帰りを待ち合わせてはいなかった。高校時代みたいに行動パターンが重なることは、少なくなってしまったから。

帰宅時間が一緒になることはあまりなく、今日だってそんな運良く居るわけがない。

なのに、私の目は親友の姿を駅のホームで探してしまう。

「…………ぁっ」

けれど、運命みたいに、親友の姿はホームにあった。規則正しく並ぶ列の中、その最後のほうに立っていて。

電車は完全に停車をした。運命的に、親友の立っている列に、私の乗る車両と扉がやってくる。

俯きスマートフォンを操作している親友は、少し会わない間にその装いにいつものカーディガンがなくなっていて、たった少しの間のことなのに、ほんの僅かな変化に大きな時間の経過を感じてしまった。

電車の扉が開き降りていく人たちの次に、ホームから車内へと人が流れ込んでくる。

緊張していた私は、扉付近から動くことが出来ず親友のことを凝視する。

やがて顔を上げた親友が車内に目を向け、見知った私が乗っていたことに気づき、同時に踵を返そうとした。

「鈴ちゃんっ、待っ……!」

車外に向かって伸ばした私の腕は、そのとき閉まろうとする電車の扉に挟まれようとしていた。

それでもいい。伸ばしてこのときを逃さないでいられるのなら構わないと思った。

やってくるであろう痛みに備えるように身を構え、衝撃が終わったら外に飛び出そうと決心する――けれど、私に痛みは微塵も訪れなかった。