言えないわけではない私は、ゆっくりと、心の中の言葉たちをかたちづくる。

「……親友と、ケンカしちゃって」

「うん」

「……この前、大学で庇ってくれたときのこと、前の日に親友に相談してたの」

「ああ、あのこと」

「そしたら、……いいね。楽しい大学生活みたいで、って言われて」

「えっ」

「大学、同じとこ行こうねって受験して、私だけ受かって。私より親友のほうが進みたい大学だったのに……それなのに、誰かに告白されたとか傷ついたとか……」

「そんなの僻みじゃ」

「違うよ。そんな子じゃない。ただ……誰にでもあるよね。違うって、解ってても生まれてきてしまう感情とか、どうしようもない気持ちが。普段は心の中に仕舞っておける"それ"なのに、弱ってるときに出てしまうことだってある。――あの日、思い返してみたら、あの子少し疲れた顔してた。なのに私は自分の話したいことだけ話して……気まずくなって私を残して電車から飛び出してったとき、後悔してる顔してた」

「そんだけ解ってて、仲直りは難しい? ああ、でもそんなもんかもね」

「……私、弱くって。本当ダメだね。勝手な相談だけしちゃった。色々気づいてあげられなかった。望んでた人を押しやって行った大学なのにそんなことで悩んじゃった。……頑張らなきゃいけないのにって、思えば思うほど、足が動かなくなって。待ち合わせして通学してた電車を避けて、こうやって山手線乗ってぐるぐる回ったまま堂々巡り」