「正しくありたいっていう姿勢が、いいなって思った。辛いことも増えるのに。それを、あの隣にいつも座ってる親友だけじゃなくて、オレにも力にならせてほしいとか考えたり」

「ただの、いい人ぶりたいだけな子なのかも……」

「それなら、見て見ぬふり、言わざる聞かざるのほうがよっぽどそう出来るよ。――そんな子のことが気になって、助けになりたいと思って、タイミング狙ったりわざわざ友達のとこ行く日増やしたり。……電車変えたのも心配になった。あんな男のこと引きずってないか心配だったし不安だった。強引に知り合って、一緒に時間を過ごして……結局それは、オレがしたいからであって、相手の気持ちは図れてなかったんだけど。……――、佐伯さん」

「はいっ」

真剣な声色で名前を呼ばれ、思わず私は背筋を伸ばす。

「佐伯さんの、ありがとうで返してくれるとこも、好きだ。色々見てきて好きになったのか、好きだから良く思えるのか、そんなのもうわかんないんだけど、気持ちを疑うことは、どうかしないでほしい。……これ以上は押しつけたり嘘つかないから」

「押しつけってそんなこと……」

「言えないようなことも望んでるしね」

「っ」

「だから、ゆっくりで構わないから、一緒に過ごして、知っていってもらいたい。考えて考えて、佐伯さんの気持ちとオレのが、いつか交わうときがあったら、いいなって、思ってます。急いだ関係でなくていいんだ。ゆっくりと、長い時間を作っていける相手でありたいです」