~プロローグ~
可憐な少女が七色のオーラを纏い、神々しい光を放つ剣を片手に巨大な魔人を相手を一歩も引かず、いや圧倒しながら戦っている。
そんな中、場にそぐわない中年のおっさんが一人戦闘について行けずにへばっている。
こんな戦火の中で、そんな状態で無事なのが不思議なくらいだが、それは彼にそばにいる大型の魔獣が護っているのが答えになるだろう。
「お父さん!大丈夫?!」
「クレス、お父さんは、もうダメだ…」
「もう!だからついてきちゃダメって言ったのに!リーヴァ、お父さんを頼んだわよ!」
少女はそう言うと、颯爽と戦場に戻っていく。
「フェーン!一緒に来て!あの魔人を倒すわよ!」
少女は月の色をした毛を持つ大きな狼のような魔獣の背中に飛び乗る。
フェーンと呼ばれた魔獣は、ウォオオオオオオオン!!と空気が震えるほどの遠吠えをあげて少女を乗せたまま魔人に飛び掛かっていった。
そして、数分後この魔人は少女と魔獣達によって斃される。
この物語は、この可憐に戦場を駆け巡る少女の話…
ではなく、この少女と一緒にいたおっさんを中心に語られる物語である。
少女とこのおっさんが何者なのか、それは今から十数年前のある出来事から始まるのだった。
~~~
───時は14年前に遡る
「はぁ、今日も大した収穫ねぇなぁ。お前たちの餌分くらいしかないよ」
村の外れにある森の中で狩猟を行っていたウードは、今日の収穫の少なさに嘆いていた。
いや、今日だけじゃない。
ここ三日で収穫したのは、森の木の実以外はウサギ一匹だけだった。
「最近やたら獲物が減っているよな。まだ冬前だっていうのにこんなに見かけないなんて…いやいや、変な事は考えるもんじゃないな」
ウードは嫌な事を思い浮かべるのは止めておいた。
大抵嫌な予感というのは、根拠もなしにあたったりするからだ。
ウードは、もうすぐ30歳になる村人だ。
若い時に幼馴染と結婚したのだが、彼女は病弱で若くして数年前に亡くなった。
その為、子供を儲ける事もなく今は独身だ。
村に彼の年齢に合う女性はいないので再婚の話はなく、もはや彼自身も諦めている。
村の外に出れば良い出会いもあるかもしれないが、魔法も剣も使えない彼では街に出て冒険者になる事も出来ないだろう。
唯一得意な弓も、本当の素質がある者から見れば剣よりはマシくらいの評価なので、その程度では誰も相手にしてくれない。
商才があるわけでもなし。
コネもなし。
それでは、外の世界に出ても暮らすことが難しいだろうと早々に諦めた。
ただひとつ、彼には特殊な能力があった。
自慢出来る程ではないが、とても動物に懐かれやすい事だ。
能力というには些か弱い気もするが、世の中には魔獣すら仲間にしてしまう者がいるらしいし、それを鍛えれば俺も・・・と考えた事もあったが、彼の場合対峙して生き残る気がしないので、そんな大層なものを手なづけれるとは思えなかった。
ただ野生の羊や馬や犬など、家畜として有能な動物を捕まえてくる事が出来るので、それらを捕まえては売る事で裕福な生活といかないまでも、貧乏暮らしという程でも無かったのは幸いだ。
なので今日のように獲物が取れなくても、しばらく食うに困るという事はないのだが…。
「村にはお店が無いからなぁ、肉は自分で捕らないと食べれないのが不便だよな」
というわけだ。
そんなわけで、今日はいつもよりも少し奥に入っていた。
彼一人ならそんなとこまで入らないのだが、彼には相棒の狼がいた。
さすがに熊とか出たら逃げないといけないだろうが、それ以外の動物であれば、連れてる狼の方が強いのでかなり重宝している。
他にも家には牛や豚などの家畜や、それを見守る犬や、荷物を運ぶための馬など様々の動物たちが居る。
もちろん、販売用も兼ねている。
木の実や山菜なども半分は家畜用の餌となる。
「よし、キッド。獲物を見つけたら教えてくれよな」
キッドと名付けた狼は、賢くも周りに警戒されない程度に小さくウォンッと返事した。
キッドと一緒に、藪の中に入り1時間程した頃だった。
キッドが何を見つけたようだ。
獲物を見つけたのかと思い、慎重に移動する。
彼が注意を促している方に目を向けると、そこには見たことも無い大きな鳥が横たわっていた。
「なんだあれ…。もう虫の息ってやつか…しかし、デカイなぁ。」
あのくらいの大きさななら、かなりの肉が取れそうだ。
やっほう、久々にたらふく食えるぞ!
…いや、そもそもあんな大きな鳥をどうやって運ぶんだ?
とか一人考え込んでいると、鳥が守る様にして抱え込んでいる荷物が見えた。
「あれ、あの鳥は…。もしやガルーダか?」
ガルーダとは、荷物や人を運ぶのに使う大型の鳥だ。
比較的温厚のため、街では多くの商人が飼っているらしいが俺は街には滅多に行かないので(家畜の販売の時は受け取る業者が村に来る)こんな間近で見るのは始めてた。
「そうだとしたら、荷物を運ぶ途中で落ちちゃったのかな?でも、可哀そうだけどあの怪我じゃ助からないだろうなぁ」
俺は意を決して、ガルーダに近づいてみる事にした。
一応自分の能力であれば、警戒されることは少ないだろうと踏んでの事だ。
ダメだったらダッシュで逃げる!と情けない決意をしつつ、慎重にゆっくりと近づいた。
だが簡単に期待が裏切られた。
俺を見つけるなり、血だらけの折れた翼を広げて威嚇してきた。
えー、マジかよ。
でも凄い殺気だっているなぁ。
そして今にも飛び掛かってきそうな時だった。
ウォン!
キッドが前に出て、ガルーダに飛び掛かった。
相手が大型とはいえ、キッドから見れば獲物に見えるらしい。
寸分たがわず、急所の首に見事食いつき仕留める事に成功したようだ。
「おお、よくやったぞキッド!今夜は鳥鍋だなぁ。」
そんな呑気な事を考えて仕留めたガルーダに近づいた。
首らからあふれ出す返り血を浴びてしっぽぶんぶんのキッド。
よしよし、エライぞ。でもあんまり今はすりすりしないでね血が付くからね。
とりあえず持ってた手拭いで口元を綺麗にしてやり、ある程度は綺麗にしてあげた。
ついでにナデナデしておく。
うん、今日もいいさわり心地だ。
さて、肝心のガルーダだが。変な事に、所有者を表すタグがついてなかった。
野生という事はまずないだろうが…、何かに襲われて外れてしまったのだろうか?
周りにもそれらしきものは落ちてないし。
そういえばと、ガルーダが抱えていた袋を取り外す。
中に何が入っているんだろうと覗いて見ると…。
中には結構な量の物品が入っていた。
しかし、心なしか子供用の物が多い気がするな。
「なんだろう。子供への贈り物とかだったのかな?」
その他詳しく確認するも、送り主も送り先も示すものは見当たらなかった。
「ま、いっか。これは預かっておいて村に探しに来たら返してあげよう。それよりも…」
ま、ガルーダは既に死んでいたことにしとこう。
どっちにしろ、あのままでも死んでいただろうしな。
そう考えて、血抜きと羽抜きを始めようとしたとき。
ガサガサッ!
後ろの藪から急に草をかき分ける音がする。
やばい、血の匂いを嗅ぎつけて獣が集まってしまったか?
「あ〜、う~…?ぱーぱ?」
しかし現れたのは、2歳くらいの幼児だった。
これがウードと少女の出会いであった。
可憐な少女が七色のオーラを纏い、神々しい光を放つ剣を片手に巨大な魔人を相手を一歩も引かず、いや圧倒しながら戦っている。
そんな中、場にそぐわない中年のおっさんが一人戦闘について行けずにへばっている。
こんな戦火の中で、そんな状態で無事なのが不思議なくらいだが、それは彼にそばにいる大型の魔獣が護っているのが答えになるだろう。
「お父さん!大丈夫?!」
「クレス、お父さんは、もうダメだ…」
「もう!だからついてきちゃダメって言ったのに!リーヴァ、お父さんを頼んだわよ!」
少女はそう言うと、颯爽と戦場に戻っていく。
「フェーン!一緒に来て!あの魔人を倒すわよ!」
少女は月の色をした毛を持つ大きな狼のような魔獣の背中に飛び乗る。
フェーンと呼ばれた魔獣は、ウォオオオオオオオン!!と空気が震えるほどの遠吠えをあげて少女を乗せたまま魔人に飛び掛かっていった。
そして、数分後この魔人は少女と魔獣達によって斃される。
この物語は、この可憐に戦場を駆け巡る少女の話…
ではなく、この少女と一緒にいたおっさんを中心に語られる物語である。
少女とこのおっさんが何者なのか、それは今から十数年前のある出来事から始まるのだった。
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───時は14年前に遡る
「はぁ、今日も大した収穫ねぇなぁ。お前たちの餌分くらいしかないよ」
村の外れにある森の中で狩猟を行っていたウードは、今日の収穫の少なさに嘆いていた。
いや、今日だけじゃない。
ここ三日で収穫したのは、森の木の実以外はウサギ一匹だけだった。
「最近やたら獲物が減っているよな。まだ冬前だっていうのにこんなに見かけないなんて…いやいや、変な事は考えるもんじゃないな」
ウードは嫌な事を思い浮かべるのは止めておいた。
大抵嫌な予感というのは、根拠もなしにあたったりするからだ。
ウードは、もうすぐ30歳になる村人だ。
若い時に幼馴染と結婚したのだが、彼女は病弱で若くして数年前に亡くなった。
その為、子供を儲ける事もなく今は独身だ。
村に彼の年齢に合う女性はいないので再婚の話はなく、もはや彼自身も諦めている。
村の外に出れば良い出会いもあるかもしれないが、魔法も剣も使えない彼では街に出て冒険者になる事も出来ないだろう。
唯一得意な弓も、本当の素質がある者から見れば剣よりはマシくらいの評価なので、その程度では誰も相手にしてくれない。
商才があるわけでもなし。
コネもなし。
それでは、外の世界に出ても暮らすことが難しいだろうと早々に諦めた。
ただひとつ、彼には特殊な能力があった。
自慢出来る程ではないが、とても動物に懐かれやすい事だ。
能力というには些か弱い気もするが、世の中には魔獣すら仲間にしてしまう者がいるらしいし、それを鍛えれば俺も・・・と考えた事もあったが、彼の場合対峙して生き残る気がしないので、そんな大層なものを手なづけれるとは思えなかった。
ただ野生の羊や馬や犬など、家畜として有能な動物を捕まえてくる事が出来るので、それらを捕まえては売る事で裕福な生活といかないまでも、貧乏暮らしという程でも無かったのは幸いだ。
なので今日のように獲物が取れなくても、しばらく食うに困るという事はないのだが…。
「村にはお店が無いからなぁ、肉は自分で捕らないと食べれないのが不便だよな」
というわけだ。
そんなわけで、今日はいつもよりも少し奥に入っていた。
彼一人ならそんなとこまで入らないのだが、彼には相棒の狼がいた。
さすがに熊とか出たら逃げないといけないだろうが、それ以外の動物であれば、連れてる狼の方が強いのでかなり重宝している。
他にも家には牛や豚などの家畜や、それを見守る犬や、荷物を運ぶための馬など様々の動物たちが居る。
もちろん、販売用も兼ねている。
木の実や山菜なども半分は家畜用の餌となる。
「よし、キッド。獲物を見つけたら教えてくれよな」
キッドと名付けた狼は、賢くも周りに警戒されない程度に小さくウォンッと返事した。
キッドと一緒に、藪の中に入り1時間程した頃だった。
キッドが何を見つけたようだ。
獲物を見つけたのかと思い、慎重に移動する。
彼が注意を促している方に目を向けると、そこには見たことも無い大きな鳥が横たわっていた。
「なんだあれ…。もう虫の息ってやつか…しかし、デカイなぁ。」
あのくらいの大きさななら、かなりの肉が取れそうだ。
やっほう、久々にたらふく食えるぞ!
…いや、そもそもあんな大きな鳥をどうやって運ぶんだ?
とか一人考え込んでいると、鳥が守る様にして抱え込んでいる荷物が見えた。
「あれ、あの鳥は…。もしやガルーダか?」
ガルーダとは、荷物や人を運ぶのに使う大型の鳥だ。
比較的温厚のため、街では多くの商人が飼っているらしいが俺は街には滅多に行かないので(家畜の販売の時は受け取る業者が村に来る)こんな間近で見るのは始めてた。
「そうだとしたら、荷物を運ぶ途中で落ちちゃったのかな?でも、可哀そうだけどあの怪我じゃ助からないだろうなぁ」
俺は意を決して、ガルーダに近づいてみる事にした。
一応自分の能力であれば、警戒されることは少ないだろうと踏んでの事だ。
ダメだったらダッシュで逃げる!と情けない決意をしつつ、慎重にゆっくりと近づいた。
だが簡単に期待が裏切られた。
俺を見つけるなり、血だらけの折れた翼を広げて威嚇してきた。
えー、マジかよ。
でも凄い殺気だっているなぁ。
そして今にも飛び掛かってきそうな時だった。
ウォン!
キッドが前に出て、ガルーダに飛び掛かった。
相手が大型とはいえ、キッドから見れば獲物に見えるらしい。
寸分たがわず、急所の首に見事食いつき仕留める事に成功したようだ。
「おお、よくやったぞキッド!今夜は鳥鍋だなぁ。」
そんな呑気な事を考えて仕留めたガルーダに近づいた。
首らからあふれ出す返り血を浴びてしっぽぶんぶんのキッド。
よしよし、エライぞ。でもあんまり今はすりすりしないでね血が付くからね。
とりあえず持ってた手拭いで口元を綺麗にしてやり、ある程度は綺麗にしてあげた。
ついでにナデナデしておく。
うん、今日もいいさわり心地だ。
さて、肝心のガルーダだが。変な事に、所有者を表すタグがついてなかった。
野生という事はまずないだろうが…、何かに襲われて外れてしまったのだろうか?
周りにもそれらしきものは落ちてないし。
そういえばと、ガルーダが抱えていた袋を取り外す。
中に何が入っているんだろうと覗いて見ると…。
中には結構な量の物品が入っていた。
しかし、心なしか子供用の物が多い気がするな。
「なんだろう。子供への贈り物とかだったのかな?」
その他詳しく確認するも、送り主も送り先も示すものは見当たらなかった。
「ま、いっか。これは預かっておいて村に探しに来たら返してあげよう。それよりも…」
ま、ガルーダは既に死んでいたことにしとこう。
どっちにしろ、あのままでも死んでいただろうしな。
そう考えて、血抜きと羽抜きを始めようとしたとき。
ガサガサッ!
後ろの藪から急に草をかき分ける音がする。
やばい、血の匂いを嗅ぎつけて獣が集まってしまったか?
「あ〜、う~…?ぱーぱ?」
しかし現れたのは、2歳くらいの幼児だった。
これがウードと少女の出会いであった。