翌日、俺はシルヴィの父親に呼び出された。部屋に入るとシルヴィの父親、ゼオンがタバコを吸いながらふんぞり返っていた。その姿にはどこか威厳を感じる。

「ふぅ、さてエルビス君、君、村の中で魔法禁止な。まぁ具体的に何かを制限するということはできないが‥‥というかそんな制限掛けたら私がそんな事したらシルヴィに怒られてしまう。でもな、絶対にお前に娘はやらん! 娘はしっかり貴族の人間と結婚して幸せに生きてもらう! 運命神なんかしらん!」

シルヴィが俺にガンガン突っ込んでくるのを見て不安にでもなたのだろうか?6歳児の話をそんなに真に受けてガチで対抗すんなよ。あほらしいな

「そりゃそうでしょう。貴族の娘さんと一般的な村人釣り合うわけ無いですよ!」

 ゼオンがうるさいのでゼオンの話に乗っておく。するとゼオンは満足げにうなずいた。

「わかっているではないか。貴様に免じて娘への無礼な態度は許しているが、結婚までは許さん! 魔法が使えると聞いて若干焦ったがお前が弁えているなら良い」

ゼオンは帰って良いと言わんばかりに手をヒラヒラと振ってきた。俺はそのまま外をに出ると、シルヴィが戸の前に悲しそうな顔をしながら立っていた。

「エルビス・・・・私のこと嫌いなの?」

泣きそうな瞳と、か細い震えた声が罪悪感で自殺したくなるようなダメージを与えてくる。まぁ精神ダメージ完全無効ですぐにそんな気持ちも消えた。でもフォローは入れておこう。

「いやゼオンさんがうるさいから、あんなふうに言っただけさ!僕はシルヴィが好きだよ!」

唐突にシルヴィが俺の手を取った。

「じゃあ、家の裏山に行って、魔法の練習しよ? 将来は一緒に魔法使いになるの!」

「いや、俺カインさんに説教されてカインさんがいるところじゃ無いと魔法使ちゃダメって言われたんだよね」

「じゃあ、カインさんも連れていけばいいんでしょ?」

そう言って俺を引っ張り裏山へ行く。だが先程シルヴィの父親と約束したばかりだ。その約束を一瞬で破るのはどうなんだ? と考えたがゼオンさんは村の中で魔法を使うなと言っただけなのを思い出した。

「うちの裏山は、村の領地じゃないから大丈夫!」

 俺の考えを読んだようにシルヴィはそう言った。ゼオンの部屋を左に曲がり階段を降りているとシルヴィを成長させたらこんな感じになるんだろうと予想できそうな16歳前後の女性が階段を登ってきた。

どストラーイク! 超好みだった。反射的に告白してしまった。『一目惚れです!』と、するとシルヴィが俺の後頭部を思いっきり殴り頬を膨らませながら、俺は裏山に引きづられた。う、埋められる!

裏山に着くと頬をパンパンに膨らませたシルヴィがこちらを向く。

「どういう事? 私が好きってさっき言ったよね? 浮気? 許さないよ?」

 お、おかしいな? シルヴィが鬼に見えるよ? 般若の姿が背中の方から見える気がする。

「どこ見てるの? 私を見て!」

 シルヴィが俺の首をガシっと掴み俺は、シルヴィの顔を正面から見ることになる。シルヴィの目には涙の跡がある。どうやら泣かせてしまったようだ。俺は背筋を正ししっかりと謝った。

「ごめん! シルヴィ! シルヴィの事好きっていたのは嘘じゃないよ! 何でもするから一つだけ何でも効くから許してほしい。」

 そう言うとシルヴィはニヤッと笑った。


「何でもするんだね? じゃあ約束エルビスは女の人に告白禁止! 次同じことしたら告白するごとにわ、私にい、一回キスすること!」

 シルヴィの顔が恥ずかしさから放たれた熱で溶けそうなくらいに真っ赤に染まった。

「ああ、わかった。それでいいよ!」

「じゃあ、ほ、ほらキスして、一回キス・・・・」

 シルヴィがせがんで来た。ほ? あれ? 今の約束って今回の件も含まれるんですか? シルヴィは唇を突き出しそのままの姿勢で固まっているのでキスをした。頬に‥‥

 若干不満げだが満足げなシルヴィの顔を見ることができた。そのままシルヴィはチョット待ってと言うと顔を隠しながら走っていってしまった。

「ハハハ、もう尻に敷かれてるのかエルビスの人生は大変そうだな」

カインさんがいつの間にか俺達のそばにいた。

「魔法練習しようとしてここに来ただろ。俺に言えっていっただろ」

カインさんがげんこつしてきた。その瞬間シルヴィが走っていった方向から悲鳴が聞こえた。

「おい、エルビス行くぞ!」

俺とカインさんが悲鳴の下方向に向かうとシルヴィが狼に襲われていた。木の棒を振って近づけないようにしているがあれでは時間の問題だ。

 俺は落ちていた石を狼の前足に的確に当てシルヴィを守る。怒り狂った狼はこちらに飛びかかってくるがそれを避けて思いっきり胴体を蹴り上げるとよろよろと走って逃げていった。

「大丈夫? シルヴィ!」

 シルヴィの肩を揺らすが反応がない、シルヴィは俺の顔を見てぽけーっとしている。怖かったのだろう‥‥シルヴィが正気に戻るまで待つことにした。