「巫女と婚姻すれば、巫女の澄んだ神気(しんき)がお前の穢れを和らげ、力も多少なりとも戻ろう。そして、人間を助けていくうちに芽生える心もあると、私は願っている」

「俺は人間の道具になり下がる気はありませんよ」

「長の命令は絶対だ」

有無を言わさない一声に、俺は黙らざるを得なくなる。長の命は絶対、それは龍神の世界の掟(おきて)のひとつだ。逆らえば重罪を犯したとして、即消滅させられる可能性も無きにしも非(あら)ず。だからって、人間の女と婚姻だ? どんな拷問だよ……。

「今の地上には、かの有名な白(しら)拍子(びょうし)の生まれ変わりもいるようだ」

長の言う白拍子とは、恐らく静御前(しずかごぜん)のことだろう。その舞で人間だけでなく神をも癒やしたとされる特別神気の強い舞い手。何度か天界から目にしたことはあったが、そうか……あれもついに死んだか。人間の一生ってのは、本当にあっという間だな。