「私と違って友達多そうなのに、あんまり遊びに行かないんだね」
もしかして私のせいだったらと震える喉の奥は、どうか彼に悟られていませんように。
「バイトあるし」
「私も探さないと」
「家の近くでだっけ?」
数日前に話したことを彼は律儀に覚えていてくれ、視線を宙にさ迷わせ逡巡したあと、ふいに疑問を投げかけてきた。
「佐伯さんって、なんで山手線に乗ってんの? 普通中央線使うだろ」
「……大野くんは……」
「なんか、佐伯さんとの流れで?」
「……」
彼の眉間が僅かに歪む。きっと私がよほど変な表情を浮かべていたに違いない……上手く笑えていなかった自覚は、ある。
しばらく時間が経っても私の言葉を待ってくれる彼はとても穏やかで、色々と遅く苛つかれることが多くある私にとっては充分過ぎる優しさだった。
一度、何故そんなに我慢強いのかと恐る恐る訊ねてみれば、そんなことはないと返してくれて。そのときの彼の表情は、自分はズルいと言っていたときと同じものだった。
……確かに、ズルい、かもしれない。
こんなに優しいと甘えてしまう。