特訓を始めて1週間。
わたしは、今日もアーネストさんと魔法の訓練をしている。
アーネストさんの教え方はとっても分かりやすく実戦向きで、どういう風に使えばいいか、具体的にお手本を見せてくれつつ教えてくれた。
時には魔法理論を習い、時には使ったことが無い魔法を試させられたりと色々あったが、学校では習わなかったような事を沢山教えてくれた。
今ではアーネストさんの事を、『師匠』と呼ぶようになった。
相変わらず気安い感じで話はしているのだけど。
「大分、魔法のコントロールが出来るようになってきたようだの」
「はい!お陰様で意識して魔法を使えるようになっきたわ。でも、やっぱり魔法の威力が実戦で使える程上がらない…」
「レイラは一度に放出出来る魔力の量があまり多くない様だの。この1週間見ていて分かったが、レイラは長時間の集中が苦手の様だ。だから、大威力の魔法を放つことが出来ないんだの」
「う…。昔から意識して長時間集中するのが苦手なの」
「そうみたいだの。座学に入ると、すぐに集中が切れるようだしの。かっかっか」
「もう、師匠。それは言わないで~」
「しかしの、お主は短時間に集中するときの集中力は目を見張る時がある。だからその歳で『高速剣』なんぞというものを会得出来たのだろう」
「初めて成功した時はすっごい嬉しかったわ!でも、教官が言うには私の高速剣は本来のものと少し違うみたいなの。なんでも、普通は構えから発動してず~~~っと集中力を高めたまま一点の狂いもなく高速で正確な付きや切り払いをするらしいのだけど、わたしの場合は最初と攻撃を繰り出す一撃一撃の瞬間だけしか集中していないとか」
それでも習得しただけでも凄い事なので、わたしが放ったスキルは『高速剣』であると認定された。
勿論、学校側も自分の養成学校から『高速剣』の使い手を生み出したとなれば、周りからの評価が上がると言う目論見があったのだと思うけど。
「ほうほう。確かに昔に儂の同僚にも使えるものがおったが、お主とは正反対で一旦集中したら周りの声が聞こえなくなるほど集中する奴だった。そ奴が使う『高速剣』は、確かにかなり集中を高めてから放っておったの。レイラの『高速剣』は、集中する時間が短い分溜めが無いから発動までが短い。だから、使い勝手は良さそうだの。しかし、その分一撃一撃が軽いように見えるの。…どうだ、違うか?」
「さすが師匠!魔法だけじゃなくて、剣技にも詳しいのね!そう、わたしの『高速剣』は確かに『高速剣』なんだけど、師匠が言う様に他の人が放つよりも威力がかなり低いみたい。最初はわたしが女だからだろうと言っていたけどね」
「腕力という意味で言っているのあれば、レイラは非力ではない部類だからの。そこは当てはまらないとおもうがの」
「…師匠、それってどういう意味ですか?」
「おっほん。で、ここからが本題だ」
「あ、はい。(あれ、誤魔化された?)」
釈然としないと思いつつも、話に耳を傾ける。
ここに来ている目的は、あくまで実戦に使えるだけの魔法を習得す為だし。
だったら、少しくらい失礼な事を言われても気にしている場合ではないからね。
…自覚しているだけに心に刺さるものはあるけどね!
「レイラ。お主は長時間集中して放つようなスキルは得意ではない。それは魔法も同じことなのだよ。だからこそ、お主には短時間の集中で放つ事が出来る魔法を覚えて貰う。さらに言えば、それを連続で放つ事が出来る訓練をするのだ」
「短時間の集中で使える魔法を、それも連続で?それって可能なのかなぁ?そもそも、それで戦闘に役立つの?」
「可能、不可能な話ではない、やるのだよ。ただ、儂が出来ない事を覚えろというつもりはないぞ。それが役に立つかも実際に見ればわかるぞ」
そういうと、アーネストはいつもの練習用の的が置いてある庭へ移動する。
レイラもそれに従ってその後をついて行った。
アーネストは『さて、やるかの』と呟いたかと思うと、手のひらに小さな火の玉を浮かび上がらせる。
そして、それを的に目掛けて放つとすぐに次の火の玉を作り出した。
「分かりやすくやると、こういう事だの。バースト!…バースト!…バースト!!」
次々につくられる小さな火の玉は、的に当たる前に小さな爆発を起こす、爆発を起こす前には既に次の火の玉が作られて放たれており、すぐさま次の爆発を起こす。
ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!
まるで王都の建国祭に打ちあがると言われている、花火の様だと見たことも無いのに思うレイラ。
そして、ある事に気が付いた。
「これって…。まるで私の『高速剣』みたい…」
「ほう、気が付いたか?そうだ、これはお主の『高速剣』の魔法バージョンだ。普通の魔術師や魔導士がこれをやるとなれば、かなりの集中力が必要になる。しかしだ、お主の場合は違う。お主は魔法を作り出す時と、爆発させるときだけ集中すればいいのだ。いや、お主ならそれが可能なのだよ」
「私なら出来るの?」
「ふむ、ある意味でいうとお主しかこんな事を出来ん。普通ならこれだけ集中して発動するならば、もっと大規模な魔法を使った方が効率がいいからの。だから、これを使えればお主だけの特別な魔法になるやもしれぬ。どうだ、やってみるか?」
「私だけの魔法!うん、やる!やらせてください!」
「うむうむ。それでこそ、教え甲斐があるというものだの。では、早速始めるとしようかの」
こうして、レイラは自分だけの魔法を取得すべくアーネスト主導の元、新たな特訓が始まった。
剣技以外の訓練でここまで真剣に取り組んだのは初めてであったが、仲間の為に、そして自分の為にここで挫けるわけにはいかない。
今までにない程に、特訓に打ち込むレイラであった。
───そうして特訓する事、1週間経った頃…。
ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!!
「やったーっ!出来た!!」
「ほうほう、遂に出来たではないか!なるほど、ここまで早く習得出来るとは思っていなかったが、レイラ良くやったぞ?」
「あはは、師匠のおかげですよ!」
手放しで喜ぶわたしを見て、なぜか師匠であるアーネストさんが目線を鋭くする。
あれ~、わたし何かやらかしたかな?と頭の上にハテナを浮かべていると、アーネストさんが恐ろしい事を言ってきた。
「喜んでいる所すまんがの、これで終わりではないぞ?いや、強いて言うならこれから始まるのだ」
「えぇ!?これで終わりじゃないの?!」
「もちろんじゃよレイラ。お主、自分の役割を忘れておらんか?」
「私の役割?…それは、剣を使う剣士って事?」
「ほっほっほ。忘れておらぬようでよかったの。そうじゃ、そんなお主が魔術師なら出来る事をやれたから終わりでどうする?この程度では、不意打ちに使えても決定打にはなるまいよ」
「ええー!?師匠が覚えろって言ったんじゃないですかぁ…!」
涙目になりながら訴えるレイラ。
しかし、その後の言葉を聞いて息をのむのだった。
「まずは、あれが使えねばそもそも使えないからだの。お主に本当に授けたいのは、儂にも出来ぬ事よ。それはの、お主が今しがた習得した『連鎖魔法』と、お主が得意とする『高速剣』の融合技だ」
「魔法と剣技の融合?!」
「そうだの。魔法と剣技を融合させるスキル。それを『魔法剣』というのじゃ」
魔法剣…。
そんなの使っている人見たことないんですけど。
というか、そんなの聞いたこともないわ。
でも、なんでだろう?
そんなのを聞いても、尻込みするどころか胸が躍っている自分がいるのが分かる。
きっとそれは、まだ『ラ・ステラ』では誰も成しえてない事だったからだ。
ううん、それどころかカンドの町では誰一人として使える人がいないと思う。
もしこれを習得する事が出来るのであれば、自分が求めていたものが手に入ると直感した。
そう、パーティー内において自分のみが使える特別なスキルが手に入るのだと。
「師匠!わたしやるわ!きっと、それを習得してみせる!」
「ほっほっほ。では、早速始めるとしようかの」
今度こそ、師匠であるアーネストさんは満面の笑みを浮かべてくれるのだった。
───その頃
レイラが更なる特訓に励みだした頃、不穏な影がウインドの町に訪れる。
誰にも気づかれず、誰にも悟られず、そっとその悪意は近づいているのであった。
わたしは、今日もアーネストさんと魔法の訓練をしている。
アーネストさんの教え方はとっても分かりやすく実戦向きで、どういう風に使えばいいか、具体的にお手本を見せてくれつつ教えてくれた。
時には魔法理論を習い、時には使ったことが無い魔法を試させられたりと色々あったが、学校では習わなかったような事を沢山教えてくれた。
今ではアーネストさんの事を、『師匠』と呼ぶようになった。
相変わらず気安い感じで話はしているのだけど。
「大分、魔法のコントロールが出来るようになってきたようだの」
「はい!お陰様で意識して魔法を使えるようになっきたわ。でも、やっぱり魔法の威力が実戦で使える程上がらない…」
「レイラは一度に放出出来る魔力の量があまり多くない様だの。この1週間見ていて分かったが、レイラは長時間の集中が苦手の様だ。だから、大威力の魔法を放つことが出来ないんだの」
「う…。昔から意識して長時間集中するのが苦手なの」
「そうみたいだの。座学に入ると、すぐに集中が切れるようだしの。かっかっか」
「もう、師匠。それは言わないで~」
「しかしの、お主は短時間に集中するときの集中力は目を見張る時がある。だからその歳で『高速剣』なんぞというものを会得出来たのだろう」
「初めて成功した時はすっごい嬉しかったわ!でも、教官が言うには私の高速剣は本来のものと少し違うみたいなの。なんでも、普通は構えから発動してず~~~っと集中力を高めたまま一点の狂いもなく高速で正確な付きや切り払いをするらしいのだけど、わたしの場合は最初と攻撃を繰り出す一撃一撃の瞬間だけしか集中していないとか」
それでも習得しただけでも凄い事なので、わたしが放ったスキルは『高速剣』であると認定された。
勿論、学校側も自分の養成学校から『高速剣』の使い手を生み出したとなれば、周りからの評価が上がると言う目論見があったのだと思うけど。
「ほうほう。確かに昔に儂の同僚にも使えるものがおったが、お主とは正反対で一旦集中したら周りの声が聞こえなくなるほど集中する奴だった。そ奴が使う『高速剣』は、確かにかなり集中を高めてから放っておったの。レイラの『高速剣』は、集中する時間が短い分溜めが無いから発動までが短い。だから、使い勝手は良さそうだの。しかし、その分一撃一撃が軽いように見えるの。…どうだ、違うか?」
「さすが師匠!魔法だけじゃなくて、剣技にも詳しいのね!そう、わたしの『高速剣』は確かに『高速剣』なんだけど、師匠が言う様に他の人が放つよりも威力がかなり低いみたい。最初はわたしが女だからだろうと言っていたけどね」
「腕力という意味で言っているのあれば、レイラは非力ではない部類だからの。そこは当てはまらないとおもうがの」
「…師匠、それってどういう意味ですか?」
「おっほん。で、ここからが本題だ」
「あ、はい。(あれ、誤魔化された?)」
釈然としないと思いつつも、話に耳を傾ける。
ここに来ている目的は、あくまで実戦に使えるだけの魔法を習得す為だし。
だったら、少しくらい失礼な事を言われても気にしている場合ではないからね。
…自覚しているだけに心に刺さるものはあるけどね!
「レイラ。お主は長時間集中して放つようなスキルは得意ではない。それは魔法も同じことなのだよ。だからこそ、お主には短時間の集中で放つ事が出来る魔法を覚えて貰う。さらに言えば、それを連続で放つ事が出来る訓練をするのだ」
「短時間の集中で使える魔法を、それも連続で?それって可能なのかなぁ?そもそも、それで戦闘に役立つの?」
「可能、不可能な話ではない、やるのだよ。ただ、儂が出来ない事を覚えろというつもりはないぞ。それが役に立つかも実際に見ればわかるぞ」
そういうと、アーネストはいつもの練習用の的が置いてある庭へ移動する。
レイラもそれに従ってその後をついて行った。
アーネストは『さて、やるかの』と呟いたかと思うと、手のひらに小さな火の玉を浮かび上がらせる。
そして、それを的に目掛けて放つとすぐに次の火の玉を作り出した。
「分かりやすくやると、こういう事だの。バースト!…バースト!…バースト!!」
次々につくられる小さな火の玉は、的に当たる前に小さな爆発を起こす、爆発を起こす前には既に次の火の玉が作られて放たれており、すぐさま次の爆発を起こす。
ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!
まるで王都の建国祭に打ちあがると言われている、花火の様だと見たことも無いのに思うレイラ。
そして、ある事に気が付いた。
「これって…。まるで私の『高速剣』みたい…」
「ほう、気が付いたか?そうだ、これはお主の『高速剣』の魔法バージョンだ。普通の魔術師や魔導士がこれをやるとなれば、かなりの集中力が必要になる。しかしだ、お主の場合は違う。お主は魔法を作り出す時と、爆発させるときだけ集中すればいいのだ。いや、お主ならそれが可能なのだよ」
「私なら出来るの?」
「ふむ、ある意味でいうとお主しかこんな事を出来ん。普通ならこれだけ集中して発動するならば、もっと大規模な魔法を使った方が効率がいいからの。だから、これを使えればお主だけの特別な魔法になるやもしれぬ。どうだ、やってみるか?」
「私だけの魔法!うん、やる!やらせてください!」
「うむうむ。それでこそ、教え甲斐があるというものだの。では、早速始めるとしようかの」
こうして、レイラは自分だけの魔法を取得すべくアーネスト主導の元、新たな特訓が始まった。
剣技以外の訓練でここまで真剣に取り組んだのは初めてであったが、仲間の為に、そして自分の為にここで挫けるわけにはいかない。
今までにない程に、特訓に打ち込むレイラであった。
───そうして特訓する事、1週間経った頃…。
ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!ボンッ!!
「やったーっ!出来た!!」
「ほうほう、遂に出来たではないか!なるほど、ここまで早く習得出来るとは思っていなかったが、レイラ良くやったぞ?」
「あはは、師匠のおかげですよ!」
手放しで喜ぶわたしを見て、なぜか師匠であるアーネストさんが目線を鋭くする。
あれ~、わたし何かやらかしたかな?と頭の上にハテナを浮かべていると、アーネストさんが恐ろしい事を言ってきた。
「喜んでいる所すまんがの、これで終わりではないぞ?いや、強いて言うならこれから始まるのだ」
「えぇ!?これで終わりじゃないの?!」
「もちろんじゃよレイラ。お主、自分の役割を忘れておらんか?」
「私の役割?…それは、剣を使う剣士って事?」
「ほっほっほ。忘れておらぬようでよかったの。そうじゃ、そんなお主が魔術師なら出来る事をやれたから終わりでどうする?この程度では、不意打ちに使えても決定打にはなるまいよ」
「ええー!?師匠が覚えろって言ったんじゃないですかぁ…!」
涙目になりながら訴えるレイラ。
しかし、その後の言葉を聞いて息をのむのだった。
「まずは、あれが使えねばそもそも使えないからだの。お主に本当に授けたいのは、儂にも出来ぬ事よ。それはの、お主が今しがた習得した『連鎖魔法』と、お主が得意とする『高速剣』の融合技だ」
「魔法と剣技の融合?!」
「そうだの。魔法と剣技を融合させるスキル。それを『魔法剣』というのじゃ」
魔法剣…。
そんなの使っている人見たことないんですけど。
というか、そんなの聞いたこともないわ。
でも、なんでだろう?
そんなのを聞いても、尻込みするどころか胸が躍っている自分がいるのが分かる。
きっとそれは、まだ『ラ・ステラ』では誰も成しえてない事だったからだ。
ううん、それどころかカンドの町では誰一人として使える人がいないと思う。
もしこれを習得する事が出来るのであれば、自分が求めていたものが手に入ると直感した。
そう、パーティー内において自分のみが使える特別なスキルが手に入るのだと。
「師匠!わたしやるわ!きっと、それを習得してみせる!」
「ほっほっほ。では、早速始めるとしようかの」
今度こそ、師匠であるアーネストさんは満面の笑みを浮かべてくれるのだった。
───その頃
レイラが更なる特訓に励みだした頃、不穏な影がウインドの町に訪れる。
誰にも気づかれず、誰にも悟られず、そっとその悪意は近づいているのであった。