ヘルメスとマリアのお陰でわずかな傷跡もなく、全快する事が出来た。
『全く、無茶をしおってからに』
いやいや、ヘルメスさん。
もとはと言えば、ヘルメスが任せろって言ったから前に出たのに。
仕留めれなかったからじゃないか。
『我は、一撃で倒せるとは一言も言ってないぞ?しかし、この娘たちは皆優秀な子達だな。一流の域に到達するのもそう遠くはあるまい』
勝手に思考を読まれた挙句に微妙に話を逸らされた気がするが、終わった事をいつまでも言っても仕方ないか。
そうだ!折角苦労して倒したんだし、何か良い物でも落ちてないだろうか。
クレス達は、周りに他の魔物が居ないかを警戒しつつも、ジャイアントウーズの残骸を調べている。
なんでも、あのプヨプヨした半透明な膜も何かの素材になるらしく、酸を洗い流して回収している。
なるほど、なんでも使えるんだな。
そう言えば、破裂した後に何かが落ちた音がした気がするな。
何か落ちているかな。
そう思って地面を照らしながら探すと、きらりと光るものを見つける。
「なんだこれ?」
「お父さん、何か見つけたの?」
俺が何かの変な顔が付いた像を拾い上げる。
なんかのお守りか、置物か?
「変な像を見つけたぞ」
「うわー、何それ。ちょっと気直悪いねウードさん」
レイラが俺の方を見てそう言うので、まるで俺が言われたような気分になる。
うん割れてしまっているし、こんなガラクタは捨てよう。
『ふむ、それは何かの魔具のようだな。だが、既に魔力が宿っていない所をみると、既に価値はないだろう』
ヘルメスもこう言っているのだし、もう使えないのであれば捨てといていいだろう。
そう考えて、ぽいっと捨てた。
「わぁ。これは凄いですね」
今度はマリアの声だ。
手にはこぶし大の大きな魔石を持っている。
「核の中にあった魔石のようです。流石、ジャイアントウーズともなれば魔石の大きさも規格外ですわ」
「わぁ~、こんな大きな魔石を初めて見たよ!キラキラして、綺麗だね」
「いいね~、これだけ大きければきっと高値で売れるんじゃない?」
マリアが拾い上げた魔石を見て、クレスもレイラも目を輝かせていた。
レイラは流石商家の娘だけあり、既にどのくらいの価値があるのかを頭の中で計算しているようだ。
ちなみに、レイラは少し大雑把な所があるが、決して頭の悪い子ではない。
商家の娘に育っただけあり、それなりの教養は備わっている。
他の二人が出来過ぎて目立たないだけだ。
暫く辺り調べるも、目立った戦利品は無かった。
念のため、ジャイアントウーズによる被害を調べてみたが、素人目では目立った被害は無いよう見えた。
取り込まれていた遺骸も殆どが動物の骨だったし、人間らしきものがなかった。
人が襲われる前に討伐出来たのは幸いだろうな。
細かい調査は後でギルドが専門業者を雇って行うって言ってたし、俺らのクエストはこれで終了で問題ないだろう。
「討伐を証明する素材と魔石も回収したし、町へ帰ろう」
「「「はい!」」」
3人の元気な返事を合図に、俺達は地下水道から町へ戻るのだった。
───
ウード達が地下水道を去った後、1組の男女がそこに現れた。
「やはりか。これは奴らの使う魔具だな。…まだこの町のどこかに潜んでいるかもしれない」
そこに現れたのは、ウード達が3年前に会った銀髪の青年ヴァレスと、一緒にいたマーレ。
二人はその魔具を回収して、その場を後にするのであった。
───
地下水道から出ると、エースがお座りして待っていた。
俺らを発見すると、尻尾をふりふりして嬉しさ全開にしていた。
最近はクレスが丁寧にブラッシングしているので前よりも毛艶が良くなり、ふわふわもふもふになっている。
クレスもエースの傍まで駆け寄り、ぎゅうっと抱きしめる。
うん、なんとも微笑ましい姿だ。
ひとしきりエースを撫でてから、おやつ代わりに干し肉をあげる。
涎を垂らしつつおねだりする姿は、狼と言うよりは犬に近いな。
『なんとも嘆かわしい姿よな。狼と言えば、元は神獣の眷属であろうに』
「そう言ってやるなよ。俺はエースのお陰で狩りが出来るようなもんなんだよ。こういう時は甘えさせてあげないとな」
クレスとエースの様子を眺めがら、ヘルメスと会話をしていると、マリアが不思議そうな顔で話掛けてきた。
「ウードさんって、たまにその蛇の魔獣とまるで話が通じているかのように話し掛けていません?」
「ん?そりゃあ、ヘルメスは言葉を話せるからな」
『…』
あれ、もしややっちまった?
でも、これから一緒に冒険するんだしいいよね?
『…はぁ、好きにするが良いわ』
「「えええええええっっ!!?」」
マリアとレイラが驚きの声を上げた。
あ、ちなみにクレスはこの事を知っているので、「あーあ」って顔でしょうがないなって顔で見ていた。
───
「というわけで、こちら神獣のヘルメスさんです」
「なんで、そんな大事な事を先に言わないんですか!!今まで、結構失礼な事を言っていた気が…」
「ウードさんって、そういう所あるよね…」
「まぁまぁ、お父さんも悪気があっての事じゃないからね。許してあげて、ね?」
マリアには怒られ、レイラには呆れられる始末。
クレスがなんとか宥めてくれるが、最初からこんな事をぺらぺらと話すわけにはいかないので、仕方のない事なのだ。
「まぁ、正式にパーティーを結成出来たら話そうとは思ってたんだよ。なんせ、あの山の神様みたいなもんだしさ…。勝手に連れて来たってバレたら大事だろう?」
「それはそうですよ!あの山の神様と言えば、この地を悪い神様から守っていたって有名な話があるくらいですよ?!…そういえば、数年前に社の管理者が亡くなってから、社が老朽化してどうするかって町長が頭を悩ませていたみたいですが…」
ぎくっ
「まさか。その神様がここに居るって事は…」
ぎくぎくっ
「社、壊しちゃったんですか!??」
「いやっ、すまない!あれは事故だったんだ。それに壊したんじゃなくて、壊れていたんだよ!」
珍しくマリアが興奮して詰め寄ってくる。
勢いに負けて、思わず謝ってしまう。
しかし、数年放置されてたとはいえ、なぜ社が無くなっていたんだ?
『それは、我が説明してやろう』
ヘルメスは、分身を通して皆に言葉を伝える事が出来る。
普段、本体である智慧の杖に触れている俺は言葉を発しなくても会話が出来る。
まぁ、ついつい癖で動いている分身の方を見て話してしまうのだけど。
『あの社は、我を祀っていたのではなく、我をあそこに封じ込める為にあったものでな…』
ヘルメスからこの話は俺も初めて聞く。
遥か昔に、あの山に傷を癒すためにやってきたヘルメスを従えていた神は、その身を休めるためにその地に結界を張り降り立ったのだという。
やがて、その身が癒されるとヘルメスを置いて天に還ってしまった。
残されたヘルメスは、まだ完全にその傷が癒えていなかったのでそのままその地で眠り続けていたのだが、ある時にヘルメス達を傷つけた者の手先がその土地の人間を利用して、ヘルメスを封印する建物を建てたのだという。
それから外に出る事が出来なくなったヘルメスは、長い時をずっとその地の底で眠り続けていた。
そんなある時、銀の星が2つ落ちた。
一つは、その社の上に。
もう一つは、山の向こうに森に。
そうして、暫くしてから二人の人間が現れ、その地の底から出る事が出来たという事だった。
「それって、俺とキールの事か?」
『そう言う事だ。長い事封印されていたせいで、魔力が枯渇していたからな。本当にあの時は危なかった。改めて礼を言うぞ、ウード』
「わぁ、じゃあ結果的にウードさん達はヘルメス様を助けた事になるんですね」
『娘よ、既に我はウードと契約せし従魔だ。様などいらぬ』
「じゃあ、私もマリアと呼んでくださいね。ヘルメスさんっ」
すっかりヘルメスを山の神だと信じ、打ち解けてしまうマリア。
レイラは話が長かったせいか欠伸をしているが、信じていない訳でもないようだ。
ただ、怖れることも無く「じゃあ、よろしくねヘルメス!」と軽い感じで挨拶していた。
「そんな凄い神様だったんだね、ヘルメスって」
『正確には我は神でなく、神獣と言われるものだ。まぁ、人間からしたら大した差ではないのかもしれないがな』
「ふふっ、そんな凄い神獣がお父さんを守ってくれていたんだね。ありがとうね!」
相変わらず、いい娘に育ったと思いながらもその銀色に輝く髪を眺め、先ほどの銀の星という言葉を思い出す俺だった。
「銀の星か…」
もしかしたら、俺は天から落ちてきた星の子を授かったかもしれないなと、柄にも無い事を思うのであった。
『全く、無茶をしおってからに』
いやいや、ヘルメスさん。
もとはと言えば、ヘルメスが任せろって言ったから前に出たのに。
仕留めれなかったからじゃないか。
『我は、一撃で倒せるとは一言も言ってないぞ?しかし、この娘たちは皆優秀な子達だな。一流の域に到達するのもそう遠くはあるまい』
勝手に思考を読まれた挙句に微妙に話を逸らされた気がするが、終わった事をいつまでも言っても仕方ないか。
そうだ!折角苦労して倒したんだし、何か良い物でも落ちてないだろうか。
クレス達は、周りに他の魔物が居ないかを警戒しつつも、ジャイアントウーズの残骸を調べている。
なんでも、あのプヨプヨした半透明な膜も何かの素材になるらしく、酸を洗い流して回収している。
なるほど、なんでも使えるんだな。
そう言えば、破裂した後に何かが落ちた音がした気がするな。
何か落ちているかな。
そう思って地面を照らしながら探すと、きらりと光るものを見つける。
「なんだこれ?」
「お父さん、何か見つけたの?」
俺が何かの変な顔が付いた像を拾い上げる。
なんかのお守りか、置物か?
「変な像を見つけたぞ」
「うわー、何それ。ちょっと気直悪いねウードさん」
レイラが俺の方を見てそう言うので、まるで俺が言われたような気分になる。
うん割れてしまっているし、こんなガラクタは捨てよう。
『ふむ、それは何かの魔具のようだな。だが、既に魔力が宿っていない所をみると、既に価値はないだろう』
ヘルメスもこう言っているのだし、もう使えないのであれば捨てといていいだろう。
そう考えて、ぽいっと捨てた。
「わぁ。これは凄いですね」
今度はマリアの声だ。
手にはこぶし大の大きな魔石を持っている。
「核の中にあった魔石のようです。流石、ジャイアントウーズともなれば魔石の大きさも規格外ですわ」
「わぁ~、こんな大きな魔石を初めて見たよ!キラキラして、綺麗だね」
「いいね~、これだけ大きければきっと高値で売れるんじゃない?」
マリアが拾い上げた魔石を見て、クレスもレイラも目を輝かせていた。
レイラは流石商家の娘だけあり、既にどのくらいの価値があるのかを頭の中で計算しているようだ。
ちなみに、レイラは少し大雑把な所があるが、決して頭の悪い子ではない。
商家の娘に育っただけあり、それなりの教養は備わっている。
他の二人が出来過ぎて目立たないだけだ。
暫く辺り調べるも、目立った戦利品は無かった。
念のため、ジャイアントウーズによる被害を調べてみたが、素人目では目立った被害は無いよう見えた。
取り込まれていた遺骸も殆どが動物の骨だったし、人間らしきものがなかった。
人が襲われる前に討伐出来たのは幸いだろうな。
細かい調査は後でギルドが専門業者を雇って行うって言ってたし、俺らのクエストはこれで終了で問題ないだろう。
「討伐を証明する素材と魔石も回収したし、町へ帰ろう」
「「「はい!」」」
3人の元気な返事を合図に、俺達は地下水道から町へ戻るのだった。
───
ウード達が地下水道を去った後、1組の男女がそこに現れた。
「やはりか。これは奴らの使う魔具だな。…まだこの町のどこかに潜んでいるかもしれない」
そこに現れたのは、ウード達が3年前に会った銀髪の青年ヴァレスと、一緒にいたマーレ。
二人はその魔具を回収して、その場を後にするのであった。
───
地下水道から出ると、エースがお座りして待っていた。
俺らを発見すると、尻尾をふりふりして嬉しさ全開にしていた。
最近はクレスが丁寧にブラッシングしているので前よりも毛艶が良くなり、ふわふわもふもふになっている。
クレスもエースの傍まで駆け寄り、ぎゅうっと抱きしめる。
うん、なんとも微笑ましい姿だ。
ひとしきりエースを撫でてから、おやつ代わりに干し肉をあげる。
涎を垂らしつつおねだりする姿は、狼と言うよりは犬に近いな。
『なんとも嘆かわしい姿よな。狼と言えば、元は神獣の眷属であろうに』
「そう言ってやるなよ。俺はエースのお陰で狩りが出来るようなもんなんだよ。こういう時は甘えさせてあげないとな」
クレスとエースの様子を眺めがら、ヘルメスと会話をしていると、マリアが不思議そうな顔で話掛けてきた。
「ウードさんって、たまにその蛇の魔獣とまるで話が通じているかのように話し掛けていません?」
「ん?そりゃあ、ヘルメスは言葉を話せるからな」
『…』
あれ、もしややっちまった?
でも、これから一緒に冒険するんだしいいよね?
『…はぁ、好きにするが良いわ』
「「えええええええっっ!!?」」
マリアとレイラが驚きの声を上げた。
あ、ちなみにクレスはこの事を知っているので、「あーあ」って顔でしょうがないなって顔で見ていた。
───
「というわけで、こちら神獣のヘルメスさんです」
「なんで、そんな大事な事を先に言わないんですか!!今まで、結構失礼な事を言っていた気が…」
「ウードさんって、そういう所あるよね…」
「まぁまぁ、お父さんも悪気があっての事じゃないからね。許してあげて、ね?」
マリアには怒られ、レイラには呆れられる始末。
クレスがなんとか宥めてくれるが、最初からこんな事をぺらぺらと話すわけにはいかないので、仕方のない事なのだ。
「まぁ、正式にパーティーを結成出来たら話そうとは思ってたんだよ。なんせ、あの山の神様みたいなもんだしさ…。勝手に連れて来たってバレたら大事だろう?」
「それはそうですよ!あの山の神様と言えば、この地を悪い神様から守っていたって有名な話があるくらいですよ?!…そういえば、数年前に社の管理者が亡くなってから、社が老朽化してどうするかって町長が頭を悩ませていたみたいですが…」
ぎくっ
「まさか。その神様がここに居るって事は…」
ぎくぎくっ
「社、壊しちゃったんですか!??」
「いやっ、すまない!あれは事故だったんだ。それに壊したんじゃなくて、壊れていたんだよ!」
珍しくマリアが興奮して詰め寄ってくる。
勢いに負けて、思わず謝ってしまう。
しかし、数年放置されてたとはいえ、なぜ社が無くなっていたんだ?
『それは、我が説明してやろう』
ヘルメスは、分身を通して皆に言葉を伝える事が出来る。
普段、本体である智慧の杖に触れている俺は言葉を発しなくても会話が出来る。
まぁ、ついつい癖で動いている分身の方を見て話してしまうのだけど。
『あの社は、我を祀っていたのではなく、我をあそこに封じ込める為にあったものでな…』
ヘルメスからこの話は俺も初めて聞く。
遥か昔に、あの山に傷を癒すためにやってきたヘルメスを従えていた神は、その身を休めるためにその地に結界を張り降り立ったのだという。
やがて、その身が癒されるとヘルメスを置いて天に還ってしまった。
残されたヘルメスは、まだ完全にその傷が癒えていなかったのでそのままその地で眠り続けていたのだが、ある時にヘルメス達を傷つけた者の手先がその土地の人間を利用して、ヘルメスを封印する建物を建てたのだという。
それから外に出る事が出来なくなったヘルメスは、長い時をずっとその地の底で眠り続けていた。
そんなある時、銀の星が2つ落ちた。
一つは、その社の上に。
もう一つは、山の向こうに森に。
そうして、暫くしてから二人の人間が現れ、その地の底から出る事が出来たという事だった。
「それって、俺とキールの事か?」
『そう言う事だ。長い事封印されていたせいで、魔力が枯渇していたからな。本当にあの時は危なかった。改めて礼を言うぞ、ウード』
「わぁ、じゃあ結果的にウードさん達はヘルメス様を助けた事になるんですね」
『娘よ、既に我はウードと契約せし従魔だ。様などいらぬ』
「じゃあ、私もマリアと呼んでくださいね。ヘルメスさんっ」
すっかりヘルメスを山の神だと信じ、打ち解けてしまうマリア。
レイラは話が長かったせいか欠伸をしているが、信じていない訳でもないようだ。
ただ、怖れることも無く「じゃあ、よろしくねヘルメス!」と軽い感じで挨拶していた。
「そんな凄い神様だったんだね、ヘルメスって」
『正確には我は神でなく、神獣と言われるものだ。まぁ、人間からしたら大した差ではないのかもしれないがな』
「ふふっ、そんな凄い神獣がお父さんを守ってくれていたんだね。ありがとうね!」
相変わらず、いい娘に育ったと思いながらもその銀色に輝く髪を眺め、先ほどの銀の星という言葉を思い出す俺だった。
「銀の星か…」
もしかしたら、俺は天から落ちてきた星の子を授かったかもしれないなと、柄にも無い事を思うのであった。