話を聞いてくれて嬉しかった。
おかしくないと言ってくれたことも。
早すぎるようにも感じる決心の実行を、また石像になりかける足が阻止しようとしてきたけれど、それを砕いてくれた人がいた。
「行くよ」
「えっ」
「お供しますよ」
砕いてくれたのは、もちろん彼で。
こちらの負担にならないライン見極め少し強引に心配をしてくれる姿は、言葉と重なり、まるで完全無欠の騎士みたいだった。
……こんな恥ずかしい思考、誰にも秘密だけれど。
気づいたら、いつの間にか騎士に手を引かれホームの階段を降りていた。そうして本来の最短ルートである私鉄乗り場へと向かう。どうやら本当に彼は同行してくれるみたいで。
けれど、まだ勇気を出しきれない私にとって、それはとても心強かった。
私鉄に無事乗り込むと、こちらは山手線みたいに空席はなく、彼と私は扉の近くで立つ。
親友が通う大学は、私の降車駅よりも三つ前で、必然彼女のほうが朝は先に降りる。一緒に通っていたとき、いつも私は車内から手を振っていたのが朝の恒例だった。
もうすぐ、その駅に到着する。
「……」
「ん、どうした?」
緊張して見上げた先の彼はずっとそうしていたのか私を見ていて、視線はすぐに気づかれてしまった。
慌てて外の景色を見つめなおしていると、電車のスピードがだんだんゆっくりとなっていき、ホームや人の様子が鮮明となっていく。