは滅多な事じゃ動くわけにはいかないから、自分の魔力を分けて眷属を創り出し、町の周りをこっそり警戒して回ったり、たまに町に降りそうになる魔物を駆除したりもしていた。
だからここ数百年、この町の人々は大きな災害もなく魔物や魔獣に襲われることない生活をしていたんだよ。
でも、あの黒い瘴気を纏った変なヤツが訪れた事により、その平穏が終わってしまったんだ。
アイツは、自身が邪神の使徒だと言っていた。
なんでも、ここを瘴気で溢れさせて邪神を復活させるんだとか。
─邪神。
それはかつて御主人様達が命を賭けて戦った神の事だと思う。
ぼくも戦いに参戦したけど、そのチカラは凄まじいものだったのを覚えている。
あんなのが復活したら、ぼくの家族とも言える人々は生きていけないだろう。
だから、それを阻止するのに頑張って戦おうとしたんだ。
最初は眷属で仕掛けてみたけど、全然歯が立たない。
しょうがないから、ぼく自身が戦うために起き上がったんだけど、いつのまに取り付けたのか四肢に鎖が付けられていて思う様に動けなくなっていた。
さらにアイツは変なツボを持っていて、それをぼくに投げつけてきた。
咄嗟にそれを防いで、ツボを叩き割ったのだけど、それがダメだったみたい。
中から物凄く濃い瘴気が溢れ出てきて、ぼくを包んだんだ。
そしたら気が遠くなっていったんだ。
それからは、ぼくは他人ごとにようにこの光景を見ている。
山を燃やし、人々が育てている畑や果樹をなぎ倒し、冒険者とかいう人々を吹き飛ばしている。
ああ、やめて。
ぼくはそんな事をしたいわけじゃないんだ。
ぼくがぼくの大好きな人々を怪我させるなんて、そんな事!
『我が盟友、フェーンよ!戻って来い!その銀色の光の方へ!』
ふと懐かしい声が聴こえる。
誰だろう?
厳しい口調だけど、なんか優しい声。
思い出せない…。
でも、ぼくは迷わなかった。
あの光を受ければ戻ってこれると。
「…退魔の光よ、邪悪なるチカラを祓え!『銀の聖域シルバーサンクチュアリ』ッ!!」
全身が銀色の光に包まれる。
とてもきれいな魔力。
ぼくに巣くった瘴気がすべて浄化されていくのが分かった。
ウォオオオオオオオオオオオオオオオン!!
邪悪な瘴気に支配されていたぼくが断末魔の如く吼える。
そこでもう一度ぼくの意識が途絶えるのだった。
───
クレスが銀のチカラで浄化して、巨狼を倒すことに成功した。
瘴気が晴れて、そこに残ったのは一匹の青白い大きな狼だった。
その大きさは先ほどの巨狼というよりは、召喚されて出て来た黒狼くらいの大きさだ。
しかし、それが元の彼なのだと分かった。
なぜならヘルメスがすぐに『治癒』を開始したからだ。
でも俺の魔力もそろそろ尽きそうだぞ?
このままだと、俺がぶっ倒れるんだけどヘルメスさん大丈夫?!
「よし、ここまで回復させれば問題あるまい…。ウード、そろそろ体を返してやろう…。『解除』!」
次の瞬間纏っていた光が霧散し、持っている杖に吸い込まれていった。
それと同時に俺の意識が体に吸い込まれていく(様な感覚がした)のだった。
「なんとか大丈夫だった・・・か?あれれ」
どさっと、魔力切れで俺は倒れてしまった。
『お主のお陰で、皆無事だぞ?我からも感謝する』
「ヘルメスが俺に感謝するなんて、珍しい事もあったもんだな。てか…、もう無理…」
そのまま突っ伏して動けなくなってしまう。
「お父さん、大丈夫!?」
クレスが慌てて駆け寄り、マリアが治療魔法をかけようとする。
『ああ、無駄だぞ。それは魔力切れだから自然に回復するのを待つか、誰かから魔力を吸収するしかないのだ』
「あー、それならこいつらでいいかい?」
とタイミング良くレイラが倒した魔物達を持ってきた。
これだけいれば少しは回復するだろう。
『ほう、用意がいいなレイラよ。お主は良く見ているな』
「えへへ。こう見えて、視野は広い方なんだよ?」
『ふむ、そう言う事にしておこうか』
「ぶー、なによー!たまには素直に褒めてくれてもいいでしょ~!」
という遣り取りがあったが、レイラのお陰でなんとか俺は持ち直した。
起き上がれるくらいに回復した俺は、先ほどの青い白い大きな狼に近づいていく。
すると後ろからバタバタと駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「おおっ!!これはまさしく『守り神様』!冒険者さん、何卒このフェーン様をお救いください!」
「あなたは…、町長でしたね。この狼を知っているんですか?」
「もちろんですとも!大きさこそ、小さくなられてしまったが、この月色の狼がこの町の守り神である、『炎嵐の神狼フェーン』様なのですぞ!!」
なるほど、やはりというか暴れていた魔狼の中から出てきたのが、この町の守り神であったのだった。
ぼくの御主人様は、この地を平定するとぼくをここを守護しろって言うとこの大地を去ってしまった。
御主人様が残した一本の槍を守りつつ、下で暮らす人々をずっと見守ってきた。
時々身に宿す炎を巻き起こし、人々に害成す悪獣たちを駆逐したりしていたんだけど、いつのまにか『炎嵐の神狼』と呼ばれるようになっていた。
ぼくが炎を巻き上げるとき、まるで嵐の様だったからだってさ。
この山に棲みついて数百年もすると、人々は繁栄しどんどん増えていく。
すると自然とぼくに供え物を持ってくる人や、祈りを捧げる人が現れてくる。
そんな彼等を見守り続けているうち、いつしか自分の家族のように思うようになり、情が湧いたぼくは人々を守るようになっていった。
古の時代には、神獣とまで言われたぼくには寿命という概念はない。
いつまでも姿形変わらぬ存在であり続けたせいなのか、いつからか『山の神』として崇められるようになる。
だからというわけじゃないけど、人々へ害が及ばぬように辺りの魔獣達を支配し、町へと発展した人々の住処へ出ないようにしてきたんだ。
ぼくは滅多な事じゃ動くわけにはいかないから、自分の魔力を分けて眷属を創り出し、町の周りをこっそり警戒して回ったり、たまに町に降りそうになる魔物を駆除したりもしていた。
だからここ数百年、この町の人々は大きな災害もなく魔物や魔獣に襲われることない生活をしていたんだよ。
でも、あの黒い瘴気を纏った変なヤツが訪れた事により、その平穏が終わってしまったんだ。
アイツは、自身が邪神の使徒だと言っていた。
なんでも、ここを瘴気で溢れさせて邪神を復活させるんだとか。
─邪神。
それはかつて御主人様達が命を賭けて戦った神の事だと思う。
ぼくも戦いに参戦したけど、そのチカラは凄まじいものだったのを覚えている。
あんなのが復活したら、ぼくの家族とも言える人々は生きていけないだろう。
だから、それを阻止するのに頑張って戦おうとしたんだ。
最初は眷属で仕掛けてみたけど、全然歯が立たない。
しょうがないから、ぼく自身が戦うために起き上がったんだけど、いつのまに取り付けたのか四肢に鎖が付けられていて思う様に動けなくなっていた。
さらにアイツは変なツボを持っていて、それをぼくに投げつけてきた。
咄嗟にそれを防いで、ツボを叩き割ったのだけど、それがダメだったみたい。
中から物凄く濃い瘴気が溢れ出てきて、ぼくを包んだんだ。
そしたら気が遠くなっていったんだ。
それからは、ぼくは他人ごとにようにこの光景を見ている。
山を燃やし、人々が育てている畑や果樹をなぎ倒し、冒険者とかいう人々を吹き飛ばしている。
ああ、やめて。
ぼくはそんな事をしたいわけじゃないんだ。
ぼくがぼくの大好きな人々を怪我させるなんて、そんな事!
『我が盟友、フェーンよ!戻って来い!その銀色の光の方へ!』
ふと懐かしい声が聴こえる。
誰だろう?
厳しい口調だけど、なんか優しい声。
思い出せない…。
でも、ぼくは迷わなかった。
あの光を受ければ戻ってこれると。
「…退魔の光よ、邪悪なるチカラを祓え!『銀の聖域シルバーサンクチュアリ』ッ!!」
全身が銀色の光に包まれる。
とてもきれいな魔力。
ぼくに巣くった瘴気がすべて浄化されていくのが分かった。
ウォオオオオオオオオオオオオオオオン!!
邪悪な瘴気に支配されていたぼくが断末魔の如く吼える。
そこでもう一度ぼくの意識が途絶えるのだった。
───
クレスが銀のチカラで浄化して、巨狼を倒すことに成功した。
瘴気が晴れて、そこに残ったのは一匹の青白い大きな狼だった。
その大きさは先ほどの巨狼というよりは、召喚されて出て来た黒狼くらいの大きさだ。
しかし、それが元の彼なのだと分かった。
なぜならヘルメスがすぐに『治癒』を開始したからだ。
でも俺の魔力もそろそろ尽きそうだぞ?
このままだと、俺がぶっ倒れるんだけどヘルメスさん大丈夫?!
「よし、ここまで回復させれば問題あるまい…。ウード、そろそろ体を返してやろう…。『解除』!」
次の瞬間纏っていた光が霧散し、持っている杖に吸い込まれていった。
それと同時に俺の意識が体に吸い込まれていく(様な感覚がした)のだった。
「なんとか大丈夫だった・・・か?あれれ」
どさっと、魔力切れで俺は倒れてしまった。
『お主のお陰で、皆無事だぞ?我からも感謝する』
「ヘルメスが俺に感謝するなんて、珍しい事もあったもんだな。てか…、もう無理…」
そのまま突っ伏して動けなくなってしまう。
「お父さん、大丈夫!?」
クレスが慌てて駆け寄り、マリアが治療魔法をかけようとする。
『ああ、無駄だぞ。それは魔力切れだから自然に回復するのを待つか、誰かから魔力を吸収するしかないのだ』
「あー、それならこいつらでいいかい?」
とタイミング良くレイラが倒した魔物達を持ってきた。
これだけいれば少しは回復するだろう。
『ほう、用意がいいなレイラよ。お主は良く見ているな』
「えへへ。こう見えて、視野は広い方なんだよ?」
『ふむ、そう言う事にしておこうか』
「ぶー、なによー!たまには素直に褒めてくれてもいいでしょ~!」
という遣り取りがあったが、レイラのお陰でなんとか俺は持ち直した。
起き上がれるくらいに回復した俺は、先ほどの青い白い大きな狼に近づいていく。
すると後ろからバタバタと駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「おおっ!!これはまさしく『守り神様』!冒険者さん、何卒このフェーン様をお救いください!」
「あなたは…、町長でしたね。この狼を知っているんですか?」
「もちろんですとも!大きさこそ、小さくなられてしまったが、この月色の狼がこの町の守り神である、『炎嵐の神狼フェーン』様なのですぞ!!」
なるほど、やはりというか暴れていた魔狼の中から出てきたのが、この町の守り神であったのだった。