「先ほどの舞は、舞と呼べるほどの出来ではなかったが、初めて舞ったにしては上出来。お前は私の生まれ変わりなのだから、舞もすぐに習得できよう」
「えっ……私が、静御前の……?」
でも、だからなの? 知らないはずの言葉を知っていたのも、知らないはずの舞を踊れたのも、今朝あんな夢を見たのも──。
「私は転生するはずだったんだが、魂の一部……欠片が地上に残ってしまってな」
静御前はとんっと指先で私の胸を叩(たた)いた。
「理由はなんとなく察してはいるが……いや、この話はいい。言っていて情けなくなるからな。とにもかくにも、私はずっと、自分の未来を……お前を待っていた」
向けられたのは、愛しいものを眺める眼差しだった。見守られてる、そんなふうに感じて、私は返す言葉が見つからない。
「私のお膳立てはここまでだ、あとはうまくやるのだぞ、静紀」
それだけ言い残して歩き出した静御前は、すうっと空気に解けるように姿を消してしまった。
「静御前!?」
どこに行ったのかと私がキョロキョロしていると、ガシッと龍神様に腕を掴まれた。いや、捕獲された?
「じじい、準備はできてんだろうな?」
「ええ、それはもう」
なんの準備? 私をそっちのけで話しているふたりを見て、これからなにが起こるのだろうと恐怖していると、吉綱さんが私に向き直り、その場に土下座する。
「どうかこの通りじゃ!」
「吉綱さん!?」
「古代から巫女は舞──神楽によって神様に人々の願いを届け、その恩恵を地上にもたらしてきたんじゃが……。時が経つと共に、神様の存在を信じる者も減り、霊力のある巫女がいなくなっていってしまったんじゃ。今では神様のご利益がある神社はないに等しい。参拝客も来なくなって、もう、もうっ……、死活問題なんじゃ!」
およよ、と泣き出した吉綱さんは、縋(すが)るような目で私を見上げてくる。
「えっ……私が、静御前の……?」
でも、だからなの? 知らないはずの言葉を知っていたのも、知らないはずの舞を踊れたのも、今朝あんな夢を見たのも──。
「私は転生するはずだったんだが、魂の一部……欠片が地上に残ってしまってな」
静御前はとんっと指先で私の胸を叩(たた)いた。
「理由はなんとなく察してはいるが……いや、この話はいい。言っていて情けなくなるからな。とにもかくにも、私はずっと、自分の未来を……お前を待っていた」
向けられたのは、愛しいものを眺める眼差しだった。見守られてる、そんなふうに感じて、私は返す言葉が見つからない。
「私のお膳立てはここまでだ、あとはうまくやるのだぞ、静紀」
それだけ言い残して歩き出した静御前は、すうっと空気に解けるように姿を消してしまった。
「静御前!?」
どこに行ったのかと私がキョロキョロしていると、ガシッと龍神様に腕を掴まれた。いや、捕獲された?
「じじい、準備はできてんだろうな?」
「ええ、それはもう」
なんの準備? 私をそっちのけで話しているふたりを見て、これからなにが起こるのだろうと恐怖していると、吉綱さんが私に向き直り、その場に土下座する。
「どうかこの通りじゃ!」
「吉綱さん!?」
「古代から巫女は舞──神楽によって神様に人々の願いを届け、その恩恵を地上にもたらしてきたんじゃが……。時が経つと共に、神様の存在を信じる者も減り、霊力のある巫女がいなくなっていってしまったんじゃ。今では神様のご利益がある神社はないに等しい。参拝客も来なくなって、もう、もうっ……、死活問題なんじゃ!」
およよ、と泣き出した吉綱さんは、縋(すが)るような目で私を見上げてくる。