「一刻も早く、奉り神を迎える必要があったんじゃ。そんなときに龍神の長様がわしの夢に現れてのう。今日巫女と龍神様が神社を訪れるから、婚姻の儀の準備をしておくようにと」

つまり私は、龍神の長様を始め吉綱さんにもはめられたらしい。たぶん、私に舞を舞わせた静御前もグルなんだろう。

「……事情はわかりました。けど、なにも言わずに婚姻させるのは不公平です!」

「もしてめえに事情を懇切丁寧に説明したとして、てめえはすんなり『はいそうですか』って首を縦に振ったか?」

龍神様の物言いには呆(あき)れが滲(にじ)んでいる。

「それは……」

間違いなく巫女になる話は辞退していただろう。だって婚姻とか……無理でしょう。

「ほれみろ、納得できねえだろ。俺は早く天界に帰りてえ、そのためには龍宮神社に神のご利益があると人間たちに実感させ、信仰を取り戻さねえとならねえ」

「じゃ、じゃあ期間限定ってことですか?」

「当たり前だろうが。でなきゃ、誰が好き好んで人間の女なんかを妻にするか」

……棘(とげ)のある言い方だな。こっちだって、神様なんて恋愛対象外だし!

「いいか? 俺はいろいろあって神力が弱まってる。てめえとの婚姻で多少は戻ったが、それでもまだ足らねえ」

「しんりき?」

「神の力のことをそう呼ぶんだよ。つーことで、てめえはその舞で俺の力を高め、俺が天界に戻れるように、馬車馬のように働くんだな」

ふんっと鼻で笑う、鬼畜なドS神様。

「なっ……」

──拝啓お父さん、お母さん、静紀は予想だにしていない形で、このたび嫁に行くこととなりました。敬具。



数日後、私は龍宮神社に引っ越してきた。

吉綱さんなりのお詫(わ)びらしく、三食付きで神社の母屋に家賃タダで住まわせてもらえることになったのだ。至れり尽くせり……なのが逆に怖い。

そんなこんなで、ちょうど更新月(こうしんづき)が近かったこともあり、借りていたマンションの部屋を急いで引き払ったのでバタバタだ。