「っ、なんでっ」
痛みは、彼が持っていってしまっていた。私を庇うように身体を使って自身が挟まれ、衝撃から守ってくれていた。
顔をしかめる彼は、異物を検知して開いた扉を確認し、そうして伸ばされたままだった私の腕を掴み二人して車外へと飛び出したのだった。
「早くっ」
「えっ?」
「あの子だろっ、佐伯さんの親友って!」
どうしてわかったのだろう。訊ねることも出来ないまま引っ張られ、彼はあっという間に逃げ出そうとした親友のことも捕らえてしまった。その間僅か数秒のこと。
満足そうに微笑む彼は、私と親友を右と左の手でそれぞれ捕まえたあと、ホームの端のほうにあるベンチに座らせ、飲み物でも買ってくるとその場を走り去ってしまった。