戦闘を始める前に、クレスが俺に小声で聞いて来た。
「お父さん…、この間マーレさんに銀の魔力の扱い方を教えて貰ったから、実戦でちゃんと使えるか試していいかな?」
「あれをか?制御出来るようになったのか?」
「うん、教えて貰った通りにずっと練習しているんだけど、かなり調整出来るようになったよ!」
「流石だなぁ!お父さんは出来る娘を持ってとっても嬉しいよ!」
ついニヤけてしまうが、ヘルメスに『お主、まただらしない顔をしているぞ』と小言を言われたのでシュッと顔を戻す。
最近のヘルメスの突っ込みは厳しいから、ちょっと泣けてくるわ。
俺も負けてられないな。
ヘルメスと毎日やっている特訓も、徐々に成果が出ている。
もう少しで実戦でも使えそうだしな。
「もう、お父さんったら!じゃあ、練習の成果を試してくるね!」
そう言うと、体に薄ーく銀の魔力を纏いだした。
最近は、俺もヘルメスとの修行の成果もあってか魔力を感じるようになってきた。
相変わらず魔法を使う才能は無いけど、自分の魔力や他の人や魔獣や魔物の魔力くらいは視えるようになってきたのだ。
そんな事を魔法が得意なマリアに言ったら、『え!?いえ、私にはそんな事出来ませんけど…』とちょっと嫌そうな顔をされた。
何が拙かったんだろうか…。
良く分からないな。
「じゃあ、行ってくる!『加速』!『飛翔』!」
銀のオーラを纏い、宙に浮きながら高速移動して魔物を次々に屠っていくクレス。
その戦いぶりは目を見張るほど、凄まじい。
しかも、殆どの魔物を一撃で倒している。
流石のクレスも、あんな一撃で急所を貫けるほどの剣技は持っていなかった筈だが…と思ったら、手に持つレイピアに銀の魔力を纏わせているようだ。
単なる動物や、人間などには効果が無いとヴァレスが説明をしていたが、魔物相手であればかなりの効果が発揮されるらしい。
俺には良く分からないが、その効果は今目の前で起きている通りという事だろう。
凄まじい威力を発揮するみたいだな。
成長していく娘を嬉しく思う半分、更に差を付けられたという焦り半分な気持ちが湧く。
『流石だなクレスは。元々センスが良かったが、魔力コントロールがより完璧になっている。前に言っていたぞ?あの時のように、皆を危険に晒すわけにいかないから絶対完璧にしてみせると。なんとも健気な娘よの』
何を考えているんだ俺は。
この結果は、クレスが俺が想像できない程の努力の結果じゃないか。
素直に褒めれないで、何が父親だろうか。
「クレス!凄いぞ、頑張ったんだな。後ろは俺達に任せて、お前の努力の成果を見せつけてやれ!」
「うん!頑張るね!」
満面の笑みで宙を駆け回るクレス。
魔力の限界はあるからずっと宙を浮いて戦う事は不可能だろうけど、空から敵を攻撃出来るのは途轍もなく有利だ。
相手の攻撃を受ける事もなく、次々に倒している。
だが俺達の攻撃はクレスだけではない。
「さーて、わたしも行ってくるね!ウードさん、サポートよろしくね!」
レイラもが討ち漏らした敵を狙って攻撃を繰り出していく。
一瞬で何度も攻撃を繰り出す『高速剣』によって何度も貫かれるオーク。
剣技を受けて踊る様に吹き飛ぶも、倒すには至らなかったようだ。
「浅かったのか?」
『いいや、よく見よウードよ』
レイラの剣技を耐えきったように見えたオークだが、次の瞬間驚くことが起きた。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドドドドドドドドンッ!!!
オークの周りにまるで花が咲く様に、爆発が起きた。
「なんだ?何が起きたんだ??」
「あはっ!大成功だね!これが私が師匠から伝授された新技。『高速剣』を打ち込むと同時に、火属性の魔法を爆発させる魔法剣技なんだ!名付けて『爆炎高速剣《ばくえんこうそくけん》』だよ!」
「うむうむ、実戦でも問題ないようだな。あれは、『高速剣』で繰り出す一撃一撃の瞬時に更に集中して爆発の魔法を繰り出しておるのだ。あのような乱暴で且つ繊細な技はレイラのような超短集中が出来る者にしかつかえんのだの。全く、末恐ろしい娘だの」
と、教え込んだ当の本人が若干呆れた顔をしている。
それを聞いている俺とマリアはポカーンと開いた口が塞がらない。
「ええと、魔法と剣技を同時に使えるのって剣聖様くらいだと聞いたことがありますが?」
マリアが学校で習ったであろう知識で、アーネストに聞く。
俺に至っては、そんな事が出来る人を聞いたことが無かった。
「ほう、良く知っておるの。マリアと言ったか?それは半分正解だが、半分は間違いだの。剣聖と言われる者が使えるのは、自身に剣技を鋭くする魔法を使える。だが剣技と攻撃魔法を使えるわけではないのだ」
するとクレスの方を見て、『だとすると、あの娘は剣聖になれる素質がありそうだの』と呟いたように聞こえた。
え、クレスが剣聖とか冗談ですよね?
「それじゃ、レイラは一体?」
「レイラみたいに、剣技に魔法を乗せる者は、『魔導剣士』というのじゃよ。希少さで言えば剣聖と変わらんくらい珍しいの。ほっほっほ、久々に面白い者に会えて儂も嬉しい限りだの」
アーネストが本当に嬉しそうに、そう言った。
こんな凄い人に教えて貰っただけじゃなく、認めて貰えるとかレイラも嬉しいだろうな。
俺には経験出来ない事だ。
「レイラ、凄い人に褒められているわよ?!うーっ、ちょっとずるいですわ…。私も頑張りますわ!」
「あははっ!師匠にそこまで言われるなんて、すっごい嬉しいよ!」
マリアもそんな凄い人に褒められているレイラを見て少し羨ましそうだ。
当のレイラは満面の笑みで次の獲物に飛び掛かっていた。
この調子なら、アーネストさんの護衛は問題なさそうだ。
「さて、これだけ数が減れば問題ないだろう。始めるぞ!このまま、周りに魔物達を近づかせるでないぞ?」
「「「はいっ!」」」
どうやら始まるようだな。
他の冒険者達も奮闘しているらしく、魔物の数もかなり減ってきているようだ。
流石に負傷者も出ているようだが流石は魔導士の町だ、すぐに治療して戦線に復帰させている。
さっきまで大量の血を流していたのに、次の瞬間元気に戦線に復帰する姿を見ると逆に怖くなるくらいだ。
ああならないように、大きなケガだけはしないようにしよう。
「水の精霊ウンディーネよ、我が声に耳を傾け我が願いを聞き届けよ!その恩寵により、あの山の炎を水のチカラで鎮め賜え!『ウィータースプラッシュ』!!」
クレス達が健闘しているお陰で、アーネストのまわりには一切魔物が近づいて来ていない。
完全な無防備な状態でアーネストが詠唱をし終わると、次の瞬間山の上に巨大な水たまりが浮かび上がる。
そして次の瞬間…。
ドパーーーーーーーンッ!
その水溜まりが弾け飛び、山全体に水しぶきを降り注いだ。
いや、『ウォータースプラッシュ』ってあんなに広範囲に使えるもんなの!?
唖然としていたが、みるみると山の火が消えていく。
どうやらアーネストの魔法は大成功のようだ。
「わあっ!流石師匠!すっごいわー!」
「お爺…アーネストさん、凄いですね!」
「わあっ…。あの規模で魔法を行使出来るとか、噂以上の人ですね。元王宮筆頭魔導士の名は嘘じゃないんですね」
とクレス達も口々に賞賛を述べていた。
もちろん、戦いの手を止めないでだ。
「はーっ、はーっ!流石にこの歳で、この規模はしんどいの。儂の魔力はもう殆どないからの。後はウード、そしてそちらのヘルメス様と言ったか?あなた方に任せますよ?」
意味ありげにヘルメスに依頼するアーネスト。
もしや…、というかやっぱり気が付いた?
もうこうなったら、やるしかないよね。
『ふむ、言われなくても我が行くしかないのだ。それにウードとクレス、お主達もな』
そんな中、レイラも前の討伐クエストで押し負けてしまったオーガを打倒して歓喜の声を上げる。
それを見て同じく称賛を送り一緒に喜ぶクレスとマリア。
この後、想像もしない厄災と対峙する事も知らぬままに。
「お父さん…、この間マーレさんに銀の魔力の扱い方を教えて貰ったから、実戦でちゃんと使えるか試していいかな?」
「あれをか?制御出来るようになったのか?」
「うん、教えて貰った通りにずっと練習しているんだけど、かなり調整出来るようになったよ!」
「流石だなぁ!お父さんは出来る娘を持ってとっても嬉しいよ!」
ついニヤけてしまうが、ヘルメスに『お主、まただらしない顔をしているぞ』と小言を言われたのでシュッと顔を戻す。
最近のヘルメスの突っ込みは厳しいから、ちょっと泣けてくるわ。
俺も負けてられないな。
ヘルメスと毎日やっている特訓も、徐々に成果が出ている。
もう少しで実戦でも使えそうだしな。
「もう、お父さんったら!じゃあ、練習の成果を試してくるね!」
そう言うと、体に薄ーく銀の魔力を纏いだした。
最近は、俺もヘルメスとの修行の成果もあってか魔力を感じるようになってきた。
相変わらず魔法を使う才能は無いけど、自分の魔力や他の人や魔獣や魔物の魔力くらいは視えるようになってきたのだ。
そんな事を魔法が得意なマリアに言ったら、『え!?いえ、私にはそんな事出来ませんけど…』とちょっと嫌そうな顔をされた。
何が拙かったんだろうか…。
良く分からないな。
「じゃあ、行ってくる!『加速』!『飛翔』!」
銀のオーラを纏い、宙に浮きながら高速移動して魔物を次々に屠っていくクレス。
その戦いぶりは目を見張るほど、凄まじい。
しかも、殆どの魔物を一撃で倒している。
流石のクレスも、あんな一撃で急所を貫けるほどの剣技は持っていなかった筈だが…と思ったら、手に持つレイピアに銀の魔力を纏わせているようだ。
単なる動物や、人間などには効果が無いとヴァレスが説明をしていたが、魔物相手であればかなりの効果が発揮されるらしい。
俺には良く分からないが、その効果は今目の前で起きている通りという事だろう。
凄まじい威力を発揮するみたいだな。
成長していく娘を嬉しく思う半分、更に差を付けられたという焦り半分な気持ちが湧く。
『流石だなクレスは。元々センスが良かったが、魔力コントロールがより完璧になっている。前に言っていたぞ?あの時のように、皆を危険に晒すわけにいかないから絶対完璧にしてみせると。なんとも健気な娘よの』
何を考えているんだ俺は。
この結果は、クレスが俺が想像できない程の努力の結果じゃないか。
素直に褒めれないで、何が父親だろうか。
「クレス!凄いぞ、頑張ったんだな。後ろは俺達に任せて、お前の努力の成果を見せつけてやれ!」
「うん!頑張るね!」
満面の笑みで宙を駆け回るクレス。
魔力の限界はあるからずっと宙を浮いて戦う事は不可能だろうけど、空から敵を攻撃出来るのは途轍もなく有利だ。
相手の攻撃を受ける事もなく、次々に倒している。
だが俺達の攻撃はクレスだけではない。
「さーて、わたしも行ってくるね!ウードさん、サポートよろしくね!」
レイラもが討ち漏らした敵を狙って攻撃を繰り出していく。
一瞬で何度も攻撃を繰り出す『高速剣』によって何度も貫かれるオーク。
剣技を受けて踊る様に吹き飛ぶも、倒すには至らなかったようだ。
「浅かったのか?」
『いいや、よく見よウードよ』
レイラの剣技を耐えきったように見えたオークだが、次の瞬間驚くことが起きた。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドドドドドドドドンッ!!!
オークの周りにまるで花が咲く様に、爆発が起きた。
「なんだ?何が起きたんだ??」
「あはっ!大成功だね!これが私が師匠から伝授された新技。『高速剣』を打ち込むと同時に、火属性の魔法を爆発させる魔法剣技なんだ!名付けて『爆炎高速剣《ばくえんこうそくけん》』だよ!」
「うむうむ、実戦でも問題ないようだな。あれは、『高速剣』で繰り出す一撃一撃の瞬時に更に集中して爆発の魔法を繰り出しておるのだ。あのような乱暴で且つ繊細な技はレイラのような超短集中が出来る者にしかつかえんのだの。全く、末恐ろしい娘だの」
と、教え込んだ当の本人が若干呆れた顔をしている。
それを聞いている俺とマリアはポカーンと開いた口が塞がらない。
「ええと、魔法と剣技を同時に使えるのって剣聖様くらいだと聞いたことがありますが?」
マリアが学校で習ったであろう知識で、アーネストに聞く。
俺に至っては、そんな事が出来る人を聞いたことが無かった。
「ほう、良く知っておるの。マリアと言ったか?それは半分正解だが、半分は間違いだの。剣聖と言われる者が使えるのは、自身に剣技を鋭くする魔法を使える。だが剣技と攻撃魔法を使えるわけではないのだ」
するとクレスの方を見て、『だとすると、あの娘は剣聖になれる素質がありそうだの』と呟いたように聞こえた。
え、クレスが剣聖とか冗談ですよね?
「それじゃ、レイラは一体?」
「レイラみたいに、剣技に魔法を乗せる者は、『魔導剣士』というのじゃよ。希少さで言えば剣聖と変わらんくらい珍しいの。ほっほっほ、久々に面白い者に会えて儂も嬉しい限りだの」
アーネストが本当に嬉しそうに、そう言った。
こんな凄い人に教えて貰っただけじゃなく、認めて貰えるとかレイラも嬉しいだろうな。
俺には経験出来ない事だ。
「レイラ、凄い人に褒められているわよ?!うーっ、ちょっとずるいですわ…。私も頑張りますわ!」
「あははっ!師匠にそこまで言われるなんて、すっごい嬉しいよ!」
マリアもそんな凄い人に褒められているレイラを見て少し羨ましそうだ。
当のレイラは満面の笑みで次の獲物に飛び掛かっていた。
この調子なら、アーネストさんの護衛は問題なさそうだ。
「さて、これだけ数が減れば問題ないだろう。始めるぞ!このまま、周りに魔物達を近づかせるでないぞ?」
「「「はいっ!」」」
どうやら始まるようだな。
他の冒険者達も奮闘しているらしく、魔物の数もかなり減ってきているようだ。
流石に負傷者も出ているようだが流石は魔導士の町だ、すぐに治療して戦線に復帰させている。
さっきまで大量の血を流していたのに、次の瞬間元気に戦線に復帰する姿を見ると逆に怖くなるくらいだ。
ああならないように、大きなケガだけはしないようにしよう。
「水の精霊ウンディーネよ、我が声に耳を傾け我が願いを聞き届けよ!その恩寵により、あの山の炎を水のチカラで鎮め賜え!『ウィータースプラッシュ』!!」
クレス達が健闘しているお陰で、アーネストのまわりには一切魔物が近づいて来ていない。
完全な無防備な状態でアーネストが詠唱をし終わると、次の瞬間山の上に巨大な水たまりが浮かび上がる。
そして次の瞬間…。
ドパーーーーーーーンッ!
その水溜まりが弾け飛び、山全体に水しぶきを降り注いだ。
いや、『ウォータースプラッシュ』ってあんなに広範囲に使えるもんなの!?
唖然としていたが、みるみると山の火が消えていく。
どうやらアーネストの魔法は大成功のようだ。
「わあっ!流石師匠!すっごいわー!」
「お爺…アーネストさん、凄いですね!」
「わあっ…。あの規模で魔法を行使出来るとか、噂以上の人ですね。元王宮筆頭魔導士の名は嘘じゃないんですね」
とクレス達も口々に賞賛を述べていた。
もちろん、戦いの手を止めないでだ。
「はーっ、はーっ!流石にこの歳で、この規模はしんどいの。儂の魔力はもう殆どないからの。後はウード、そしてそちらのヘルメス様と言ったか?あなた方に任せますよ?」
意味ありげにヘルメスに依頼するアーネスト。
もしや…、というかやっぱり気が付いた?
もうこうなったら、やるしかないよね。
『ふむ、言われなくても我が行くしかないのだ。それにウードとクレス、お主達もな』
そんな中、レイラも前の討伐クエストで押し負けてしまったオーガを打倒して歓喜の声を上げる。
それを見て同じく称賛を送り一緒に喜ぶクレスとマリア。
この後、想像もしない厄災と対峙する事も知らぬままに。