俺とシルヴィはゼオンの所に行く前にシルヴィが理解するまで説明を続けた。そしてローレン家の前に着いた時、ゼオンは家の前にいた。

「おお! お帰りシルヴィ。エルビスは……なんでいる! くそガキ!」

あぁ、攻撃的なゼオンさん懐かしい。半年ぶりに村に帰ってきた人間に掛ける第一声がこれか。まぁいい、以前の流れを辿ろう! オレは龍魔法で裏山を完全消滅させた。

「エルビス!?」

流れは説明していたが裏山を完全に消滅させるとは思っていなかったのだろう。シルヴィも驚いていた。ごめん! やりすぎちゃった!

ゼオンは口をあんぐり開け、失神した。

時間はあるとわかっていても焦る気持ちがある。未来でどんな凄惨な出来事が起きるか分かっているからだろう。

「おい! 起きてくれ、ゼオンさん!」

頬を何度か叩くとゼオンさんは、目を覚まし裏山のあった方向を見る。

「あぁ夢じゃなかったか……」

「お父さん! 大事な話があるの執務室に行こ!」

「大事な話だと! 結婚するのか」

「違うから……早く」

シルヴィが話を進めてくれた。身体的には疲れていないが精神的に疲弊しているから助かる。

「ところでそこの青髪の女性は誰だ?」

「この人はディーネさん! エルビスと契約している精霊さん!」

「せ、精霊と契約したのか、そうか! あの威力の魔法は精霊との契約で……ふむ、シルヴィと結婚しないか? エルビス君」

おや? 前回と流れが違うぞ? 手のひらくるくるだな……

「その話はまたいつか。今日は、精霊の未来予知があったから話に来たんです」

そう話すと興味深そうに耳を傾けるゼオン

「2年後にこの村に12匹のドラゴンが攻めてくる。」

ゼオンは思いっきり机を叩いた。

「それは本当か? 夢や嘘ではないのか?」

「ここに精霊がいるのが証拠だ。」

「そうか……それはどうにかなるものなのか?」

「いえ、どうにもなりません。冒険者のカインさんが助太刀に来るんですけど無くなってしまいます」

「そうか……ならこの村は解散させた方がいいな、ちなみにその時、村はどうなった?」

オレは深呼吸して話始める。

「みんな死んだ。ゼオンさんもシルヴィもみんな……」

ゼオンが手を握りしめる音が聞こえてくる。

「そうか……では今日から村を解散させるための準備を始める。エルビス君も手伝ってくれ」

「はい、わかっています。一年半以内に全員別の村や町に引っ越しさせましょう。」

ゼオンは一気に老けた顔をしてため息をついた。

「はぁ金掛かるな、何か稼げる方法ないかなぁ」

一応ドラゴンからむしり取った鱗があるけどこれ渡そうかな? そんなことを考えているとディーネが俺に水の入った水筒を渡してきた。

「ディーネ。これは?」

ディーネは嬉しそうに微笑みながら説明を始めた。

「回復の水です。毒、麻痺、呪い何でもござれです!」

「本当か! それ売れば避難代が全部解決だ!」

本当にうれしそうにゼオンがディーネに抱き着こうとする。

「私に触れていいのはマスターだけです!」

ディーネの本気の蹴りを食らい吹き飛んだゼオンは、それでも尚、ニヤニヤと笑っている。ここに今、変態が生まれた。

「エルビス達一家はどこへ行くつもりなんだ? 俺たちは少し離れたザーグの街に行こうと思っている。シルヴィが悲しむ……金は出すからお前たちもどうだ?」

「自分は子供なのでそういう判断はできません。」

ゼオンが驚いた顔をする。

「そういえばお前まだ6歳だったな、しっかりしすぎてそんなイメージ無くなっていたぞ、それにしても半年前はもっと子供らしかったと思うんだがな」

そりゃあ中身はもう18年くらい生きてますから。とは言えず笑ってごまかした。

そして半年後、俺たちの村は事実上解散した。俺とシルヴィも離れた所に住むことになった。



そこから6年シルヴィとのやり取りは手紙だけのやり取りになった。

「お兄ちゃん?今日は魔術学校の試験を受けるために家を出る日でしょ?もうさぁお母さんとお父さんもともばらばらになって6年だよ?いい加減にしっかり起きなよ!」

レイラに朝早く起こされた。実は村の解散時、ごたごたに巻き込まれ家族バラバラになってしまっていた。そんな俺をレイラは俺を見つけてくれた。今は同じ家に住んでいる。

「じゃあそろそろ行ってくる。」

「行ってらっしゃい! お兄ちゃんもグレワール魔術学校に来ればいいのに何でサリナ―ル魔術学校に行くの? 全くもう!」

そんな妹の怒る声を聴きながらオレは家を出た。