ギルドから依頼された依頼の内容は、ゴブリンの住処になっていると思われる大きな洞窟だった。
数日前に、薬草採取で訪れていたFランク冒険者が見つけたらしい。
何体ものゴブリンが行き来している事から、中には集落が出来上がっていると思われる。
大規模な集落に発展すれば街道を襲ったりする恐れもあり、そうなる前に、討伐して欲しいという内容だった。
最近精力的に活動していたのと、ジャイアントウーズを討伐した実績を買われて、俺らを指名しようとギルド内で名前が挙がったらしい。
ちなみに、指名されたクエストを達成すると通常のクエストよりも評価があがるらしく、これをクリアすればDランク昇格間違いなしですよと、ギルドの受付嬢に言われた。
こちらとしても願ったり叶ったりなので、すぐにクエストを受諾して出発した。
カンドから馬車で1日半掛けてやってきた俺らは、洞窟から少し離れたところに馬車を留めて、エースを見張り番にした。
食事を軽く済ませてから、諸々の準備を済まし、さっそく洞窟の調査を開始した。
洞窟の入口には、見張りのゴブリンが数体入れ替わりつつ警戒している。
これは、見張りを立てれるくらい規模が大きい集落になっているという事だ。
ここに来る前に、ギルド職員からゴブリンの集落について詳しい話を聞いてきた。
10~20体くらいでは、見張りを立てる集落は殆どなく、見張りが居た時点でそれ以上の規模になっているという事らしい。
さらに、見張りが武装している場合は上位種がいる可能性があるので、最初は偵察のため入口付近である程度戦闘をしたら一旦引き返すように言われている。
さらに、見張りがホブゴブリンだった場合は、中にいる最上位種はゴブリンロードもしくはゴブリンキングとなるので、その時点で高位ランク冒険者の討伐隊を出すレベルになる。
その場合は、戦闘せずにすぐに引き返してギルドに報告するようにとの事だった。
今回は、武装しているゴブリンとはいえ木を削ったこん棒などの簡易なものだった。
なので、状況とギルド職員の話をすり合わせると、上位種はいないが集落としては30体以上はいるということになる。
この時点で脅威度はEランクだ。
既に油断出来る状況ではなくなった事になる。
「結構大きな集落になってそうだな」
「そうだねお父さん。でも、持っている武器や防具は粗雑なものだから、中規模ってところじゃないかな?」
クレスも概ね俺と同じ考えのようだ。
それにレイラとマリアも同じ意見だと頷き返す。
「まずは様子見で入口を制圧しよう。そこを起点にして、徐々に中に進んでいく」
「わたしは異議なし!」
「はい、問題ありませんわ」
「うん、じゃあ前衛は私とレイラ。マリアは真ん中で支援を宜しく。お父さんは殿をよろしくね」
すっかり冒険者らしくなったクレスを見て、逞しく育ったなと涙腺が緩みそうになるが、まだ始まってすらいないのでグッと堪える。
歳を取ると涙もろくなるって誰かが言ってたが、本当の様だな。
まずは、こっちに注意を向かせるために石ころをぽいっと投げる。
コロン。
ギャギャッ!?
落ちた石ころを見て、警戒しつつ近づいて来る見張りのゴブリン。
その頭を目掛けて、俺が弓矢を撃ち放つ。
シュゥ!ドスッ。
うん、うまく頭に命中。
一撃で仕留めれたようだ。
我ながらいい腕だ。
もう一匹いたゴブリンが警戒する声を上げようとするが、悲鳴を上げる間もなく素早く近づいたレイラに一撃で首を落とされる。
「よし、おっけーだよ」
しかし、その物音に気が付いた他のゴブリン達が中から5数匹ほど出てきた。
どれも同じように粗末な装備しかしていない。
若干痩せているようにも見える。
「ちぇっ。もう気が付いたの?ええい、やー!」
レイラが毒気づきながらも2体のゴブリンを瞬時に仕留めた。
ゴブリン如きというだけあり、レイラの力量の前ではゴブリン程度では成す術が無い。
隣でクレスも危なげなく残りの2体を仕留めた。
しかし、残りの一体を討ち損じてしまい、一目散に中に逃げ込んでいってしまった。
ギャッギャギャギャギャー!
「あっ、まてっ!ううっ、逃げられたね」
「くーっ、逃げ足だけは早いんだから」
打ち漏らしてしまい、悔やむクレスに毒づくレイラ。
マリアはというと、魔物とは言え血を流し絶命した魔物に顔を青くしていた。
動物系の魔物なら平気なのだが、どうも人の形に近い魔物の死体は苦手の様だ。
そろそろ慣れて欲しいところではあるんだけど、こればかりは本人次第なので待つしかない。
なるべく視界から早く消えるように、それぞれの死体から魔石を抜いて処理する。
ゴブリン肉は食べても不味いらしいので、肉食のペットの餌か、他の肉食獣をおびき寄せる撒き餌にしかならない。
一先ず入口前は安全になったので、馬車近くまで持ってきて、エースも呼び寄せた。
ゴブリン単体なら、エースの方が強いので問題ないだろう。
ゴブリンから比較的柔らかい所を切り取ってエースに与えて、それ以外は穴を掘って埋めてしまう。
外から魔獣が入り込んでも厄介だからね。
さて、中に突入する準備は出来上がった。
逃げたゴブリンが今頃仲間を呼びに行っているだろうが、どうせ駆除しないといけないのだ。
前から来る分には好都合だ。
もし捌き切れない数になったらこの入口まで戻ってきて、体制を整える手筈にした。
そうならないように、なるべくスムーズに討伐していかないとだな。
クレスとレイラの二人ならそのくらい楽にやってくれそうだが。
───
中に入ってから、既に30分ほど経った。
中に入って5分もしないうちに、ゴブリンがわらわらと出てきた。
それからひっきりなしに襲っては来るが、どれも装備が貧弱なので相手の攻撃を受ける前に倒してしまっている。
打ち合いすらないのだから、剣筋が綺麗な二人の場合なら刃こぼれすら起きていない。
それどころか、剣に一滴も血が付いていないのだ。
いや、どんだけ凄いの君たち!?
クレスも凄いと思っていたが、レイラの剣技も改めて見るとかなり凄いんだな。
今までそれほど大量の敵を相手にするところを見たことが無かったので、ここまでの腕だとは気が付かなかった。
しかし、いくら巣の中に侵入されたとは言え、このゴブリン達の必死さは何だろう?
どのゴブリンも逃げ出すどころか、必死の表情でこちらに襲い掛かってくる。
まるで何かに怯えた獣のように…。
森で狩りをしていると、たまにこういう獣に遭遇する。
普段はそこまで好戦的じゃないのに、遭遇した瞬間から殺気立っている獣だ。
勿論、狩りをする為に行っているのでしっかり仕留めるのだけど、その後にその理由が判明する。
大抵は、飢えた熊や魔獣が獣がやって来た方向から現れるからだ。
嫌な汗が流れる。
──まさか、こいつらは・・・
「クレス、レイラ!もしかしたら、こいつら・・・」
そう言い掛けた時だった。
突然奥から、聞いた事の無い雄叫びが響き渡った。
グオオオオオオオオオオオオ!!!
数日前に、薬草採取で訪れていたFランク冒険者が見つけたらしい。
何体ものゴブリンが行き来している事から、中には集落が出来上がっていると思われる。
大規模な集落に発展すれば街道を襲ったりする恐れもあり、そうなる前に、討伐して欲しいという内容だった。
最近精力的に活動していたのと、ジャイアントウーズを討伐した実績を買われて、俺らを指名しようとギルド内で名前が挙がったらしい。
ちなみに、指名されたクエストを達成すると通常のクエストよりも評価があがるらしく、これをクリアすればDランク昇格間違いなしですよと、ギルドの受付嬢に言われた。
こちらとしても願ったり叶ったりなので、すぐにクエストを受諾して出発した。
カンドから馬車で1日半掛けてやってきた俺らは、洞窟から少し離れたところに馬車を留めて、エースを見張り番にした。
食事を軽く済ませてから、諸々の準備を済まし、さっそく洞窟の調査を開始した。
洞窟の入口には、見張りのゴブリンが数体入れ替わりつつ警戒している。
これは、見張りを立てれるくらい規模が大きい集落になっているという事だ。
ここに来る前に、ギルド職員からゴブリンの集落について詳しい話を聞いてきた。
10~20体くらいでは、見張りを立てる集落は殆どなく、見張りが居た時点でそれ以上の規模になっているという事らしい。
さらに、見張りが武装している場合は上位種がいる可能性があるので、最初は偵察のため入口付近である程度戦闘をしたら一旦引き返すように言われている。
さらに、見張りがホブゴブリンだった場合は、中にいる最上位種はゴブリンロードもしくはゴブリンキングとなるので、その時点で高位ランク冒険者の討伐隊を出すレベルになる。
その場合は、戦闘せずにすぐに引き返してギルドに報告するようにとの事だった。
今回は、武装しているゴブリンとはいえ木を削ったこん棒などの簡易なものだった。
なので、状況とギルド職員の話をすり合わせると、上位種はいないが集落としては30体以上はいるということになる。
この時点で脅威度はEランクだ。
既に油断出来る状況ではなくなった事になる。
「結構大きな集落になってそうだな」
「そうだねお父さん。でも、持っている武器や防具は粗雑なものだから、中規模ってところじゃないかな?」
クレスも概ね俺と同じ考えのようだ。
それにレイラとマリアも同じ意見だと頷き返す。
「まずは様子見で入口を制圧しよう。そこを起点にして、徐々に中に進んでいく」
「わたしは異議なし!」
「はい、問題ありませんわ」
「うん、じゃあ前衛は私とレイラ。マリアは真ん中で支援を宜しく。お父さんは殿をよろしくね」
すっかり冒険者らしくなったクレスを見て、逞しく育ったなと涙腺が緩みそうになるが、まだ始まってすらいないのでグッと堪える。
歳を取ると涙もろくなるって誰かが言ってたが、本当の様だな。
まずは、こっちに注意を向かせるために石ころをぽいっと投げる。
コロン。
ギャギャッ!?
落ちた石ころを見て、警戒しつつ近づいて来る見張りのゴブリン。
その頭を目掛けて、俺が弓矢を撃ち放つ。
シュゥ!ドスッ。
うん、うまく頭に命中。
一撃で仕留めれたようだ。
我ながらいい腕だ。
もう一匹いたゴブリンが警戒する声を上げようとするが、悲鳴を上げる間もなく素早く近づいたレイラに一撃で首を落とされる。
「よし、おっけーだよ」
しかし、その物音に気が付いた他のゴブリン達が中から5数匹ほど出てきた。
どれも同じように粗末な装備しかしていない。
若干痩せているようにも見える。
「ちぇっ。もう気が付いたの?ええい、やー!」
レイラが毒気づきながらも2体のゴブリンを瞬時に仕留めた。
ゴブリン如きというだけあり、レイラの力量の前ではゴブリン程度では成す術が無い。
隣でクレスも危なげなく残りの2体を仕留めた。
しかし、残りの一体を討ち損じてしまい、一目散に中に逃げ込んでいってしまった。
ギャッギャギャギャギャー!
「あっ、まてっ!ううっ、逃げられたね」
「くーっ、逃げ足だけは早いんだから」
打ち漏らしてしまい、悔やむクレスに毒づくレイラ。
マリアはというと、魔物とは言え血を流し絶命した魔物に顔を青くしていた。
動物系の魔物なら平気なのだが、どうも人の形に近い魔物の死体は苦手の様だ。
そろそろ慣れて欲しいところではあるんだけど、こればかりは本人次第なので待つしかない。
なるべく視界から早く消えるように、それぞれの死体から魔石を抜いて処理する。
ゴブリン肉は食べても不味いらしいので、肉食のペットの餌か、他の肉食獣をおびき寄せる撒き餌にしかならない。
一先ず入口前は安全になったので、馬車近くまで持ってきて、エースも呼び寄せた。
ゴブリン単体なら、エースの方が強いので問題ないだろう。
ゴブリンから比較的柔らかい所を切り取ってエースに与えて、それ以外は穴を掘って埋めてしまう。
外から魔獣が入り込んでも厄介だからね。
さて、中に突入する準備は出来上がった。
逃げたゴブリンが今頃仲間を呼びに行っているだろうが、どうせ駆除しないといけないのだ。
前から来る分には好都合だ。
もし捌き切れない数になったらこの入口まで戻ってきて、体制を整える手筈にした。
そうならないように、なるべくスムーズに討伐していかないとだな。
クレスとレイラの二人ならそのくらい楽にやってくれそうだが。
───
中に入ってから、既に30分ほど経った。
中に入って5分もしないうちに、ゴブリンがわらわらと出てきた。
それからひっきりなしに襲っては来るが、どれも装備が貧弱なので相手の攻撃を受ける前に倒してしまっている。
打ち合いすらないのだから、剣筋が綺麗な二人の場合なら刃こぼれすら起きていない。
それどころか、剣に一滴も血が付いていないのだ。
いや、どんだけ凄いの君たち!?
クレスも凄いと思っていたが、レイラの剣技も改めて見るとかなり凄いんだな。
今までそれほど大量の敵を相手にするところを見たことが無かったので、ここまでの腕だとは気が付かなかった。
しかし、いくら巣の中に侵入されたとは言え、このゴブリン達の必死さは何だろう?
どのゴブリンも逃げ出すどころか、必死の表情でこちらに襲い掛かってくる。
まるで何かに怯えた獣のように…。
森で狩りをしていると、たまにこういう獣に遭遇する。
普段はそこまで好戦的じゃないのに、遭遇した瞬間から殺気立っている獣だ。
勿論、狩りをする為に行っているのでしっかり仕留めるのだけど、その後にその理由が判明する。
大抵は、飢えた熊や魔獣が獣がやって来た方向から現れるからだ。
嫌な汗が流れる。
──まさか、こいつらは・・・
「クレス、レイラ!もしかしたら、こいつら・・・」
そう言い掛けた時だった。
突然奥から、聞いた事の無い雄叫びが響き渡った。
グオオオオオオオオオオオオ!!!